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【IPOスタートアップの資本政策解剖】マネーフォワード編〜第2回「Smartround Academia」から

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前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。 金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴー…


前回のビザスクに続き、今回、資本政策を解剖するのはマネーフォワード(東証:3994)だ。2012年5月に創業し、2017年9月に東証マザーズに上場。当時、今ほどメジャーではなかった SaaS スタートアップの IPO としては先駆け的存在である。今回、マネーフォワードの資本政策を披露してくれるのは、同社を IPO へと導いた当時の CFO 金坂直哉氏である。

金坂氏は東京大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックスの東京オフィスとサンフランシスコを経て、2014年にマネーフォワードに参画。同社が個人向けの家計簿アプリから、事業者向けの会計サービスへと進化を始めた直後のことだ。昨年までマネーフォワードの CFO を務めていた金坂氏だが、IPO 経験を生かし昨年設立された成長企業向けのフィナンシャルアドバイザリーを提供するマネーフォワードシンカの代表に就任。7月1日付けで、金坂氏が再びマネーフォワードの CFO に復帰就任したことが発表されている

なお、マネフォワードシンカは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年3月に VC とスタートアップのオンライン面談マッチングを支援する活動を実施したほか(すでに終了)、5月には投資家向けに保有する未上場スタートアップ株式の売却先を紹介する株式売却アドバイザリーサービスを開始している。

今回の聞き手も、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのマネーフォワード関連記事(一部)>

<上場前(2012年5月〜2017年9月)>

マネーフォワードは2017年9月に上場を果たしたが、上場前段階で44億円、上場後も市場以外で143億円を調達するなど、事業成長に成長資金を常に調達し続けている。最初の資金調達となったのは、創業から7ヶ月後の2012年12月。代表取締役の辻庸介氏の古巣マネックス証券のベンチャー投資部門からだった(当時のマネックス・ビジネス・インキュベーション、現在のマネックスベンチャーズ)。マネーフォワードにとって初めての外部資金調達(2,000万円)だったが、同社ではこれをシリーズ A ラウンドと位置付けている。

シリーズ B〜C ラウンド位までは VC 調達が多いが、シリーズ C〜D ラウンドあたりからは地方銀行や事業会社からの調達が増えている。マネーフォワードは、B 向けの販売チャネルとして地方銀行や会計事務所などとの協業を行っており、事業ステージの進捗とともにベンチャー資金よりは事業パートナーからの資金注入が増えていることがわかる。ちなみに金坂氏がマネーフォワードに参画したのも、同社が シリーズ C を始める2014年のことである。

スタートアップ経営者にとって資金調達のリードを掴むことは重要ミッションの一つであり、この日の視聴者からは金坂氏に対し、自社に合った VC や投資家にたどり着く方法、投資家とのリレーションに対して質問が多くなされた。質問の順序は前後するが、金坂氏の説明を要約すると概ね次の通りだ。

