料理配達ロボの米Kiwibot、セキュリティチップ開発の台湾AUTOを買収——中国リスクが台湾スタートアップの躍進に追い風

左から:Kiwibot の創業者兼 CEO Felipe Chavez 氏、AUTO Mobility Solutions(揚洋科技)の CEO Leo Cheng(廖士銘)氏

アメリカのフードデリバリロボットスタートアップである Kiwibot は3日、AI 自動運転やロボット向けのセキュリティチップを開発する台湾の AUTO Mobility Solutions(揚洋科技)を買収したと発表した。また、Kiwibot の創業者兼 CEO Felipe Chavez 氏はインタビューで、ロボット生産チェーンを中国から台湾に移管するため、台湾の有名電子機器メーカーと協業を始めると明らかにした。

フードデリバリロボットのセキュリティリスク

Kiwibot は2017年、主に大学キャンパスなどの閉鎖エリアで、Uber Eats や Lalamove の自動運転版ともいえる小型配達ロボットサービスを開始した。注文毎の配達料とロボットに掲出する広告が主な収入源だ。

Kiwibot のロボットは最初にカリフォルニア大学バークレー校でテストされ、キャンパス内での自動運転の安全性を確保するためにセンサー、レーダー、その他の自動運転技術の改良が続けられた。これまでに500台のロボットを製造し、25万回以上の配達が完了し、アメリカ国内の30の大学キャンパス、18の州、アメリカ、ドバイ、サウジアラビアなどの世界41都市で展開されている。今後は工場やオフィス用途への拡大も期待されている。

Image credit: Kiwibot

実は、Chavez 氏の1社目のスタートアップ Lulo もデリバリに関するもので、2社目のスタートアップでキャンパス内をサービスターゲットに選んだ理由について、次のように語っている。

さまざまなシナリオを試した結果、最終的にキャンパスが最も適していると判断した。アメリカのデリバリサービスは非常に高価で、キャンパス内でデリバリを頼むのは贅沢な消費だ。また、デリバリスタッフが不足しているため、学生はデリバリサービスを利用することはかなり困難だ。

Chavez 氏は、自動運転ロボットにはネットワーク機能があり、さまざまなセンサーやクラウドサービスを利用すること、また、持続可能性のトレンドがあることなどから、情報セキュリティが Kiwibot の最近の事業展開の重要な焦点となっていて、これが今回の買収の鍵でもあると述べた。

AUTO Mobility Solutions とは何者か

AUTO Mobility Solutions は、2022年に台湾の半導体製造メーカー ALi Technology(揚智科技)の研究開発部門からスピンアウトしてできたスタートアップだ。主に自動運転車、屋内障害物回避、ロボット、情報セキュリティに関連する技術とチップを開発し、100を超える技術特許を取得している。今回の買収により、Kiwibot の製品は、これらの技術特許のサポートを得られるだけでなく、納品プロセスにおける情報セキュリティリスクの管理を強化することができる。

AUTO Mobility Solutions の CEO Leo Cheng(廖士銘)氏は、今回の買収により、AUTO Mobility Solutions の技術に新たな応用シナリオが加わると述べた。Chavez 氏は、Kiwibot は実際に AUTO Mobility Solutions の顧客であり、両社の合併により高いシナジー効果がもたらされ、Kiwibot の AI ロボットのセキュリティ強度がさらに高まるだろうと述べた。

一方、 AUTO Mobility Solutions は台北(台湾)と深圳(中国)で事業展開しており、Kiwibot の製造生産移管コストの削減に寄与するとみられる。

Image credit: Kiwibot

世界的トレンドに沿った買収、台湾スタートアップの事業機会増加を示唆

Kiwibot は生産の重点を移すために、台湾のスタートアップを次々と買収し、大手電機メーカーとの提携を開始している。

この合併を促した Headline Asia のパートナー Joseph Huang(黄蓮安)氏は次のように語った。

Headline Asia は新たなスタートアップへの投資に加え、国際的なスタートアップ間の協力を深めたいと考えている。この買収は、技術、情報セキュリティ、生産の観点から双方にとって Win-Win だ。

Joseph Huang(黄蓮安)氏

現在の米中情勢を考慮すると、Kiwibot のサービスがアメリカ政府や銀行、その他のオフィスに参入しようとすると、通常よりも厳格な情報セキュリティリスク評価を受ける必要があり、現在のサプライチェーンのリスクを考慮すると現実的ではない。

Huang 氏は現在の米中関係から、サプライチェーンを中国からベトナム、インド、その他の場所に移転することを選ぶ企業が増えており、台湾はこのトレンドを利用して国際舞台に立つことができると付け加えた。

台湾スタートアップは非常に優れた技術と才能を持っている。しかし、多くの場合、業界課題や利用シナリオが何かを知らない。これは、ハンマーはあっても釘が見つからないようなものだ。私たちのベンチャーキャピタルが解決を支援しているのだ。(Huang 氏)

Huang 氏は、Kiwibot は2022年にアメリカの食品サービス管理トップ3の Sodexo と協業し、流通チャネルの課題を直接解決したと述べた。流通チャネルは、AUTO Mobility Solutions が直接アクセスできないリソースだった。また、今回の M&A を通じて、台湾スタートアップの技術がより活躍する場が増えるだろうと語った。

台湾では M&A は企業間で盛り上がっていないが、国際市場に目を向けると、台湾には多くのチャンスがある。(Huang 氏)

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】@meet_startup

【原文】

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