クリエイティブで存在感増す生成系AI——元Adobe CTOが挑む「Typeface」/GB Tech Trend

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6,500万ドルの調達発表した「Typeface」<br>Image Credit: Typeface

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

元Adobe CTOであるAbhay Parasnis氏が立ち上げた生成系AIスタートアップ「Typeface」が6,500万ドルの資金調達を実施しました。同社はマーケティングコピーや画像を起案するためのAI搭載ダッシュボードを開発しています。特徴は利用企業のブランドトーンを踏襲した形でアウトプットする点にあります。

Typefaceで「〇〇に関するブログ記事を書いてください」というコマンドを入力すると、プラットフォームがそれを実行し、画像付きの数段落の原稿を作成。画像やコピーのトーンは、特定の層をターゲットにしたり、ブランドのスタイルガイドラインに沿うようにカスタマイズすることができます。

従来、生成系AI(Generative AI)はファクトチェックがなされていない内容や、著作権に違反する単なるコピー画像を出力する場合がありました。Typefaceはこうしたブランド企業が参入しにくい点を解決しつつ、スケール感を持ってコンテンツ作成、クリエイティブ作業の自動化ができるAIサービスを目指しています。

さて、Typefaceの登場により、いくつかの領域でAIによるリプレイスが加速するように思われます。まず編集プロダクションやPR・メディア部門が担う簡単な記事作成の自動化が急速に進む可能性です。一方で取材記事のようなAIには知り得ない一次情報や、未来予測・考察を交えたコンテンツ作成に関しては、未だ人力に頼らざるを得ないため、その役割は変わらないでしょう。

また、コカコーラがOpenAIと提携を結んだことからも、Typefaceはこれまでブランド企業が依存してきた広告代理店事業のリプレイスにも参入してくると予想されます。クリエイティブ企業の多くが、数カ月・数年以内にAIソフトウェアの脅威を実感することでしょう。

最もリプレイスが加速する領域は、企業秘書サービスだと思われます。Yコンビネーター出身のパーソナル秘書サービス「Magic」は、AIを活用したサービスへと路線を変更しています。当初は2C向けになんでも雑務をこなす(忘れ物を家に取りに帰るなどの細かいタスク含め)サービスとして脚光を浴びましたが、その後は2B向けサービスへ転換。今ではAIをフル活用したサービスメッセージを押し出すことで提供価値を保っているように見えていますが、業界全体が大きくAI自動化へ傾いた時、どうなるかはわかりません。CEO向けの秘書サービスで600万ドルの調達を実施済みの「Double」も、ビジネスモデルがこの後持つかは不透明です。

昨今の生成系AIの動向がクリエイティブを飲み込むようになり、かつその信頼性までも担保したとなると、多くのサービスが倒れることになるでしょう。しかしこれは進化圧であり、Typefaceのような新たな市場機会を掴むサービスが登場するのも必然です。日本は大手広告代理店が市場で存在感を持っていることもあり、この市場構造が大きく変わる時、スタートアップの参入商機が大きく開かれると予想されます。

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