  • アーリーステージにおいて特に重要なのは資本政策。後戻りできず、投資家とのやりとりで飲んだ条件や契約が、結果的に上場で足を引っ張ることが起こりうるのがエクイティファイナンスの怖さだ。バリューエションも、ダイリューションも、上げ過ぎても下げ過ぎても良くない。多面的な角度から考えることでリスクを下げるべきだと思う。
  • 投資家との契約にあたっては自社にあったアドバイザーと相談し、二社以上の投資家と話すことで、投資家との契約における交渉力を維持すべきだと思う。
  • エクイティファイナンスにかけた時間は、2014年の時で半年(シリーズ C)、2015年の時で4ヶ月(シリーズ D1)、その次は数ヶ月くらい(シリーズ D2)。回数を経るにつれ、普段からリレーションが取れているため、短くできるようになっていった。
  • 投資家とは常にコミュニケーションし、「次にファイナンスするときは声をかけてください」と言ってもらえる関係性を確立しておく。あるラウンドのファイナンスが終わった瞬間から、投資家には次のラウンドに参加してもらう可能性があるという位置づけ。
  • 地方銀行から資金を調達できた背景には、ビジネス面でのアライアンスが進んでいることが大きく影響している。アプリを作るとか、クラウドサービスを進めるとか、そういった協業関係が無いと、地方銀行からの資金調達は難しいのではないか。
  • バリュエーションが100億円を超えてくると VC からの調達は難しくなってくることも事実。投資家に対しては、バリュエーションや投資リターン以外のメリットを見せる必要が出てくる。レイターステージで事業パートナーからの調達が増えるのには、そういう理由もあるだろう。
  • ストックオプションは、基本的に年に1回の形で運用していた。全株式の中で、上場時の何%を割り当てるかは投資家らとの契約の中で決めていた。例えば、ストックオプションで付与できる割合を全株式の15〜20%程度に設定しておき、創業から上場までを4年と見るなら、1年あたり4〜5%程度は付与できる、というようなイメージ。誰にどのように付与するかについては、社員が100人程度の規模までは評価制度が確立されていなかったので、CEO や CFO が相談して決めていた。
  • どの投資家から、バリュエーションをいくらにして、どれだけ調達するかについては、まずは自分たちのビジョンを明確にし、それに必要な資金を算出する。そして、どの程度のバーンレートをカバーして、その金額で何年持たせられるかを計算する。マネーフォワードの場合は、比較的厚めにファイナンスしてきた。ストレッチしたバリュエーションでファイナンスができたのは幸運だった。そして、投資家には、事業上の関係やフィーリングも含め、一緒の船に乗ってやっていける人や企業を相手に選ぶべきだ。
  • 投資家に伝えていくストーリー(業績見通しの計画)については、事業のステージによって違ってくる。2014年くらいまでは(シリーズ C あたり)売上はまだ1億円に届かない位の業績だったので、今後どういうプロダクトをローンチしていくのかを話していた。2015年(売上4億4,000万円)、2016年(売上15億4,000万円)くらいになると、トラックレコードで将来成長を見せられた。売上がまだ無いときは SAM(実際に提供可能な市場規模)や TAM(獲得可能な最大市場規模)で、売上が出てきたら実績の延長線で話せるようになる。
  • 資金調達は CEO 中心でも CFO 中心でもできるが、どんな体制で臨むかはその会社次第。資金調達に表面的なスキルよりも、むしろ、投資家との信頼関係を築いたり、最後までやり切れる人だと見てもらえたりすることが大事。投資家も経営者を2〜3年見ていればそのあたりが分かってくるので、安心して投資ができるようになる。投資家に対しては、真摯かつ愚直に事業に取り組んでいる姿を見せ続けるというのが王道。ファイナンスが必要になってから、ある日投資家に出会い、「いきなり投資を決めてください」と申し出る選択肢は勧めない。

<上場(2017年9月)>

スタートアップ経営者にとって、自社の業績が上場基準を満たしたとして、いつ上場するかというのは熟慮すべき課題。最近では、ファンドの大型化によって、資金需要だけで考えれば VC からの調達でも充足することができるだろう。しかし、「金は天下の回りもの」であるゆえ、経済のある部分がスタックすると資金調達を含め経済全体がスタックする危険を指摘する CFO は多い。

マネーフォワードでは、シリーズ E ラウンドを迎えた2016年前後から経営陣の間で上場に向けた話が出始め、「上場を最速で目指そう」という意見の一致から2017年夏にターゲットを定めた。マネーフォワードの初期投資家の代表者でもあり、辻氏の心の師でもある松本大氏が言う「上場はタイミングが難しいがゆえ、できるときにするのがいい」という以前からの進言も参考にしたそう。

タイミングは重要であるが、タイミングは簡単にずらせるものでもない。したがって、シンプルに考えた結果、最速を目指した。すべての会社に当てはまらないかもしれないが、マネーフォワードの場合、IPO できるときに IPO して次の成長に備えるということで、そういうタイミングになった。(中略)

海外ではかなり大きくなるまでは IPO しないという傾向がある。これは IPO しないというよりも、大きくならないと IPO できないからという感じ。日本の場合はマザーズという新興市場があるので、IPO できるタイミングで IPO というのもありだし、大きくしてから IPO するというどちらも選択肢としてありだと思う。(金坂氏)

<上場後(2017年9月〜)>

マネーフォワードが2020年4月に公開した第1四半期の決算説明会資料によると、同社の株主のうち機関投資家比率は過半数を超え、海外機関投資家が36%、国内機関投資家が16%を占める。昨年、日経が発表した売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象にした調査では、2018年度に海外投資家を増やした会社1位はマネーフォワードだった(89社)。別の日経記事によれば、これら海外からの公募増資は、主に M&A 資金などに充てるためのものだ。

