次なるFacebookの誕生か——全米80大学に展開、平均年齢23歳以下のチームが運営するSNS「Fizz」の正体

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Facebook が世界を席巻してから10年以上が経過した今、スタンフォード大学の2人の学生 Teddy Solomon 氏と Ashton Cofer 氏は、Mark Zuckerberg 氏の成功を再現しようと、新たな匿名 SNS アプリ「Fizz」を開発し、大学生を中心に注目を集めている。

Fizz は現在、アメリカの80以上の大学で利用されており、これまでに4,150万米ドルを調達した。

Fizz の特徴は、匿名性ともでレーションできる点だ。ユーザは匿名でのみ投稿・コメントすることができる。また、モデレーション担当を設けることで、ある大学の掲示板ではその大学の学生がモデレーションを行い、プライバシーを強化し、いじめや混乱のリスクを軽減している。

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<参考文献>

モデレーションで保たれる、コミュニティの秩序

Fizz では、記事の賛否を投票することで意見を表明することができる。
Image credit: Fizz

(コロナ禍に)遠隔学習も経験したスタンフォード大学の学生 Solomon 氏と Cofer 氏は、学生とキャンパスとのつながりを構築するために、各大学に自分の意見を発言できる Fizz を開発した。

Fizz は大学生だけが利用でき、ユーザはログインするために有効な大学の電子メールアドレスと電話番号を持っていなければならない。ユーザは自分の大学のコミュニティのみを閲覧することができ、最新のニュースやコースなどについてお互いに話し合うことができる。

Fizz は他の SNS と同様、ユーザが記事、アンケート、写真を投稿することができるが、記事にコメントしたい場合、このプラットフォームは投票システムを採用しており、ユーザが個人的な意見を表明するために記事に賛否を投票することができる。

創業者の Solomon 氏は、このプラットフォームが匿名である主な理由は2つあると言う。

第一に、ユーザがインターネット上で発言する際、それがプラットフォーム上での投票であれ、講座の依頼であれ、個人的なメッセージのやり取りであれ、プレッシャーを感じないようにするためである。

第二に、このプラットフォームが「コンテンツが作者よりも優先される」という効果を生み出し、投稿が匿名であることで、他のユーザが偏見を持たずに各投稿を読んだり投票したりできるようにするためである。

Fizz が他の匿名 SNS と異なるのは、ユーザを厳密に管理する方法にある。

なぜなら、モデレーターは各大学の出身であり、AI などよりキャンパスをよく知っているからだ。このプラットフォームは、AI を使って投稿を自動的にフィルタリングし、特定のセンシティブなキーワードの使用を制限する。

一方、モデレーターは2回目のフィルタリングを行い、個人情報の漏洩や標的型の嫌がらせやいじめがないかをチェックする。プラットフォームはルールに違反した投稿を削除する権利を持ち、ルールに違反したユーザは学校コミュニティから追放され、一度追放されると再登録はできない。

シリコンバレーの連続起業家が参画、2年間で4,150万米ドルを調達

Fizz の成功は、ユーザである大学生から発せられた生の声が導いたものと言える。

ミネソタ州の学生新聞「The olaf messenger」は今年、Fizz の急成長が近年の新型コロナウイルス感染拡大と関係していると報じた。記者の Grace Quayle 氏によると、現在の大学1年生と2年生は、コロナ禍最後の数年間の高校生の時代、社会性を発達させるために最も形成的な時期を隔離された場所で過ごし、リアルに友人と会う機会が少なかったため、彼らの社交方法は上下の世代とは異なっていて、Fizz を通じて友人とつながろうとすることが、Fizz のダウンロード数に影響している可能性があるという。

一方、学生ユーザの体験という点では、同じくアメリカの学生向け情報誌「The Fairfield Mirror」の1年生 Giovanni Darden 氏は、「Fizz は大学生が自分の感情や興味を率直に表現できるプラットフォームを提供し、みんなの考えがプラットフォーム上で見られる」と述べている。

スタンフォード大学の学生が共同発行する日刊紙「Stanford Daily」の中で、Fizzの立ち上げ当初からのユーザである Ellen Abraham 氏は、「Fizz の強みは、ユーザが大学や他の学生と直接関わることができることだ」と語っている。すべてのユーザがキャンパスについて投稿し、時には他の人が自分の感情や経験について共感できる投稿をするので、Fizz では強い共感を得ることができる。

創業者2人の努力に加え、シリコンバレーで25年間起業家として活躍した Rakesh Mathur 氏は、Fizz が設立された年に CEO としてチームに加わった。彼はこれまでに10社のスタートアップを設立し、そのうちの6社は Amazon に売却したオンラインショッピングサイト「Junglee」をはじめ、テック大手に売却している。Mathur 氏がチームにいることで、Fizz は事業拡大や資金調達の専門知識を得ることができた。

Fizz の経営チーム。左から、Fizz CEO Rakesh Mathur 氏、共同創業者 Teddy Solomon 氏、共同創業者 Ashton Cofer 氏
Image credit: Fizz

Fizz は2023年、シリーズ B ラウンドで、アメリカの VC である Owl Ventures と NEA から2,500万米ドルを調達し、累積調達額が4,150万米ドルに達した。

Fizz のアプリは学生が無料でダウンロードできる。スタンフォード大学での最初の利用から、Fizz の影響力は年々拡大しており、現在少なくとも80大学がこのコミュニティを利用していて、2023年末までには250大学に拡大する見込みだ。

急成長で懸念されるセキュリティ

2021年後半、スタンフォード大学の学生3人が、Fizz のバックエンドである Google Firestore のデータベースが簡単にハッキングされ、全ユーザの身元や情報を含むように編集できることを発見した。Fizz は、匿名ユーザの電話番号やメールアドレスが流出する危険性があることを意味する深刻なセキュリティ侵害に見舞われた。

Fizz は脆弱性を認識するとすぐに、スタンフォード大学のセキュリティリサーチチームと協力し、Apple、WhatsApp、PayPal などのテック企業で勤務経験のあるメンバーなど、経験豊富なエンジニアリングチームを採用し、問題の修正方法を検討すると同時に、すべてのユーザに対して個人情報の安全性を確保するために、修正プログラムをサイト上で公開した。

ダウンロード数が増加するにつれ、Fizz の運営チームは45人に拡大し、全員が平均年齢23歳以下となった。チームを拡大したのは、将来のマーケティング計画として、キャンパス内の中古品や書籍を取引するプラットフォームなど、ユーザがプラットフォーム上で物品を販売できるようにしたり、オンラインマーケットプレイスの機能性をテストしたりするなど、ユーザにより的確なサービスを提供できるようにするためということだ。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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