世界で2,300万人が愛用、グロース責任者が明かすホワイトボードSaaS「Miro」の〝6つの柱〟とは

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本稿はベンチャーキャピタル、ALL STAR SAAS FUNDが運営するサイトに掲載された記事からの一部を転載したもの。全文はこちらから読める。同社のメルマガ「ALL STAR SAAS NEWSLETTER」出資先のスタートアップ転職に関するキャリア相談も受付中

コラボレーションホワイトボードプラットフォーム「Miro」は、「チームのブレストやプランニングが、いつでもどこでも出来る」と大人気のサービス。その用途は広く、ミーティング、ワークショップ、ブレインストーミング、アイデアセッション、アジャイルワークフローなど、さまざまなシーンで使えるのも人気の理由です。

コラボレーションツールとしての支持は厚く、すでに世界中に2300万人のユーザーを抱え、対前年比の成長率も実に300%を超えるといいます。

Miroが実践している戦略の特徴の一つに挙げられるのが、PLG(Product Led Growth)を採用していることです。Miro流のPLG戦略とはいかなるものか。“Head of Self Service Business & Growth”として采配を振るうYuliya Malysh(ユリヤ・マリーシュ)さんに、新世代SaaS企業が継続的に注力し、成長を加速させるため役立つ要素について聞きました。

「ALL STAR SAAS CONFERENCE TOKYO 2021」より、前田ヒロが聞き手を務めた注目のセッションを、抜粋・再構成して記事化しました。記事前半ではYuliyaさんからMiroにおける「Product Led Growth部門の取り組み」を教えていただき、後半ではその内容を踏まえて前田がOKRやKPIなどの深堀りをしています。

「優れたプロダクト体験」こそがユーザーを獲得し、維持できる

Yuliya Malysh 氏

Yuliya:私は8年ほど前に入社して、主にデータやプロダクトに関連するプロジェクトに携わってきました。4年前にProduct Led Growth部門を作り始め、現在ではさまざまなドメインや領域にわたる10チームが構成されています。それぞれでディストリビューション、マネタイズ、ユーザーエンゲージメントを加速させるように取り組んでいます。

各チームでは、バイラリティ、ユーザー獲得コスト、ユーザーエンゲージメント、アクティベーション、マネタイズ、Miroで展開しているコミュニティプラットフォームビジネスといった領域を担当しています。

早速、結論めいたことを話しますが、私たちがProduct Led Growthを信じている理由は、Product Led Growthに必要な「優れたプロダクト体験」こそがユーザーを獲得し、維持するための戦略的なアドバンテージになる、と考えているからです。

私たちがProduct Led Growthを考える時、焦点を当てるべきはマネタイズやユーザー獲得ではなく、利用される量です。Miroはコラボレーションツールですから、他者と使ったり、共有したりして、プロダクトを使う人が増えれば増えるほど、バイラル性が高まります。ユーザー獲得の競争力も強化され、回収期間中のユーザーコストを低くできるのです。

より多くの人にプロダクトを使ってもらい、リテンション率も高くなれば、マネタイズのタッチポイントも増えます。Miroの課金モデルは、LTVとリテンション率を高めることを前提に構築されていますからね。

では、どのようにユーザーの利用を促しているかをお話ししましょう。下記をご覧ください。ここに載せたキーワードがMiroにとっての「柱」であり、私たちは「Product Led Growthを可能とするもの」と呼んでいます。1つずつ、解説していきますね。

1:Customer centricity

初めは「Customer centricity(顧客中心主義)」です。文字通り、ユーザーだけを考えることです。プロダクトは、顧客を念頭において構築するだけでなく、時には顧客と一緒に作り上げることもあります。ユーザーの行動、彼らのプロダクトの使い方から、私たちはいつも学んでいます。

MiroのProduct Led Growthチームで大切にしていることが2つあります。1つ目は「私たちのコアオーディエンスは誰なのか。どんな人がプロダクトをよく使っているのか」を設定すること。いわゆる「ペルソナの設定」に近いですね。