実際のところ、クラビス(2017年11月)、ナレッジラボ(2018年7月)、ワクフリ(2018年8月)、スマートキャンプ(2019年11月)と、マネーフォワードはスタートアップ買収にも積極的だ。マネーフォワードの海外投資家からの資金調達は、日本の SaaS や会計系サービスなどへの強い期待の現れと見ることもできる。また、買収はしていないが、Chatwork(東証:4448)や BASE(東証:4477)といった上場を果たしたスタートアップに対する投資家でもあった。

そういったこともあり、マネーフォワードはこれまで海外投資家への IR 活動を積極的に行ってきた経緯がある。IPO 以降、通算で三度にわたる海外からの資金調達を行っており、1度目は IPO と同じタイミングで、旧臨報方式(アメリカを除くアジアやヨーロッパなどの世界にオファリングをする)により30億円、2度目と3度目は海外公募増資(Global Offering)により、それぞれ66億円(2018年12月)と47億円(2020年1月)を調達している。1度目の調達時に旧臨報方式を選んだのは投資家からの需要が大きかったこためで、英文でのドキュメンテーション作成も必要とされなかった。

金坂氏によれば、M&A する場合と、マイナー出資する場合では、投資先スタートアップの選定基準が全く異なってくる。マネーフォワードの M&A 戦略はプロダクトを増やす M&A とユーザを増やす M&A に大別されるが、これまではプロダクトを増やす方に終始してきたそうで、今後はユーザを増やす M&A 案件も手掛けていきたいという。また、M&A では買収先のスタートアップの経営者をマネーフォワードグループの経営陣に迎えることを前提とするため、会社間や人の間のカルチャーフィットが重要となる。資本提携や出資の場合はこの限りではなく、投資先のスタートアップの経営者が IPO までやり切れるかどうかを見極めるそうだ。

また、上場後は、いかに株主に長く会社を愛してもらうか、もっと言えば、株を持ち続けてもらうかというのはテーマだ。安定株主をどうやって確保するかという視聴者からの問いには、金坂氏は次のように応えた。

安定株主という概念は信じていない。どんな株主にも、売りたい時に売る権利があるからだ。ただし、投資家とはコミュニケーションを密にとって、長期にわたって株式を保有してもらえるよう努力はしている。投資家とは立場が違うので、株式を売り出すタイミングについては交渉はできても無理は言えない。普段からしっかりした IR を心がけ、マネーフォワードの場合は大口の株式売却があっても、株価に影響を与えずに、それをいい投資家にまた買ってもらえている。

<その他>

  • 株主が多いと株主とのコミュニケーションが大変になる、と懸念する経営者もいる。マネーフォワードの場合、ミドルステージ以降は、事業パートナーに株主になってもらったものが多い。そのため、彼らに対しては投資家への説明以前に事業における説明があり、月1回ペースでの KPI 報告会、その後、社長や担当者も交え飲み会という形で運営していた。株主=事業パートナーに毎月会っているので、次のファイナンスの情報も伝えやすい。複数の株主が同時に同じ場所に集まれ、効率的に意見を交換できる点でもよかった。
  • 新型コロナウイルスの影響で資金調達が難しくなるのも事実だろうが、工夫をする方法はある。まず、資金が足りないからと言って新規投資家に連絡を取る前に既存投資家と密にコミュニケーションをとるべきだ。新規投資家と既存投資家では、そのスタートアップに対して持っている情報量が違うし、既存投資家がサポートできないのに新規投資家がサポートするのは難しい。既存投資家の支援を獲得し、それから新規投資家を呼んでくるべき。営業上ムダなコストはとことん削ること。

マネーフォワードシンカのクライアント企業

金坂氏が代表を務めるマネーフォワードシンカでは、スタートアップが IPO などイグジットを目指す上でのフィナンシャルアドバイザリー事業を行っている。昨年9月の創立から、スタッフメンバーは総勢10名体制にまで成長。マネーフォワードの上場を通じて得られた知見や経験をもとに、2021年までにスタートアップ100社の支援を目指しているそうだ。

