
Image credit: Galapagos
企業向けにデザイン業務をサブスクリプション提供するガラパゴスは1日、シリーズ A ラウンドで約11億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、Archetype Ventures、みずほキャピタル、Glove Advisors、STRIVE、シニフィアン(THE FUND)、DIMENSION、THE GUILD が参加した。これはガラパゴスにとって、2020年5月に実施したシードラウンド(2.2億円を調達)に続くものだ。今回出資した Archetype Ventures、みずほキャピタル、Glove Advisors は、前回シードラウンドに続くフォローオン。
ガラパゴスは、製造業系コンサルティング会社インクス(現在のソライズ)出身の中平健太氏らにより創業。2019年からデザインを必要とする企業に、デザイン業務をサブスクリプション形態(月定額制)で提供するサービス「AIR Design」を提供している。サービスから開始から22ヶ月で累計300社以上が導入しており、MRR の成長率は13.2%、前年比成長率は4.52倍に上る。 料金体系がほぼ定額制であることを踏まえると、MRR や前年比成長率はそのまま顧客の増加率と見ることができるだろう。
中平氏によれば、クリエイティブ職の中でも、デザイン事務所は多重下請け構造でデザイナーは常に弱者だという。例えば、デザイン事務所の平均従業員数は4.5人と小さく、システムエンジニアと比べてみてもデザイナーの給与水準は非常に低い。システムエンジニアリング業界においても仕様変更は予定外の工数増加を招き、顧客都合による場合は追加費用を請求することがある。デザインの場合はと言うと、提案内容が顧客の思惑とズレていれば手戻りが発生するが、ここで追加費用を請求できることは稀なのかもしれない。
そこでガラパゴスが考えたのが、企業に対するサブスクベースでのデザイン業務提供だ。バナー、ランディングページ、ソーシャルメディアのインフィード用の画像や動画広告のデザイン受託・制作・納品する。ユーザにしてみれば、仮説に基づいて一度納品されたクリエイティブが必ず良いマーケティング成果を招くとは限らない。A/B テストを実施したり、時間の経過と共に新たなクリエイティブとの差替が必要になることもある。毎月定額費用を支払うことで、そのための予算確保や稟議手続を省くことが可能になる。

一方、サプライヤーサイドに目を転じてみると、ガラパゴスは一定額を毎月定額で受け取ることで経営を安定化でき、多くのデザイナーを社員として雇用し続けることができる。ガラパゴスではプラグインの入ったソフトウェアをデザイナーに提供、製造業の業務効率化にヒントを得て、デザインによく使うパーツを事前に用意しておくことで生産効率の向上につなげている。デザインに使う素材探しについても画像解析技術によるタグ付けで効率化しており、デザインは従来方法に比べ3倍程度効率が良くなっているそうだ。
属人性を排除する観点から、デザイナーが直接 AIR Design のユーザであるクライアント企業と話をする機会は無い。AIR Design のカスタマーサクセスがユーザからヒアリングし、カスタマーサクセスはこれまでの30万件のデータ、コピーなどの表現方法、レイアウト、トンマナの知見を元に、ユーザに最適解を提案する。ユーザの同意を受けてデザイナーが制作に入るため、手戻りの可能性を極小化できる。
中平氏は AIR Design を使うことでユーザがいろんなデザインクリエイティブを手軽に試すことができ、これがマーケットの探索行為と捉えてもらうことが同サービスの価値創造になると強調、これが評価され、デザイン業界では過去最高に近い金額の調達に繋がったとの認識を語った。コロナ禍で広告業界は低迷を強いられているが、AIR Design が制作を請け負う広告の多くが(イメージやコンセプト広告と違って)直接的に売上にリンクするもののため影響は大きくない。企業はコストによりシビアになるため、AIR Design にはコロナ禍が追い風になっているかもしれない、とのことだった。
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