リファラルで下請けも取り込み、サプライチェーン全体の温室ガス排出量を割り出す「Sweep」

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Image credit:Sweep

前回につづいて3社目に紹介するのは排出量ソフトウェアプロバイダーのSweepだ。2021年にフランスでRachel Delacour氏によって設立された。彼女は2015年に顧客データ分析ZendeskをSAPに4,500万ドルで売却した連続起業家だ。同社は2022年4月にCoatuがリードしたシリーズBラウンドで7200万ドルを調達し、累計調達額は9,990万ドルとなっている。

同社が提供するのは大企業向けの包括的な炭素管理ソリューションだ。ボストンコンサルティンググループの調査によると、回答した大企業(今回の調査では従業員1,000人以上、売上高約1億ドル~100億ドルの企業が対象)の内、自社が関わっている排出量を完全に測定できると答えたのは、わずか10%程度だった。2021年の調査では9%だったことと70%の企業が財務的な排出量削減のメリットを把握していることを踏まえると、サプライチェーンの排出量の完全把握はしたくない、というよりはできないという表現が合うように思う。

特に難しいのが下請けや製品使用など、間接的に関わっているケース(スコープ3)での排出だ。世界に先駆けて報告義務付けることを発表したオーストラリアでは企業や金融機関に対してオーストラリア証券投資委員会(ASIC)、オーストラリア健全性規制庁(APRA)などが気候変動リスク開示の枠組みを設けてるなど、今後報告義務が徐々に強化されている可能性は高い。しかし、一企業の努力によってサプライチェーン全体を正確に把握するには限界があるだろう。しかし、全排出量の92%がスコープ3にあるのもまた事実だ

同社は企業間のハブとなるような立場を取ることでこの課題を解決しようとしている。他の企業が排出量の削減を開始するのを支援できる仕組みを用意することで、企業同士が互いに同社への登録を促すという波及効果を生み出すように設計されている。同社と繋がる企業数を増やすことでスコープ3を含めて全サプライチェーンでの測定実現を提供している。

同社にはサンフランシスコに本拠を置くWatershed Technologyや、以前「Data and Finance」でも取り上げた金融機関と金融機関の投資先や融資先向けに炭素排出量の閲覧と分析ツールを提供するPathzeroなどのスタートアップから、Salesforceなどの大手まで多くの競合企業が存在するが、リファラルで繋がるメリットを作ることで差別化を図っている。

もちろん、企業としては排出量を測定することではなく、削減することを目的にしているため、さまざまな削減イニシアチブをモデル化し、ロードマップ構築、実施サポート、データのリアルタイムの変化に基づいてフォローすることで目標達成を伴走して実現することもサポートしている。

ウォールストリートジャーナルによると、同社は2021年4月にサービスを開始して以来、アメリカとヨーロッパでそれぞれ年間3,000万~5,000万トンのCO2をサプライチェーン全体で排出している顧客と契約を結んだという。

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