また本セッション終盤には、先月のエルピクセルの元取締役横領事件にも触れられた。CEO は CFO に全幅の信頼を置くものだが、悲しいことにこういう事案が時々世の中を賑わせてしまう。今回の事件では、銀行口座の通帳コピーが細工されるという単純なトリックで経営陣が騙されてしまったわけだが、マネーフォワードを使えば、口座情報はリアルタイムで金融機関からアグリゲートされるため、その情報をオンラインで経営陣が共有すれば、同じような問題は生じない、とのことだった。

スマートラウンドは、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS「smartround(スマートラウンド)」のユーザが去る6月16日で1,000社を超えたと発表した。smartround のローンチは昨年6月22日なので、1日平均約2.8社のペースでユーザが増えたことになる。また先頃、これまでの「資本政策 smartround」「経営管理 smartround」「会社紹介 smartround」「ライブラリ smartround」に加え、新たに「株主総会 smartround」をリリースした。株主総会 smartround の機能の一部は、先月ケップルがローンチした「株主総会クラウド」と競合する可能性がある。

【IPOスタートアップの資本政策解剖】ビザスク編〜第1回「Smartround Academia」から

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スタートアップのニュースサイトを運営していると、伝えやすいことと伝えにくいことがある。伝えやすいのは、サービスやプロダクトのローンチなど新しい何かが始まる話。これと対照的に伝えにくいのは資本政策だ。資本政策は一度間違えると後戻りできない。 会社を何度かやった経験から言わせてもらえるなら、失敗を経ることで資本政策の過ちを学んで次に生かすことはできるが、時間というものが何より貴重な資源である我々にとっ…

スタートアップのニュースサイトを運営していると、伝えやすいことと伝えにくいことがある。伝えやすいのは、サービスやプロダクトのローンチなど新しい何かが始まる話。これと対照的に伝えにくいのは資本政策だ。資本政策は一度間違えると後戻りできない。

会社を何度かやった経験から言わせてもらえるなら、失敗を経ることで資本政策の過ちを学んで次に生かすことはできるが、時間というものが何より貴重な資源である我々にとっては、なるべくなら失敗に要する時間の浪費は回避したい。

失敗の可能性を抑えて理想的な資本政策を組み立てるには先人の知見に頼るのがベストだが、この資本政策に関する知見というのが、世の中ではなかなか共有されない。投資家と企業経営者が経営上の秘密を公開することを嫌ったり、場合によって潜在的な競合に〝塩を送る〟ことになるのを懸念したり、その理由はさまざまだろう。

昨年7月に正式ローンチした「Smartround(スマートラウンド)」は、起業家の資本政策づくりを支援する SaaS だ。以前ならスプレッドシートを使って行っていた業務を圧倒的に効率化でき、策定したプランは、必要に応じて、会社の経営陣同士はもとより、投資家など外部のステイクホルダーとも共有することができる。

スマートラウンドは今月から、Smartround を活用し、IPO を遂げたスタートアップの創業からの資本政策の軌跡を共有してもらうウェビナーシリーズ「Smartround Academia」を開始した。それぞれのスタートアップの CFO や資本政策に深く関わる IR 担当者らが、自分たちの経験を惜しげもなく披露してくれる機会である。

第1回の Smartround Academia (5月15日開催)では、今年3月に東証マザーズへの上場を果たした、スポットコンサル提供のビザスク(東証:4490)が登壇。2012年3月の創業、2013年10月のサービスローンチを経て上場に至るまでの8年にわたる資本政策の裏側を、コーポレートグループ資本政策室長の宮城勝秀氏が解説した。聞き手は、スマートラウンド COO 冨田阿里氏が務めた。

<これまでのビザスク関連記事>


ビザスクが提供するのは、ビジネス領域に特化したナレッジシェアプラットフォームだ。新規事業の検討や市場調査のニーズがある依頼者が、その分野に知見を持つアドバイザーから講義を受けたり相談をしたりすることができる。依頼者が直接アドバイザーを見つける方法と、ビザスクのスタッフが依頼者に適切なアドバイザーを紹介する方法があり、特に後者が売上の多くを占める。2020年2月現在、アドバイザーの数は10万人を超え、依頼者とアドバイザーのマッチング実績は累積49,000件超。

