企業に「金融機能を追加」する次世代融資「Kashable」のビジョン/GB Tech Trend

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Image credit: Kashable

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

企業に伴走する「備え付け銀行サービス」に注目が集まっています。今回、2,560万ドルを調達した「Kashable」は、福利厚生の一環で、従業員のクレジット向上やファイナンシャルサービスを企業に提供するフィンテックスタートアップです。

従業員の給与額に基づいて、返済不履行にならない額の融資を提供したり、クレジット向上を目的としたファイナンシャルプランの提案をしたりしています。TechCrunchの記事によると、Kashableは各従業員の雇用データだけでなく企業の収益安定性も検討した上で、サービスを提供しているとのことです。融資をした場合、給与から天引きされる形で返済されていきます。Kashableと同じ業態のスタートアップが、過去約5年ほどに亘り資金調達をしたニュースを何度か目にしており、その注目度合いは増しているようです。

さて、Kashableのようなフィンテックプレイヤーが目指すのは「融資が必ず返済される銀行」というビジョンです。従来、銀行は返済不履行の可能性があったために利子を設定して、それらを収益源にお金の貸付を行っていました。

一方、Kashableは給与から天引きされるため「必ず返済できる」額とプランを設定した上でしか貸付を発生させません。言い換えれば、不履行になるリスクを自らほぼゼロにし、利子を付ける必要性を根本からなくそうとしています。これは主な収益源を利子からではなく、企業の福利厚生サービスの利用料にしているために実現できているビジョンです(現在のKashableではあくまでも融資なので一定額の利子は未だついている模様)。つまりビジネスモデルキャンバスで言うところの「稼ぎ方」と「提供価値」を変え、「返済を前提とした銀行」のビジネスモデルを変化させたわけです。

こうした銀行のモデルは、お金を貸し出す際に発生する「利子」の概念がなくなり、信用の度合いをわざわざ計る必要が全くない世界の実現を目指します。実際、先述の記事によると、Kashableの利用者は「サブプライム」から、「プライム」へとクレジット評価を高めた人が2/3ほどいるそうです。給与天引きだからこそできる、確実な返済能力を前提とした生活者を増やしているのがKashableです。

市場の展望としては、BNPL(Buy Now Pay Later/後払い)の課題解決に向けて、いずれ同じモデルが採用されるかもしれません。欧米では、toC利用者向けに、買い物や旅行資金を貸し出すために少額を貸し付けるサービスが多く登場する一方、貸付額を返済できない見込みの人を大量に生み出していることが社会課題化しつつあります。こうした市場課題に対処するため、例えばKashableと同様のモデルを、パートタイムのバイトにも提供するサービスが予想されます。

1月16日〜1月29日の主要ニュース

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