プロダクトマネージャー、UXデザイナー、アジャイルコーチ、コンサルタント……といった人たちがMiroのパワーユーザーとなっていますが、彼らは周囲の人々にもプロダクトの魅力を広めたり、使ってみるよう促したりしてくれます。

2つ目は「Miroがどんなユースケースで使われているのか。主なユースケースは何か」を知ること。この評価を軸に、何に注力すべきか、どの機能を構築すべきかといった優先順位が決まります。ユーザーにとって、それらのユースケースがベストであることを徹底します。

この2点から顧客中心主義を実現するために、私たちが注力し、トレーニングを重ねているのがインタビューです。とにかく、みんなが顧客と話すこと。職種は問いません。プロダクトマネージャー、デザイナー、アナリスト……自分が関わっていないプロジェクトだとしても、とにかく全員で顧客インタビューを実施しています。

ただ、職域によって会話内容は変わります。マネタイズを担当しているメンバーなら、Miroを購入したばかりの顧客と話すことが多く、「Miroが選ばれたトリガーは何か、どんなことを期待しているのか」を知ろうとします。サブスクリプションが解約される時も「何が起きたのか」を把握し、顧客と関係を築き、「顧客から見たプロダクト」を知ろうとします。

それから、Miroには「データから学べ」というカルチャーが根付いています。データを活用して定性的、定量的な視点から仮説をつくり、立証していきます。

たとえば、Miroでは顧客の声を伝えて広げるプロジェクトとして、月に一度は顧客の声を共有するミーティングを行っていて、カスタマーインサイトチームが調査結果を発表したり、ワークショップをしたりします。この機会で「今の市場で何が起きているのか」をメンバーも把握できていますね。カスタマーインサイトチームが社内メンバー向けにニュースレターも送ってくれています。

時には私たちがカスタマーインサイトチームのミーティングに参加することもあります。ラッキーにも自分自身もMiroのユーザーですから、プロダクトのことはよくわかっているつもりです。「Miroのユーザーになると、どんな体験ができるのか」を想像しやすいのです。

もちろん、誰もが私たちのようなヘビーユーザーでないことは、頭に置いておくべきです。ただ、私たちにとっては毎日使っているプロダクトなので、何かが機能していない時もすぐに気が付きますし、顧客へMiroの素晴らしいところをたくさん伝えることもできるんです。

会社全体のメトリクスの一つとして、NPSも使っています。フィードバックを受けるためのオープンチャネルがあり、それを読んで分析して、OKRの指標にしています。顧客満足度とNPSでは視点が異なるため、人によって好き嫌いはありますが、私たちはNPSを「何が機能できているのか/いないのか」を把握するフィードバックの一環と捉え、ロードマップや計画の優先順位を決める時に役立てています。

2:UX / simplicity & fast time to value.

次に重視しているのは、NPSのレーティング基準にもなっている「simplicity & fast time to value.(シンプルさと、すぐに実感できる価値)」です。

私たちが生きているのは「エンドユーザーの時代」。ツールはIT部門ではなく個々人が決める時代です。すでに多くの人に使われているサービスやプロダクトを見て、「自分も使ってみよう」と思うわけです。ですから、私たちはエンドユーザーが、シンプルかつ簡単に始められ、価値を得られるものにフォーカスしています。

さまざまなソリューションから選ばれるためには、マネタイズのしやすさよりも、ユーザーにとってのシンプルさ、わかりやすさ、そして価値を実感してもらうまでのスピードを最適化できるかにかかっています。

Miroはユーザー体験向上のために、どんなバックグラウンドを持つユーザーにとっても、直感的で快適なUXを実現したいと考えています。Miroは用途が広いですから、期待される役割、ユースケース、ユーザーのバックグラウンドが多様なんです。

キャンバスツールに慣れていて毎日使っている人がいれば、ある人にとっては全く新しいフォーマットだったりもします。ドキュメントやスプレッドシートには慣れ親しんでいるかもしれませんが、ズームイン/ズームアウトは誰もが知っているコンセプトではありません。

