
コミュニティスタートアップの IRL は2021年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資家から1億7000万米ドルを調達し、時価総額を約12億米ドルをつけユニコーンとなった。 しかし2年後、この自称「大手ソーシャルネットワーク」は、調査の結果、2,000万人いるとされたユーザのうち95%がボットであることが判明し、まもなく閉鎖される運命に直面している。

The Information によると、このスタートアップの取締役会の広報担当者は最近、調査の結果、同社が主張する2,000万人のユーザのうち最大95%が自動メッセージングシステムまたは偽装ボットであるという結論に達したと述べた。調査の結果、大多数の株主が「この会社は存続できないと判断した」と述べ、会社閉鎖の決定を発表した。
調査結果を受けて、同社は創業者兼 CEO の Abraham Shafi 氏を停職処分とすることを決定した。彼は2ヶ月以内に正式に会社を閉鎖し、さまざまな株主に資金を返還する予定だ。
ユニコーンになるべく2億米ドルを調達、ユーザ数は水増し
IRL は2017年に設立され、当初の方向性は、さまざまな現実のイベントを登録するためのカレンダーツールを作成し、ユーザがプラットフォーム上でイベントに参加している他の仲間とコミュニケーションできるようにすることだった。
若者は主に SnapChat、Instagram、TikTok を利用しているが、この世代に適したグループやイベントの商品がない。(Shafi 氏)
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大後、IRL はライブコンサートや e スポーツ大会などのオンラインイベントに目を向ける必要に迫られ、シリーズ C ラウンドの調達で得た資金で企業を買収し、ユーザベースを大幅に増やすべくリアルイベントを推進した。当時、Shafi 氏 は社外に対し、「15ヶ月で400%の成長を達成し、ユーザ数は合計2,000 万人、月間アクティブユーザ数は 1,200万人に達した」と発表した。

IRL はまた、少し前に投資家たちにある統計を共有した。2020年秋にアプリの利用を開始したユーザの63%が、今年4月の時点でもアプリを利用していた。これはソーシャルメディア業界では間違いなく素晴らしい継続率であるが、今回の調査により、これらの数字がいずれも事実ではないことが明らかになった。
また、同社がユーザ定義に型破りな方法を使用しており、その結果、主張しているユーザ数が業界で信じられている実際のユーザ数よりもはるかに多く、このこおを報告した一部の従業員は解雇されいた、と報告された。実際、アプリモニタリングプラットフォーム「Sensor Tower」も、IRLのユーザ数は約100万~200万人と推定しており、この数は、同社が主張していた2,000万人を大幅に下回っている。
「投資家は自慢する人が好き」と、起業家が相次いで批判をツイート
IRL のユーザ数の虚偽報告のニュースが出るやいなや、スタートアップ界隈に波紋を巻き起こし、「慢話や誇張に頼るスタートアップに注目するメディアや投資家にも、何らかの非があるのではないかと、Twitter で意見を訴える起業家は多くいた。
保育スタートアップ Winnie の CEO Sara Mauskopf 氏は、「わずか数年で、詐欺のない本物のビジネスを構築し、ユニコーンの基準を満たすことはほとんど不可能だ」とツイートした。
Outlier.ai の元 CEO Sean Byrnes 氏は、「なぜ、私の会社は XX のように急成長しないのかと数え切れないほど聞かれたが、ついに XX は詐欺だったとわかった」とツイートした。
Oh, man, the number of times I've been asked why my company isn't growing as fast as X and then found out X was a fraud all along.
Maybe we need a name for our businesses, like "Realicorn"…
— Sean Byrnes (@sbyrnes) June 24, 2023
今年6月に IRL が25%の人員削減を発表した際、従業員数は過去1年間で3.5倍に増加したと主張し、社内スタッフは数々の新機能やパートナーシップに集中的に取り組んでいることを明らかにしていた。また、CEO は声明の中で、IRL のビジョンの実現に人生を捧げてきたこと、また IRL の使命は気の弱い人のためのものではないが、できることに集中することでやがて成功するだろうとを強調した。
しかし、ユーザーが偽りである以上、IRL のビジョンは実現する見込みがなく、ほぼすべての従業員が 2ヶ月以内に解雇されることになる。米証券取引委員会(SEC)もまた、業績の記述方法などにおける証券法違反の可能性について、同社の調査を開始した。
【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup
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