B 向け SaaS サービスの特徴の一つは、ユーザから料金を前払徴収する点だ。製造業や在庫が必要なスタートアップであれば予め買付費用が必要になるが、ビザスクはマッチングサービスであるため、それも必要ない。また、ビザスクでは、依頼者からの利用料支払には事前購入のチケット制をとっている。前受金が入金されてからアドバイザーには報酬を支払うまでのリードタイムが生まれるため、これが同社のバランスシートにキャッシュポジティブ化に一役買っていると言っていいだろう。

したがって、興味深いことにビザスクは IPO するまでに外部投資家(主に VC )からは2度(シリーズ A、シリーズ A2)しか資金調達を実施していない。キャッシュボジティブであるため運転資金は十分に確保されているため(もっとも、運転資金はベンチャーキャピタルより、信用を獲得できているならデット調達が理想的ではあるが)、VC からの資金は全て事業拡大や加速のために投じることができたと理解できるだろう。

ビザスクの資本政策における細かい数字の推移は上の Smartround の画面(上図)をスクロールして見てもらうとして、ビザスクの創業から IPO に至るまでのタイムラインを要約すると次の通りだ。

ビザスクでは新たに加わったメンバーへのストックオプション(新株予約権)の発行を通算で13回にわたって行っている。数回実施されている株式分割もまた、バリュエーションおよび株価上昇に伴って株式を扱いやすくすること、ひいては、ストックオプションを発行しやすくする意図があったと考えられる。従業員に対して、必要に応じて十分なストックオプション割当ができるよう、資金調達時には外部株主からの理解を得ておくことの必要性を宮城氏は強調した。

なお、2017年10月に実施されたストックオプション発行(第4回)では政策金融公庫に付与されているが、これはビザスクが資本性ローン(デットでありながら、金融機関が資本の一部とみなす性質を持つ劣後ローン)での資金調達時のもの。政策金融公庫は、ビザスク上場後にストックオプションを行使して株式利益を得ることで、ローン貸出の金利に相当する利益を後日確保する契約になっている。

また、2019年6月に実施されたストックオプション発行(第12回)では信託受託者に付与されているが、これはストックオプションの一定枠を預けることで、その時の条件でストックオプションを「冷凍保存できる効果(宮城氏)」があるという。後日、必要な人に対して付与することができる。信託型ストックオプションの設計や行使の方法は各所に資料が公開されているのでここでは詳述しないが、最近では、「SOICO」に代表されるような信託型ストックオプションに特化したプラットフォームも生まれつつある。

一般論として、市場に流通していない未公開株式の価格は、結局のところ創業者をはじめステイクホルダーの「言い値」でしかないわけだが、特に IPO しようとするスタートアップは、IPO に向けて、その株価の算定根拠を各所から求められるようになる。宮城氏は適宜、外部評価者による株価算定を実施することも勧めた。

ビザスクでは事業拡大に向け、宮城氏が所属する資本政策室をはじめ、広く人材を募集している

次回の Smartround Academia は6月12日、マネーフォーワードの資本政策徹底解剖。同社元 CFO の金坂直哉氏が登壇の予定。お楽しみに。

スタートアップと投資家の業務効率化SaaS「smartround」、プレシリーズAでFounders Fundのスカウトファンドなどから1億円を調達

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※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから スタートアップと投資家の業務効率化プラットフォーム「smartround」を提供するスマートラウンドは1日、プレシリーズ A ラウンドで、FF APAC Scout、Justin Waldron 氏、Matias de Tezanos 氏などから1億円を調達したことを明らかにした。投資契約は、J-KISS(新株予約権型…

Image credit: Smartround

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

スタートアップと投資家の業務効率化プラットフォーム「smartround」を提供するスマートラウンドは1日、プレシリーズ A ラウンドで、FF APAC Scout、Justin Waldron 氏、Matias de Tezanos 氏などから1億円を調達したことを明らかにした。投資契約は、J-KISS(新株予約権型コンバーティブル・エクイティ)に沿っている。

FF APAC Scout は、Peter Thiel 氏率いる Founders Fund のアジア太平洋地域向けスカウトファンド(連続起業家でもあるエンジェル投資家がファンドとして出資できる仕組み)で、同じスキームとしては、Japan Angel Fund や Sequoia Capital のスカウトファンドが有名。Justin Waldron 氏は Zynga の共同創業者であり、日本のスタートアップでは、これまでに語学学習の Lang-8 にも出資している。Matias de Tezanos 氏は連続起業家で7回のエグジットを経験した投資家でもある。

