バンコクのTalentEx、人材紹介・派遣業務クラウドのポーターズが買収——代表・越氏に聞いた決断の背景と今後

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左から:西森康二氏(ポーターズ代表取締役)、越陽二郎氏(TalentEx 代表取締役)、三ツ井健氏(ポーターズ常務取締役)、天野竜人氏(ポーターズ取締役 CFO)
Image credit: Porters, TalentEx

バンコクを拠点に求人メディアや人事向け SaaS「WakuWaku」を提供する TalentEx は先ごろ、人材紹介・派遣業務クラウドのポーターズ(東証:5126)に買収されたことを明らかにした。ポーターズの発表によれば、買収額は2,900万円。TalentEx 株式59,999株(99.999%)をポーターズが、1株(0.001%)をポーターズの子会社でシンガポール法人の PORTERS ASIA SG が取得する。ポーターズは、PORTERS のローカライズ開発や東南アジアの HR-Tech 事業拡大に TalentEx の知見を活用する。

TalentEx は2013年、ノボット(KDDI 子会社の mediba が2011年に買収)出身の越陽二郎(こし・ようじろう)氏によって設立されたスタートアップ。TalentEx の経営の柱は大きくいくつあった。タイ市場向け日本語人材採用サイトやジョブフェアの WakuWaku、タイの日系企業などに対する MICHIRU RPA の販売代理などだ。

2018年7月からは、ロシアに現地法人を設立し、ロシアのエンジニアを日本企業に供給する事業に着手し、立ち上げから1年後には売上ベースでタイにおける他事業を上回る勢いで推移していたが、2020年に入って新型コロナウイルスの感染拡大でほぼストップし事業撤退を余儀なくされた。その後、タイの事業についても、新型コロナウイルスの影響で TalentEx の顧客が事業を縮小して需要が減り、また、同社が年2回バンコクで開催していた日本語人材特化型就職フェア「WakuWaku Job Fair」は中止を余儀なくされた。

かくして、TalentEx がメンバー全員(多くはタイにおける現地雇用の従業員ら)を解雇することになったのは2021年のことだ。その後、2022年に入って感染拡大はかなり終息を見せたので、TalentEx は以前解雇したメンバーを数名呼び戻し WakuWaku を再開し始めていたが、依然として、日本企業からの受託から出た利益で WakuWaku の赤字を補填する状態が続いていた。創業から10年という節目を迎えた2023年、日本とタイを行き来する中で M&A 先を模索する中、ポーターズと出会ったという。

「WakuWaku」
Image credit: TalentEx

TalentEx はシンガポール法人の親会社、タイ法人の子会社が存在し、現地実務はタイ法人が運営してきた。今回のポーターズによる買収はタイ法人が対象で、WakuWaku の業務はポーターズが継承する。越氏は今後、ポーターズ本体の社員、ポーターズのタイ法人のディレクターに就任し、WakuWaku の拡販に注力する模様だ。求人システムである Porters と求人メディアの WakuWaku を自動連携し、セットでのパッケージング販売や営業強化に繋げる。現地人材の日本への就職もポーターズの新事業に位置付ける。

BRIDGE の取材に対して、越氏は今回の事業売却にあたり、キーマンクローズの有無については契約上明言できないとしながらも、今後、ポーターズの社員としてフルコミットしていくと明らかにした。また、タイのコングロマリットと日本のスタートアップの協業関係を模索する「Open Innovation Columbus」の立ち上げ期に間接的に関わった経緯などから、今後も、日タイ間のスタートアップコミュニティを連携する活動については、ボランタリーベースで続ける可能性があるとしている。

タイで事業を始めて10年。もともと何十年も同じ事業だけを続けていくつもりはなかったし、目先の課題としては、タイの事業の今後と借金をなんとかする必要があった。今回、ポーターズさんとご縁があり、こういう関係を築かせてもらうことになってよかったと思っている。

ポーターズのメンバーとして WakuWaku をはじめとする事業に専念することになるが、これまでの自分のバックグラウンドを考えると、今後、日本だけで仕事するということはないし、逆に、海外にいても、日本と無関係に仕事する、ということでもない。両方にとって意味あることをするために繋がりを紡いでいきたい。

日本ではスタートアップを支援するモデルは増えたが、ベンチャーキャピタルから投資を受けユニコーンを目指すという以外にも、選択肢は多くあるはずだ。今回はまず、WakuWaku を残せたことで一安心だが、これからもスタートアップエコシステムにまだ足りていないものを作っていきたいし、次の世代に何を give できるかを考えながら、みなさんと一緒に信じて頑張っていきたいと思っている。

ポーターズは2001年に創業し、人材ビジネス事業者向けにクラウドマッチングシステムを提供している。2014年に世界展開を開始し、現在では日本だけでなく、世界11エリアで導入されている。2022年9月、東証グロース市場に上場した。2022年12月期の通期決算では、売上高12億9,000万円(前年比+17.2%)、経常利益3億2,600万円(前年比+42.0%)で、1月29日の株価終値を元にした時価総額は36.5億円となっている。ポーターズは最近、海外展開に注力しており、昨年はオフショア開発の atB を子会社化している。

<TalentEx のこれまでの軌跡>

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