本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載
全産業デジタル化の流れが不可避として認識される中、大きな構造の変化がいろいろな場所で発生しています。単なるデジタルツール・インターネットへの置き換えではなく、業界構造自体が変わり、認識の変化に追いつけないプレーヤーは否応なく淘汰されてしまいます。
一方、デジタル化・業界構造の変化は一言で語れるほど簡単なものでないのも事実です。先人たちが築き上げた構造は堅牢なものが多く、ゲームチェンジャーたちは想像もつかない方法で攻めてくるからです。
MUGENLABO Magazine編集部では、このダイナミックな変化を業界のゲームチェンジャーたちの解説と共に紐解くシリーズを開始することにしました。初回はEmbedded Financeというワードが話題になり始めている金融業界の変化について、クラウドリアルティ代表取締役、鬼頭武嗣さんにお話しいただきます。
著名VCのAndreessen Horowitzが「Every Company Will Be a Fintech Company(あらゆる企業はフィンテック化する)」と論じたのが2019年の年末でした。あれから2年、パンデミックの影響もあり、この流れは加速しているように感じます。
では、具体的にこの構造変化はどのように起こり、そしてどうなっていくのか。鬼頭さんの解説に耳を傾けてみましょう。
一方でこれって従来、例えば決済代行だったりこれまでにもサービスはあったわけです。今、この提唱されている内容って以前と比較して何が違ってて、どのような未来になっていくのか、そのあたりがまだ私の中でもやもやとしているんですね。
別の言い方をすると、これまでは顧客接点と銀行機能が一対一で対応していたものが、一つのモバイルと複数の銀行が提供する金融機能という一対Nの関係になった。これがまず金融における第一段階のアーキテクチャの変化です。
これは何かというと、これまで金融業界の仲介業というのは銀行であれば銀行代理業者、証券であれば金融商品取引法における金融商品仲介業者、保険であれば保険業法における保険募集人や保険仲立人などがバラバラにあってそれぞれに規制の枠組みが存在していたんです。これがワンストップで「金融サービス仲介業」っていうライセンスにまとめられ、仲介事業者は銀行・証券・保険の全てのサービスを提供することができるようになりました。
これまではこの一つのサプライヤー単位でしかデータを見ていなかったかもしれませんが、APIで全体が繋がった世界では、全体の商流が見えてくるようになるので、金融機関も全体像を把握しながら融資や与信判断できるようになるわけです。リアルタイムかつ広範囲にデータを取得し、それを最適化できるようになるのがこのフェーズです。マルチティアとかディープティア・サプライチェーンファイナンスと言われるものです。
そして最後はこういった個々に生まれた情報が、金融商品のような取引対象として扱われ、情報銀行のような機関を通じて、必要な事業者が必要なタイミングで取得したりその対価を支払ったりするようになる、と。鬼頭さん、こういった理解って各金融機関の方々も研究されていると思うのですが、どうして日本ではAPI化、第二フェーズあたりで足踏みをしているのでしょうか。
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