今回の調達は、同社が昨年3月に発表したシードラウンドに続くものだ。シードラウンドで日本のエンジェル投資家複数(公開20名)から出資を受けたのに続き、今回はアメリカ・シリコンバレーのエンジェル投資家からも出資を受けたことになる。

<関連記事>

今回、FF APAC Scout で smartround への出資を担当した Jeff Lonsdale 氏は、声明の中で次のように語っている。

日本は世界でも有数の経済大国であり、最も生産性が高く革新的な人材を抱えています。このエコシステムからより多くの強力な企業が生まれることが期待されており、Smartround にはこうした未来を作り出すことができる力があります。

Lonsdale 氏は2018年の Tech in Asia Tokyo の際にスピーカーとして日本に招かれ、今後、日本のスタートアップのグローバル化に並々ならぬ期待を示していた

smartround はスタートアップと彼らに出資する投資家にかかる資金調達業務を効率化するクラウドサービス。資本政策、経営管理、会社紹介、ライブラリなど、スタートアップを経営する上で必要となるリソースを包括的に提供される。投資家には、ポートフォリオをトラッキングする機能なども備えている。アメリカの Carta や Pulley などをベンチマークしているようだ。

<関連記事>

スマートラウンドの創業は2018年5月。創業者の砂川大氏は商社やベンチャーキャピタルでのキャリアを経て、2005年に位置情報関連のロケーションバリューを創業、2012年にドコモグループ入りした。

砂川氏は、今回調達した資金の使途を声明で次のように説明している。

新型コロナウィルスによる混乱が続くなか、日本の将来を担うスタートアップもまた難しい舵取りを強いられています。(中略)

今回、そんな私たちの理念や理想に共感し、こんな環境下でもファイナンスに応じてくださった投資家の皆さまに感謝しつつ、サービスの改善、ボーダレスな展開を目指していく所存です。特に、今回のファイナンスの経験を生かし、日本のスタートアップが smartround を通じて海外の投資家から直接資金調達できるよう、サービスを進化させていきたいと思います。

<関連記事>

セールスフォースでスタートアップ支援部門を率いた冨田阿里氏、資金調達管理効率化SaaSのスマートラウンドにジョイン

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スタートアップシーンが醸成されるにつれ、スタートアップの成長を支援する仕組みは多様化しつつある。ベンチャーキャピタルから始まり、エンジェル投資家という存在が現れ、現在では、世界的にもインキュベータやアクセラレータの数は増加の一途だ。ミドルステージ以降のスタートアップの大企業連携やビジネスのスケールアップに特化した「スケーラレーター」といったビジネスモデルも現れた。 時々自分のことを忘れがちになるが…

スタートアップシーンが醸成されるにつれ、スタートアップの成長を支援する仕組みは多様化しつつある。ベンチャーキャピタルから始まり、エンジェル投資家という存在が現れ、現在では、世界的にもインキュベータやアクセラレータの数は増加の一途だ。ミドルステージ以降のスタートアップの大企業連携やビジネスのスケールアップに特化した「スケーラレーター」といったビジネスモデルも現れた。

時々自分のことを忘れがちになるが、スタートアップのメディアを運営するのも、幾分はスタートアップの成長に寄与しているだろう(…と信じたい)。大企業の中でスタートアップとの連携に心血を注いだり、大企業の中からスタートアップを起こすイントラプレナーと呼ばれる人たちもいる。スタートアップの成長を支援するスタートアップも数々生まれている。選択肢が増えることは素晴らしい。

日本のスタートアップシーンに身を置く人なら、冨田阿里(とみた・あんり)氏のことを知らない人はいないだろう。2016年セールスフォース・ドットコムに入社、2017に7月にスタートアップ戦略部を立ち上げ、以来、約2年間にわたりセールスフォースとスタートアップとの連携に奔走するだけでなく、多くのイベントやミートアップなどの開催を通じて、オープンイノベーションの活性化に携わってきた。そんな彼女がセールスフォースを離れ、新たなスタートアップにチャレンジするという。

スタートアップの名前はスマートラウンド。創業者の砂川大氏は商社やベンチャーキャピタルでのキャリアを経て、位置情報スタートアップのロケーションバリューをイグジットさせたシリアルアントレプレナーだ(「お金アンサー」に出資するなど、エンジェル投資家としての顔も持つ)。今年3月には、エンジェル投資家20名などから5,500万円を調達(日本政策金融公庫からの借り入れを含む)したのは記憶に新しい。今回、6名からなるスマートラウンドのチームに、執行役員 COO として参画するという。

