創業6年、年商は15億円規模にーーShippioが16.5億円調達「デジタルフォワーダー」日本代表のポジション確立へ

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Shippio代表取締役の佐藤孝徳氏

ニュースサマリ:国際物流を手掛けるデジタルフォワーダーのShippioは9月28日、新たな資金調達を公表している。第三者割当増資と融資を組み合わせたもので、増資の引受先になったのはDNX Ventures、Spiral Innovation Partners、東京海上ホールディングス、みずほキャピタル、あおぞら企業投資、既存投資家としてデライトベンチャーズ、環境エネルギー投資、ソニーベンチャーズ、アンカーシップパートナーズの9社。今回のシリーズBラウンドをリードしたのはDNX Venturesで、調達した資金は投融資合わせて約16億5,000万円。投融資の比率や株価、払込日などの詳細は非公開。累計調達額は約30億円となった。

Shippioが手掛けるのは国際物流を事業とするフォワーダーのデジタル化支援。フォワーダーは物流において船舶や航空、鉄道などの運送手段を持たず、荷主と運送する事業者の間に仲介して運搬する荷物を管理する事業者のこと。Shippioはこの分野で従来、電話やファックスといった紙を中心とする管理方向をデジタル化している。また、独自の方向で荷物が現在どの位置にあるかを把握できるシステムを開発しており、フォワーダーの業務を効率化することに成功した。

同社はこれに併せて新クラウドサービスの提供開始と通関事業への参入も伝えている。新たに立ち上げたのは貨物案件管理サービス「Any Cargo」。これまでShippio自身がデジタルフォワーダーとして提供していたサービスをクラウド化し、荷主に提供する。荷主は商慣習的に貨物管理を仲介するフォワーダーを複数に分散させており、一部の情報に紙やエクセルなどの管理が残っていた。Any Cargoを使うことでデータが集約され、全ての荷物の輸送状況が一元管理できるため効率化が図れるとしている。

Shippioは独自の方向で荷物の現在位置を素早く確認できる

さらにShippioは新たな隣接事業領域である通関事業へも参入する。神奈川県にある1960年設立の通関会社、協和海運株式会社を買収し、100%子会社化した。同社の2022年1月期における売り上げは5億7,000万円で、抱える社員数は20名。通関事業は貨物を輸出入する際、税関でさまざまな手続きを代理する事業者のこと。全国で約1,000社ほどが事業しており、Shippioはこの分野における事業のデジタル化も推進する。これにより同社グループ全体の組織は60名ほどの体制になる。調達した資金は買収にかかる費用として使われるほか、組織体制の強化、サービス開発、マーケティングなどに投じられる予定。

話題のポイント:国際物流のデジタル化という結構大きなテーマには世界的にも高い株価のユニコーン企業が揃っており、今年3月に 2億5,000万ドルを調達した ドイツのForto、今年2月に9億3,500万ドルの 大型調達を発表した 米Flexport、同じく5月に 1億5,000万万ドルを調達した メキシコのNowportsなどが評価を伸ばしています。国際物流という事業の性質上、グローバルで1社が全てを取るというよりは、各国のローカルに強い事業者が出てくるのも特徴です。

そしてその日本代表がShippio、というわけです。同社代表取締役の佐藤孝徳さんによると、現在、42カ国の拠点を繋いで顧客基盤も拡大しており、2022年7月末時点で受注高は前年同月比で4倍に拡大。売上は通期で10億円規模に到達したそうです。また、今回、M&Aで子会社化した通関事業者の協和海運の売上が約6億円あり、グループ全体では15億円から16億円の規模に乗ったというお話でした。

荷主から物流コンテナの管理を委託されるのがフォワーダー

注目はやはり今後の成長戦略です。売上が二桁億乗ったとはいえ、グローバルでの競合はそのさらに先を進んでいます。佐藤さんたちはどこまでそれに近づくのか。

Shippioのこれまでのモデルは非常に泥臭いものです。クラウドサービスをばら蒔くのではなく、自分たちがフォワーダーとして荷主と輸送事業者の間に入り、独自の技術で荷物の管理状況やトラッキングを実現してきました。ただ、このモデルではクラウド系事業のメリットである積み上げのスピードにやや課題が生まれます。つまり「オペレーション込みのクラウドサービス」という状況だったのです。

そこで、今回から自社で検証を重ねたクラウドサービス箇所を「Any Cargo」という形で切り離して提供することにしたのです。これにより、荷主はさまざまなフォワーダーを使っていても、管理する際のインターフェースはShippioの体験に統一されます。荷主側にするとこれまでお付き合いのあるフォワーダーとの関係を切り替えることなく、Shippioのデジタル化された使い勝手のみを導入することができるので移行もスムーズに進むはずです。

さらにもうひとつ、通関事業への参入です。ここは三井物産出身の佐藤さんたちらしい展開だなと思いました。シリーズBラウンドでスタートアップが1960年の老舗企業を買収するという考えは経験者でなければなかなか思いつかないアイデアです。しかし、通関業務という業界もまた、紙とファックス・メールに支配された領域だそうで、ここの非効率を新たなビジネスにすれば大きな積み上げになる、というわけです。

Shippioの新オフィスにて。買収により体制は60名規模に

ちなみに佐藤さんにどうやってこの企業を見つけたのですかと尋ねたところ、通関事業というのは免許が必要な事業であり、数年前から候補となりうる企業を探していたそうです。ただ、多くの事業者は伝統的な考え方を持った企業が多く、今回、一緒になった協和海運さんが同じくデジタル化へのビジョンに共鳴してくれたということで一緒になることとなったそうです。買収額は非公開ですが、調達した資金内で実施したというお話でした。

隣接領域の買収や自社内での新規事業立ち上げで業績・株価を伸ばしているのが金融のマネーフォワードや印刷・マーケティング領域のラクスルですが、上場前にしてその戦略を進める事業者がスタートアップにも出てくるようになりました。2010年代は上場自体、困難を伴うチャレンジでしたが、今はもう違います。上場後にどうやって株価を維持するのか、また、一定の規模を出せるかが問われています。

そういう意味でShippioのシリーズBラウンドでの動きは大変興味深いものになるのではないでしょうか。

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