タイムラインアルゴリズムからの脱却とパーソナルメディアの未来(後編)【ゲスト寄稿】

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濱本至氏

本稿は、ニュースレター配信サービス「theLetter」を運営する OutNow 代表取締役の濱本至氏による寄稿。OutNow は、Open Network Lab のシードアクセラレータ第21期に採択された。

濱本氏は、神戸大学在学中に位置情報 SNS アプリ「Colony Tale」を友人と開発・リリース。2016年からリッチメディアで、美容アプリ「fem」のリリースや美容悩みメディア「スキンケア大学」のマーケティングに従事した。フリーランスとして独立後は、SNS ディープリンク作成ツール「Link OutNow」、ビートメーカーとラッパーのためのマーケットプレイス「Beat Store」、作家志望者が作品のフィードバックをもらえるサービス「feedback sauna」などをリリースしている。


こんにちは。ニュースレター配信サービスの theLetter を運営している濱本至(@itarumusic)です。

テキストブログサービスや個人のマネタイズについてリサーチしている中で、海外ではタイムラインでのコンテンツマッチングアルゴリズムから脱却し、ファンや読者と直接繋がるトレンドにあることを知りました。

今回はそういったトレンドの渦中にあるサービスについて紹介しつつ、タイムラインアルゴリズムからの脱却と、パーソナルメディアの未来について考察します。

前編からの続き)

チャットサービス

ファンや読者と直接繋がれるチャネルは、メール(ニュースレター)以外にも存在します。

ブラジル中心に展開している ChatPay は、WhatsApp や Telegram で作成されたチャットグループを収益化できるサービスです。Y Combinator の2020年夏バッチを卒業したスタートアップでもあります。

「ChatPay」
Image credit: ChatPay

ChatPay で作成されたグループは、フィットネスコーチやギターの講習などジャンルは様々で、個人のスキルを収益化することができます。

WhatsApp や Telegram のグループ作成や決済は全て ChatPay 上で行われるため、会員の管理が自動化され、ChatPay を利用するインストラクターは集客や運営に集中することができます。

トップのインストラクターは年間30万ドル以上の売上を持ち、ChatPay は月額売上の10.9%を手数料とするレベニューシェアのビジネスモデルとなっています。

ChatPay を利用するインストラクターは、新たなインストラクターを紹介するとそのインストラクターの売上の 5% を収益にできる紹介プログラムを利用できます。

また、各インストラクターは自身のグループメンバーにアフィリエイトプログラムに参加してもらうことも可能です。

日本国内だと Facebook グループ中心で運営されるオンラインサロンサービスと少し似ているかもしれません。(しかしながら国内のオンラインサロンサービスはサロン側の名簿と Facebook グループの名簿を運営者が突合する必要がある事が多い)

SMS

さらに、電話番号でメッセージが送信できる SMS もファンと直接繋がれるチャネルとして注目されています。

2018 年頃から本格スタートした Community は、アーティストなどのセレブを中心に使われている SMS を介したファンとのコミュニティツールで、現在アメリカとカナダでのみ利用が可能です。

「Community」
Image credit: Community

Community にリーダーとして参加すると、10桁の電話番号を与えられ、ファンがそこにテキストメッセージをすると Community にオプトインする仕組みとなっている。

Community アプリや Web 管理画面にて、電話番号からオプトインしてきたファンにメッセージを送ることが可能で、FastCompany によれば500人以上の有名人が数百万人のファンを Community に抱えているそうです。

SMS はニュースレターと異なり、音声メッセージや動画も送れるものの、テキストは400字以内という制限もあるため、コンテンツというよりコミュニケーションという側面が強そうです。

ちなみに、顧客に対して SMS を利用するというアイデアは、B 向けの CRM サービスとして SuperPhone というサービスでも試されてきました。

Community の利用者一覧を見ると、オバマ元大統領や、ポールマッカートニーなどの超有名人から、Lauv や Marshmello など大人気アーティストも多数登録している事が分かる。

タイムラインへのアンチテーゼ

Community や Substack はとくに、ソーシャルメディアへのアンチテーゼとしてサービスを打ち出しています。

例えば、Community の Why Community? ページでは、アルゴリズムにファンとの関係を阻害されるデメリットや、広告のためのパーソナルデータを収集しない意向について書かれています。

しかしながら、上記で紹介したどのサービスも、Google 検索や口コミ以外でファンや読者を収集する機能を備えているわけではなく、集客においては SNS に大きく依存しています。そもそも EC 業界で起きたネットショップの成長や D2C トレンドも SNS の発達なしにはあり得ず、テキストメディアの世界でもそれは同様です。

現在のパーソナルメディアのトレンドは、タイムラインを採用する SNS のコンテンツマッチングアルゴリズムへのアンチテーゼとして生まれていますが、SNS での情報の民主化がなければそもそも成り立たないビジネスモデルであるということに注意が必要です。

誰もがパーソナルメディアを立ち上げられる

本稿では、ファンや読者と直接繋がれるパーソナルメディア構築のトレンドとそのサービスについてご紹介してきました。

20年以上に渡ってインターネットサービスがどんどん個人をエンパワメントしてきた結果、今や誰もが直接課金モデルを採用したパーソナルメディアを持つことができます。

日本国内では、オンラインサロンサービスや独自アプリを持つファンクラブ系サービスがある一方、まだまだ上記でご説明してきたトレンドに入るサービスは出てきていません。

その中で我々は、ニュースレター × テキストメディアの領域で theLetter を展開し、挑戦していきます。

今後もこのような発信をこちらで続けていきますので、よろしくお願いします!

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