ブロックチェーン取引で透明性を確保、カーボンマーケット「ClimateTrade」の取り組み

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Image credit:ClimateTrade

前回につづいて2社目はブロックチェーンベースのカーボンマーケットプラットフォームを取り扱うClimateTradeをご紹介する。2017年にスペインで設立された同社は、現在までにシリーズAラウンドの資金調達を実施し、調達総額は約900万ユーロ(日本円で約13億円弱)となっている。2022年7月に事業範囲の拡大に伴って本社をフロリダ州マイアミに移転し、アメリカ、スペイン、イギリス、韓国で事業を行っている。

同社はトークン化されたカーボンクレジットの取引を行うマーケットプレイスを提供しているスタートアップだ。各自治体などが発足させた森林プロジェクトなどから直接、炭素、プラスチックなどのオフセットと再生可能エネルギー使用証明書を購入することができるブロックチェーンベースの市場を構築している。

前回の記事でも触れたが、カーボンマーケットの普及にはクレジット発行元だけでなく、取引においても透明性の確保が要求される。この課題に対して、透明性とトレーサビリティを提供できるブロックチェーンは相性が良いと言えるだろう。同社がヨーロッパだけなく、世界中で注目されている大きな理由の一つだ。

カーボンクレジットを取引できるマーケットは2種類存在する。国、地域、国際的に炭素削減体制が整えられて規制されてるGHG排出削減要件の遵守を目的としたコンプライアンスマーケットと、企業や個人が自発的にカーボンオフセットを購入できるボランタリーマーケットの二つだ。類似のスタートアップにはシンガポールのAirCarbon Exchangeなどがあり、多くのカーボンマーケットはボランタリーマーケットを扱っている。

一方のClimateTradeはEU排出量取引スキーム (EU ETS) で交換できるため、両方を扱える稀有な存在となっている。脱炭素化戦略を策定した企業が世界中のプロジェクトと結び付けるだけでなく、発電所、製造現場、航空会社などの深刻な汚染原因である企業がオフセットを購入し、大事な脱炭素目標を達成するのに貢献できるのだ。

また、同社は消費者向けにもカーボンニュートラルにするためのAPI提供を行っている。消費者は自らCO2排出量を計算し、適切な量のオフセットを購入できる。このAPIを利用した例として、旅行業界でブロックチェーンベースで流通および小売のインフラを構築するTravelXとの取り組みがある。TravelXを通じてNFTの旅行チケットを購入すると、ユーザーが実際乗るフライトの排出量を計算してオフセットできるというものだ。同社が締結する再植林や再生可能エネルギーなどのプロジェクトからTravelXが選択したプロジェクトに資金が渡る仕組みだ。個人が日常生活を通して気候変動抑制への参加が可能となるユニークな例と言えるだろう。

次につづく:リファラルで下請けも取り込み、サプライチェーン全体の温室ガス排出量を割り出す「Sweep」

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