投資と資金調達の業務効率化SaaS「smartround」、公正価値評価機能を追加——VCの海外LP開拓寄与に期待

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「投資管理 smartround」の画面
Image credit: Smartround

スマートラウンドは9日、同社が開発・提供するスタートアップと投資家の業務効率化プラットフォーム「smartround」で、VC 向け投資先評価機能に公正価値評価(フェアマーケットバリュー)にも対応させたと発表した。この機能は、従来の評価手法に加え複数の手法に対応しており、スマートラウンドでは、VC が公正価値評価業務の一貫性と透明性の向上への寄与が期待される。

VC ファンドが LP に対してパフォーマンスを報告する際には、国際的には、IPEV(International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines)というガイドラインへの準拠が期待される。国内には、これまで IPEV に則った公正価値評価を提供できるツールが存在しなかった。

このことはファンドにとって、LP を海外から集める上でボトルネックになる。年金や Fund of Funds など、海外の大型機関投資家はフェアマーケットバリューを求めるからだ。ファンドは償還されれば利益確定するので、パフォーマンスを公的な値で LP は評価できるが、運用の最中は、国際的なファンドが IPEV を採用するのに対し、国内 VC は簿価ベースの評価が多いそうだ。

これには歴史的な背景もある。元来、日本の VC は国内の事業会社を多く LP に擁していることが多い。おそらく、会計や財務管理の都合から、運用中のファンドから出資されている投資先の評価を、数値が流動的なフェアマーケットバリューよりも簿価ベース(つまり、プライベートな取引ではあるが、含み益のある市場評価が考慮されていない)ですることを好む傾向にあったからだ。

ただ、昨今、政府が「スタートアップ育成5か年計画」を発表する中で、ファンドも大型化が迫られている。これまではファンドが大きくない → スタートアップのレイターステージに多額の出資ができない → 多額の資金調達需要があるスタートアップは、ファンドではなく市場から資金調達せざるを得ない → 時期尚早の小粒 IPO が増えた、という構図が問題になっていた。

数年前から、日本国内でもファンドの大型化は増えてきた。その背景には、アメリカと中国のデカップリングから、中国への行き場を失った資金が、アメリカの大型機関投資家から日本のファンドへ流入している、という側面もあるだろう。日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)もフェアマーケットバリューを採用する VC を増やそうとしてきたが、これまでは日本には適したツールが無いのが問題だった。

海外 LP を擁しフェアマーケットバリューを採用する VC の中には、アメリカの S&P が2022年に買収した IHS Markit のツール「Qval」を使ってきたところもあるが、日本の会計制度に最適化されずに固定計算されてしまうため、本来ポジティブ(含み益のある)投資先の評価がネガティブ(含み損がある)と表示され、海外 LP に理解してもらうのに苦労した、といった逸話もある。

smartround は60社以上の VC が利用しており、スマートラウンドではスタートアップのみならず VC からの悩みにも耳を傾けてきた。そうしたペインの解決策の一つが今回の機能で、複数の監査法人とも協議しながら仕様策定・開発を進め、今回のリリースに至ったという。本機能の追加を受け、間接的には、日本の VC ファンドの海外大型機関投資家からの資金調達増加、ファンドの大型化、レイターステージ向けファンドの増加に伴い、スタートアップ IPO の大型化が増える素地が整うことが期待される。

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