約65カ国展開、セラピスト不足はチャットボット+人で解決ーーWysaが2,000万ドル調達【メンタルヘルス話題の5社(3)】

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Image Credit : Wysa

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ニュースサマリ:インド・バンガロール拠点のメンタルヘルスケア企業、Wysaは7月、シリーズBラウンドの資金調達を公表している。2,000万ドルとなるラウンドをリードしたのはデジタルヘルス特化のファンドHealthQuadで、英国金融機関BII(British International Investment)も参加している。同社は今回の調達を機に米国や英国でのサービス展開を加速するとしている。なお、米国ではFDH(アメリカ食品医薬品局)、英国ではNHS(National Health Service・国民保健サービス)の承認をすでに取得して展開を開始している。

Wysaは従業員や患者の精神的なストレスを管理するためのプラットフォーム。AIによるチャットボットやライブラリ、人間のセラピストとの遠隔コミュニケーションを通じてメンタルヘルスに関する早期リスクの発見を手助けする。同社は2015年の創業以来、約65カ国において450万人のユーザーに約4億回の対話を提供してきた。TechCrunchの取材に対して同社は、コロナ禍以降のメンタルヘルスケアへの需要に対し、圧倒的に供給が足りていないと課題を語っていた。人口13億人のインドにおいて、メンタルヘルスケアの対応が可能な訓練を受けた専門家は1万人に満たないと回答している。また、その傾向は世界的にも同様で、展開を予定している英国においても、6カ月から12カ月の診断待ちリストがあると語っていた。

Wysaはこの人的不足の課題に対して、AIチャットボットによる解決を提供する。最初のリスク発見はチャットボットに任せ、そこで見つかった課題を持った患者に対しては専門のスタッフやカウンセラーが対応する。最終的には同社が臨床プログラムと呼ぶケアを提供することになっている。Wysaはフリーミアムとして提供され、最初の問題解決は無料で提供される。また、企業は従業員への福利厚生として、英国やシンガポールなどは一般市民向けの健康支援としてWysaを利用している例もある。

話題のポイント:前回までAlmaとMotivo Healthという人力に頼ったメンタルヘルスケアのアプローチをご紹介しました。ここからはチャットボットです。Wysaは2015年創業なので、かなり実績のあるサービスに拡大しています。英国やシンガポールなどで市民向けに提供されていて、TechCrunchの取材記事を読むと、事業の8割近くは企業利用(福利厚生)のようです。

AlmaとMotivo Healthがサポートできたメンタルヘルスケアの専門家は合計して1万人程度なので、やはり数百万人規模の対応にはまだまだリソースが不足します。Wysaはよくあるチャットボットである程度の「ふるい」にかけ、さらに先に進んだ人には人力でのサポート、その先にコンテンツとしてのケアプログラムを提供する、という段階的なアプローチを提供しています。

一方、このメンタルヘルスという問題は、人を介することが難しい問題もはらんでいます。セラピストとの相性の問題なのですが、ここにアプローチするためには人力を排除する必要がでてきます。このチャレンジをAI+自然言語処理で進めているのが次に紹介するWoebot Healthになります。

続き:メンタルヘルスはロボットが解決、AI+自然言語処理のWoebot Healthが950万ドル調達【メンタルヘルス話題の5社(4)】

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