冨田氏が自身のキャリアパスとしてスマートラウンドを選んだ理由や、スタートアップを通して、他のスタートアップの成長を支援する考えに至った経緯を聞いた。

スマートラウンドのメンバー。最前が冨田阿里氏で、その直後が代表の砂川大氏。
Image credit: Smartround

セールスフォースを辞められて、スマートラウンドに入られるとお伺いしました。おめでとうございます(と言うべきかな)。

ありがとうございます!

2017年7月に、セールスフォースでスタートアップ戦略部を立ち上げて、これまで約2年ほどスタートアップとのリレーションを活動をやってこられたわけですけど、お辞めになられる理由は?

身体が2つあったら辞めたくなかったのですが、どうしても今、スマートラウンドの事業に挑戦したくなりました。

スマートラウンドについて教えてください。

スタートアップに対して資金調達業務と株主コミュニケーションの円滑化を、投資家に対しては投資事業におけるソーシング、クロージング、モニタリングの効率化を、それぞれ実現するファイナンス・マネジメント・プラットフォームです。

初めての資金調達をする起業家も、スマートラウンドを使えば、ガイドに沿って入力するだけで、資金調達計画を作成できます。これから少しずつ、起業家の役に立つ知識もシェアしていきます。

スタートアップを支援したいという思いを実現するには、いろんな方法がある思います。投資家になってもいいし、VC に就職してもいい。アクセラレータや、スタートアップを支援する事業形態も多様化しました。数ある選択肢の中で、スマートラウンドを選んだのはなぜでしょうか?

これまでも大企業の中で新規事業に挑戦したり、スタートアップを手伝うことは沢山ありましたが、立場は数万人規模の会社の一社員。自分が今すぐ VC やアクセラレータに行くよりも、先に自分ごととしてスタートアップを経験する方が、より起業家の気持ちが分かるし、役にも立つと考えました。

これまで2年ほどスタートアップや起業家と接してこられて、日本のスタートアップコミュニティに足りないもの、もっとこうだったらいいのに、と思うことは何でしょうか?

まだまだ起業家の非効率的な作業を減らせると思います。生産性を高める SaaS を提供するスタートアップも、資金調達など自社が多くは経験しないことに対しての生産性は棚にあげているように感じます。

起業家は皆同じことをしているにも関わらず、それぞれにとって初めての体験であるため、自分の周りのツテを辿って、みんなが同じ本や記事を読んで一から勉強しています。

そして、悲しいことに同じような失敗や苦労をしている人が少なくありません。だからこそ、スマートラウンドではそのような体験をシェアできるようなコミュニティも立ち上げます。

「smartround」のダッシュボード
Image credit: Smartround

スマートラウンドではどのような仕事に就かれるのですか? スマートラウンドに参画された上での、ご自身の達成したいミッションみたいなのってありますか?

COOとして、起業家と投資家の声を聞きながらプロダクトを作っていきたいです。

スマートラウンドがあることで、スタートアップエコシステムがより良くなって、世界を良くするプロダクトや良い企業がたくさん出て来たら幸せですね。

THE BRIDGE の読者の中には、冨田さんファンも大勢いると思います。今後、冨田さんに会うには、どこに行けば会えますか?

そんなことはないと思いますが、そんなニーズがもしあれば、オフィスに来てください! 今は東京駅直結の「xBridge-Tokyo」というシェアオフィスに入っています。

また、いくつかイベント登壇を予定していますし、起業家の方に向けたオフライン&オンラインのイベントやコミュニティを企画しています。Twitter をフォローいただけるととても嬉しいです。

可能な範囲で、今後思い描くキャリアパスみたいなのを教えてください。特に、まだまだ女性の少ない日本のスタートアップシーンにおいて、オープンイノベーションの先陣を切ってきたような冨田さんのような存在は、この分野で仕事する後進の女性たちへの示唆にも富んでいると思います。例えば、5年後にどうなっていたいとか?(普通の主婦になりたい、とかでもいいけど)

