現代人の健康課題に挑むTENTIAL、中西CEOが語った情報発信と成長戦略【KDDI推しスタ】

TENTIAL代表取締役CEOの中西裕太郎氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

コンディショニングブランドTENTIALが、急成長を遂げています。「BRIDGE HOT 100」の6月発表分のチャートで4位に入り、PR活動の積極性が注目を集めました。今回、代表取締役CEOの中西裕太郎氏にインタビューを行い、同社の事業戦略や今後の展望について詳しくお話を伺いました。

D2Cからの脱却

2018年に創業し、快適な睡眠をサポートするリカバリーウェア「BAKUNE」、着ながら血行が促進されるComfort Tech Wear「MIGARU」など特徴的なプロダクトを生み出してきたTENTIAL。当初から「確かなエビデンスを持ったものづくり」と「健康」をテーマに掲げてきましたが、成長とともに、より高品質な製品を生み出せるように進化してきました。

リカバリーウェア「BAKUNE」
Image credit: TENTIAL

成長の背景には、社会的なトレンドも大きく影響しているそうです。中西氏は「コロナ禍を経て、世の中の健康への関心が高まったことは大きな追い風になった」と分析します。さらに、睡眠負債や健康に関する話題が注目を集めるようになったことも、同社の成長を後押ししています。

産業革命以降、人間の生活リズムが大きく変化し、それに伴う健康問題が顕在化しています。肩こりや腰痛、眼精疲労など、現代人特有の症状が増えていく中で、それを解決しようとするソリューションが、時代にフィットしているんだろうなと感じています。(中西さん)

TENTIAL 虎ノ門ヒルズ店
Image credit: TENTIAL

サービス開始当初は「ウェルネスD2Cブランド」と呼ばれたTENTIALですが、現在ではオンラインとオフラインの両面で展開されています。自社ECサイトや楽天、Amazonなどのオンラインモールに加え、直営店舗やハンズなどの小売店での販売も行っています。さらに、ホテルなどの法人向け販売も開始し、チャネルの多様化を図っているそうです。

オンラインだけでなく、実際に手に取れる場所で製品を販売することも重要だと思うんです。顧客との接点を増やし、ブランド認知度の向上にも繋げています。直営店舗は現在9店舗あります。1店舗あたり3〜4人のスタッフが必要で運営面の大変さはありますが、お客様と直接触れ合える貴重な機会となっています。(中西氏)

知らない人に知ってもらうための工夫

テレビのコマーシャルやバラエティ番組の新製品紹介などでも目にすることが多くなったTENTIALの製品ですが、その革新さゆえ、手にしているユーザはまだアーリーアダプターがほとんどです。新たなユーザを獲得する上で頼りになるのは口コミですが、コンディショニングに人一倍気を遣うアスリートらからの情報発信が、認知度向上に一役買っているようです。

家族や友人からプレゼントとして当社製品を受け取り、その良さを実感して自分用に新たな製品を購入されるということも多いです。特にアスリートにおいては、合宿所など他の人の目につくところでTENTIALの製品を使用され、そこから口コミで広がったりするような事例もあります。(中西さん)

TENTIALでは、一般消費者に向けた製品開発・提供だけでなく、特定の職業や環境の健康課題を解決する取り組みも行っています。これまでに、アスリート向けの製品の開発や提供、愛知県の運送会社の従業員への製品提供と臨床実施、航空会社との提携により乗客への製品提供などの事例があります。

ANAのプライベートジェットで提供されるTENTIALのコンディショニング製品
Image credit: TENTIAL

ANAの一部プライベートジェットに当社の製品が導入されています。まずはプライベートジェットからスタートし、将来的にはビジネスクラスや一般客室にも展開していきたいと考えています。

また、運送や航空会社のスタッフなど、睡眠環境の改善が求められる職種向けの製品開発も進めています。時差や不規則な勤務形態による睡眠問題は、多くの業界で課題となっています。当社の技術や知見を活かし、問題解決に貢献していきたいと考えています。(中西氏)

情報発信と広報戦略

TENTIALの品川オフィス
Image credit: TENTIAL

TENTIALは2024年、本社を日本橋から品川に移転しました。創業地である渋谷に続く2ヶ所目の拠点だった日本橋への思い入れもひとしおでしたが、事業の拡大や関係者の利便性の向上、アフターコロナで、出社と自宅の勤務比率が約半分ずつとなる中、「コンディショニングをテーマにした新しいオフィス環境を目指した(中西さん)」そうです。

1から内装を手がけてTENTIALブランドを体感できるオフィスデザインにしました。執務室エリアは自由に動き回れるよう、回遊性を持たせた設計にしています。また、周辺エリアは大規模な緑化を行っており、散歩しながらリフレッシュすることもできます。社員のモチベーション向上はもちろん、オフィスにお越しいただく取引先や投資家の方々にも当社の成長を実感していただける空間になっています。(中西さん)

また、オフィス移転とほぼ時期を同じくして、TENTIALはリブランディングを行いました。

TENTIALは、名前は同じですが、社名とブランドでロゴを変えていたんです。ただ、社内でも時々混乱することがあって、2つのブランディングのマネジメントをするのは難しい、という結論に至り、ブランドイメージの統一を図りました。当社の理念や目指す方向性を見つめ直す良い機会となりました。(中西さん)

TENTIALは半年に1回、メディア向けのカンファレンスを開催しています。ここでは製品の紹介だけでなく、事業概況の説明や著名人を招いてのトークセッションなども行い、健康やコンディショニングに関する情報をはじめ、多角的な情報発信を心がけているそうです。新製品の有無に関わらず、常に情報を発信し続ける姿勢が、同社のPR活動の評価につながっているといえます。

最近では卓球の平野美宇選手をお招きしてイベントを行いました。アスリートの方々の体験談を通じて、睡眠の重要性を伝えることができたと思います。(中西氏)

現在、TENTIALには、商品開発、マーケティング、エンジニアリングなどを中心に、約120人の社員がいます。製品に対する認知度向上やブランディングは比較的順調に進んできたものの、中西氏は「採用にさらに力を入れていきたい」と語り、現在は採用面でのブランディングに課題感を持っているそうです。

SaaSのスタートアップなどと比べると、我々はまだ、ものづくりや健康分野のスタートアップとしての認知度が低いのが現状です。今後はもっと、TENTIALの事業の魅力や社会的意義をより効果的に発信して、優秀な人材の獲得につなげたいと考えています。

当社は社会課題の解決に直結する製品を開発し、人々の生活の質を向上させ、社会全体の健康度を引き上げることを目指しています。このようなビジョンに共感し、共に挑戦してくれる仲間を増やしていきたいです。(中西氏)

人が集まる場所には、必ず健康ニーズがあります。大企業とのコラボレーションという観点では、例えば将来、不動産のリソースやテナント企業を多く抱えるデベロッパなどと協業することができれば、オフィスワーカーの睡眠改善に向けた取り組みや、睡眠に特化した施設の開発など、事業の可能性をさらに広げていきたい、とのことでした。

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