こうした違いをしっかり理解して、ボード上でのコンテンツ制作や操作など、誰が使ってもわかりやすくしなくてはなりません。

最近、プロダクトの開発サイクルも構築したところなんです。ユーザー体験の改善を実行すべく、異なるペルソナからのフィードバックを共有できるチャネルを設けて、みんながそこへ投稿しています。各チームのバックログも開発スプリントに組み込んで改善しています。

「100日間で100個のUX改善をする」というプログラムを実施することもありますね。全てのチームがこのプログラムに貢献できるように計画されていて、かなりの速さでユーザー体験に磨きをかけることができます。これらは私たちが絶えず実行していることですね。

3:Templates

次に「テンプレート」について。これは重要な戦略です。

全てのテンプレートは仕事の用途別に作られています。検索されやすいテンプレートを作ることで、TOFU(トップオブファネル)を生むきっかけになります。仕事をやり遂げるために必要な情報を探したい時、みんなはGoogleで検索しますよね。ですから、Miroにとってのテンプレート制作はユーザー獲得施策の一環でもあるのです。

その他にも、ユーザーがMiroを使い始める時にテンプレートがあれば、使い方がわかりやすくなる利点もあります。テンプレートを埋めていくことだけにフォーカスすれば良くなりますから。

重複しますが、Miroの場合は、ユーザーがMiroでやりたい作業やタスクの種類が本当に様々です。より親切なインストラクションなど、どうしたらUXに磨きをかけられるのかを考えています。ユーザーは、線を引いたり図形を書いたりしたいわけではなく、ただ自分の作業にフォーカスしたいのです。

4:Viral loops

Miroはコラボレーションのために使うのが特徴ですから、ユーザーが他者へ魅力を伝えてくれるという「バイラルループ」は、要素として常に存在しているとも言えます。積極的に取り組まなくても自然発生するのですが、私たちの強みであり、より強化したい点なので、プロダクトを普及させるためのユーザーサポートを実験的に行っています。

特にフォーカスしているのは、ユーザーがボードをもっと共有しやすくなる方法や、チームに人を招待しやすくする手順など、ボード共有の仕組みの改善です。ユーザーがどんな問題を抱えているか。どの問題を解消すれば利用量が増え、アダプションの数を引き上げられるのか。そういった点を考えています。

5:Users engagement

「ユーザーエンゲージメント」はMiroが複数のユースケースに対応できることを、ユーザー自身が理解しているかを確認するためにも重要です。Miroの利用頻度やアダプションの数を増やせますからね。

もし、ユーザーがアイデア出しやブレインストーミング、ワークショップ、ミーティングにもMiroを使えることがわかれば、使用頻度も増すでしょう。異なるユースケースで使われると、より様々な人を巻き込めるので、バイラルループも促せます。

私たちのエンゲージメント戦略では、Miroが様々なユースケースごとにカスタマイズでき、様々な用途にこれ一つで対応できることを教育し、認知させていくことが目的に置かれます。カスタマーサクセスがユーザーと交流するだけでなく、チュートリアルビデオで使い方を学べたり、プロダクトの仕組みを説明したりするコンテンツも提供しています。

ユーザー内に「チャンピオン」を増やしていくことも重要です。企業内でMiroの使い方を教えていく存在になりますからね。チャンピオンを手助けし、奨励しながら、コミュニティのようなものを築いています。時にはチャンピオンに学び、プロダクトを共同で製作します。

6:Freemium model

そして「フリーミアムモデル」が、Miroの場合はプロダクトの成長に大きく貢献しています。何よりもバリューが優先事項であり、「お金は後からついてくる」というマントラのようなものです。

エンゲージメントの高いユーザーに向けて最適化すること。そして、ユーザーにとってシンプルでわかりやすいものにすること。この2つのルールに従っています。マネタイズは、その次に来るものです。

様々な実験を行なったり、新しい機能を発表したりする時、私たちは「リテンション」と「アダプション」という2つのメトリクスで測定をしています。「ユーザーのリテンション率やアダプション率を下げる」と判断した場合は、過度なマネタイズはしたくありません。

BRIDGE編集部註:この後の『セールスは、セルフサーブモデルを採用する』などの続きはこちらから。

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