ふわっとしていますが、5年後は今よりももっと人々の役に立ちたいです。

2年前のインタビューで目標を聞かれたのですが、そのときも明確なキャリアパスはなく、少しでも昨日より成長したいし、私がいることで誰かをちょっとでも幸せにしたい。って話しているのですが、全く変わってないです。

ありがとうございました。


スマートラウンドの直接的な顧客は、ポートフォリオの効率的な管理が課題になる VC のようだが、その根底にはスタートアップの資金調達業務をもっと効率化したい、という思いがあるようだ。資金調達はすべての起業家にとって頭を悩ますテーマであり、この問題を解決することは、自ずから、スタートアップや起業家の成長に寄与することになる。

スマートラウンドの Web サイトを見てみると、多くの VC やエンジェル投資家らがパートナーやサポーターとして名を連ねている。スマートラウンドは彼らに、旗艦サービスである SaaS の「smartround」を使ってもらうことで、使い勝手や機能についてフィードバックをもらい、それらをサービスへと反映していっている。ファーストユーザに意見をもらうことで市場に受け入れられるサービスを効率よく作り上げることが可能になる。

この分野には世界中に約20ほどのサービスが存在するが、中でも有名なのが Andreessen Horowitz らが使っている Carta だろう。今年5月に3億米ドルを調達した Carta は、この半年でバリュエーションが約2倍の17億米ドルとなり、ユニコーンクラブ入りを果たした。従来であれば、この種のポートフォリオ管理ツールは VC が内製的に開発していたのかもしれないが、日常業務に必要な機能を網羅したツールが SaaS として提供されるようになったことで、VC にとっても好都合なわけだ。この流れはいずれ日本来る日が近いと、スマートラウンドは考えている。

オープンイノベーションが賑やかなこの国では、大企業とスタートアップの両方を経営した人材は貴重な存在だ。誰しも未来のことはわからないけれど、もともと、船乗りを目指していたという冨田氏の新たな船出に賛美の辞を送りたい。

<参考文献>

スタートアップ資金調達管理「smartround」がシード資金獲得、エンジェルら20名から

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資金調達業務を効率化する「smartround」を開発・提供するスマートラウンドは3月6日、個人投資家を引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。調達した資金はこれらの出資に合わせ、日本政策金融公庫からの借り入れを含めて5500万円。各個人の出資額や株式比率などの詳細は公開されていない。 今回、公表されている個人投資家は赤坂優氏、朝倉祐介氏、有安伸宏氏、伊藤英佑氏、漆原茂氏、海老根智仁氏、荻原国…

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Image Credit : スマートラウンド/投資家側サービス

資金調達業務を効率化する「smartround」を開発・提供するスマートラウンドは3月6日、個人投資家を引受先とする第三者割当増資の実施を公表した。調達した資金はこれらの出資に合わせ、日本政策金融公庫からの借り入れを含めて5500万円。各個人の出資額や株式比率などの詳細は公開されていない。

今回、公表されている個人投資家は赤坂優氏、朝倉祐介氏、有安伸宏氏、伊藤英佑氏、漆原茂氏、海老根智仁氏、荻原国啓氏、片尾英和氏、久保泰一郎氏、佐藤裕介氏、島田亨氏、杉山全功氏、関喜史氏、孫泰蔵氏、高梨大輔氏、高野秀敏氏、中川綾太郎氏、三木寛文氏、山木学氏、脇丸俊郎氏など。

smartroundはスタートアップと彼らに出資する投資家にかかる資金調達業務を効率化するクラウドサービス。それぞれにサービスが提供されており料金体系などが異なる。

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Image Credit : スマートラウンド/スタートアップ側サービス

スタートアップに対してはガイドに沿って情報を入力することで資本政策が作成できる機能や、実行中の投資ラウンド管理、株主と交わす契約書などのファイル共有、TODO機能などが提供される。投資サイドは出資しているスタートアップを一覧で管理することも可能。現在はβ版として限定的にサービスを公開している。調達した資金で商用サービスの公開に向けて機能改善などを進める予定。

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写真中央:スマートラウンド代表取締役の砂川大氏

スマートラウンドの創業は2018年5月。創業者の砂川大氏は商社やベンチャーキャピタルでのキャリアを経て、2005年に位置情報関連のロケーションバリューを創業した起業家。2012年にはドコモグループ入りし、同社代表を退任後に再度シリアルアントレプレナーとしてスタートアップした。