越境EC向け→台湾集中が吉、チャットマーケ「ChiChat」運営がシリーズA調達——日本・香港・シンガポール進出を本格化

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人々の皆さんと今回ラウンド参加の投資家の皆さん。最前列中央は、創業者で CEO の石川真也氏。
Image credit: HitoBito

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

<9日16時更新> 文中 ZEALS の資金調達手段について追記(赤字部)。

チャットマーケティング「ChiChat」を展開する人々(および、同社台湾支店の邦徳電子商務)については、2019年12月のシードラウンドで取り上げた。人々は2015年、ソフトバンクモバイルでデジタルマーケティング事業立ち上げに携わり、流通最大手向けのデジタルマーケティングのプロジェクトマネジメントに従事した経験のある石川真也氏により設立。シードラウンド発表の際、石川氏は日系通販企業の台湾・タイ向け SNS チャットコマース支援を展開しており、WeChat(微信)対応で中国本土展開を展望していた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたのは、人々も例外ではない。WHO(世界保健機関)や日本の厚生労働省が、中国・武漢で原因不明の肺炎のニュースを初めて伝えたのは2020年1月なので、人々はシードラウンドを発表した直後、世界の混沌に巻き込まれたことになる。人の往来が制限されるだけでなく物流も激しく混乱するようになり、人々の越境 EC 関連の売上は7割減。苦渋の決断を迫られた石川氏はタイにあった法人を閉じ、台北に腰を据え、台湾向けのチャットマーケティングに事業をフォーカスすることにした。

日本語版の「ChiChat」の利用例。
Image credit: HitoBito

台湾企業向けのチャットマーケティングでは、最初の1年目(2020年)は台湾の日系企業を中心に事業着手し、2年目(2021年)には、小売最大手の統一集団など現地パートナーとの協業で案件が増加(取引者数150社)。2022年には、台湾を拠点に日本向けのサービスも始めた。チャットボットの仕組みに加え、そのフォローアップを行う日本人スタッフも台湾で雇用しているため、AI を使わずに日本で運用するチャットマーケティングに比べ、4分の1の工数で運用が可能だという。

人々は3日、シリーズ A ラウンドで資金を調達した。このラウンドに参加したのは、GxPartners、亜星通、MTG Ventures、マイクロアド (東証:9553)、XCAPITAL、グロービス経営大学院、AIX Tech Ventures。このうち、亜星通は前出の現地パートナーの一つでもある。MTG Ventures は前回シードラウンドに続くフォローオン。今回ラウンドの調達金額は明らかになっていないが、関係者によれば、2〜3億円程度と推定される。シリーズ A ラウンドはまだクローズしていない模様で、今後、さらに投資家が増える可能性もある。

人々では今後、ChiChat を中国語や日本語に加え、英語にも対応させる計画だ。チャットコマースに熱心な東南アジアの企業を開拓すべく、シンガポールに進出する。日本市場では、投資家に名前を連ねるマイクロアドをはじめ、デジタルマーケティング会社との協業で ChiChat の販売を強化する。ブラウザでの Cookie 採用が禁止に向かう中で、企業は新たなオンラインマーケティングツールを求めており、LINE などでマーケティングを行う ChiChat はユーザエンゲージメントを高める手段として都合がいい。

日本市場においては人々の競合となり得るのは、上場は延期したもののアメリカ進出を発表し50億円をエクイティおよびデット調達した ZEALS や、マネックスグループ(東証:8698)に買収された Chatbook だろう。人々では、ターゲット顧客を指定し、元になるテキスト文章と画像を入力するだけで、チャットの中で利用できるバナーが出来上がる仕組みなど、AI 自動生成技術を進化させることでサービスのさらなる高度化と競争力向上を図る計画だ。

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