
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
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今週の注目テックトレンド
自動運転に関するニュースが立て続けに報道されました。
Alphabet(Googleの親会社)傘下の自動運転会社Waymoが、配車サービス「Waymo One」とGoogle Mapを連携して予約できるようにしたことを伝えています。米国フェニックスにて開始したもので、AndroidユーザーはGoogle Map経由で専用アプリを通じて配車予約できます。
また、GMの自動運転部門であるCruiseは、カリフォルニア州公益事業委員会(California Public Utilities Commission)が発行した許可証を取得しました。有料でのサービスは不可ですが、無料での自動配車サービスローンチに向けて大きく前進しています。
自動運転市場はいよいよ本格サービス化へと舵を切りつつあります。ただ、市場にサービスとして受け入れられるかどうかは別問題であり、こうしたハードルをクリアするためにはさらに数年を要すると感じています。
人の移動以外で自動運転の利便性を感じられるのがフードデリバリー領域で、なかでもフードデリバリー スタートアップ「DoorDash」の動向は注目に値します。同社は配達ロボットおよび注文プラットフォームの開発にAI機械学習を用いており、AIによって次の3つの点の実現を目指すとしています。
- 配達ルートの最適化:オンデマンドサービスでは、リピート客がいたとしても毎回ドライバーが変わればどこが玄関で、どこが最適な駐車スペースかわからず時間浪費してしまう。この点を毎回の配達のフィードバックから学習して最適化する。毎回ユーザーが望むピンポイントの場所に配達する。
- フードクオリティー:食事の質を再検査する。たとえばレストランのホールスタッフが風邪を引いていたりしたら、食事に菌が付いているかもしれない。この様な情報が事前にインプットされていた場合、AIが自動で配達をキャンセルする。
- パーソナライズ化:過去の顧客情報からベジタリアンなのかどうかなど、個々の趣向を解析して最適なメニューをアプリ上で提案する。
上記3つが完全にUXに組み込まれればより強いサービスになるだけでなく、WaymoやCruiseらがフード配達企業と組む道も考えられるでしょう。というのも、提携フードデリバリー企業の配達業務最適化を行えば、これ以上各配達企業が自社で配達員を雇うようなこともなくなるかもしれないからです。
Alphabetに関して言えば、傘下企業を連携させてDoorDash同様のサービスを立ち上げ、Waymoによる効率性と従業員レスな環境を駆使して低価格なフードデリバリーを投入してくる未来も考えられます。UberEatsに関しても同様です。
Autonomous Last Mile Deliveryの世界市場は111.3億ドル(2021年予測)だそうです。2030年には756.5億ドルに達する見込みで、年平均成長率は23.7%となっています。
急成長市場となっており、期待が寄せられていますが、最も注目すべきは「いつ自動運転による配車サービスが立ち上がるのか」ではなく、「どのようなビジネスモデル変革が自社市場に押し寄せてくるのか」ではないでしょうか。
フードデリバリー市場のように、業界のコスト構造やUXの底上げが果たされるであろう事例は今後も増えてくるはずです。
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