AI コーディングアシスタントが大型調達、アフリカでコマース合併——グローバルスタートアップ資金調達振り返り(8月26~30日)

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今週、気になったグローバルテックの調達についてまとめました。AI 関連が中心ですが、結構大きかったのは GitHub Copilot コンペティター、AI コーディングアシスタント企業の Codium と Magic の話題ですね。それぞれ1億5,000万ドルと3億2,000万ドルという資金調達で話題になってました。

もうひとつは新興市場でインドとアフリカです。インドのクイックコマース、Zepto は年間成長率150%という驚異的な数字を掲げて、10億ドルの資金を調達することに成功したと報じられてます。B2B e コマース分野では、アフリカの Wasoko と MaxAB の合併が業界再編の動きを示していました。

あと防衛テック分野への投資も気になるところです。Parry Labs が8,000万ドルの資金調達に成功し、2024年の防衛テック企業への投資総額は既に25億ドルに達しているそうです。この分野は地政学的な緊張の高まりを背景に成長が注視されている分野になりつつあります。紛争そのものは連日の報道で目を覆うばかりの様子ですので、複雑な気持ちになりますが。

ではそれぞれ詳細を見ていきます。

GitHub Copilot コンペティターが大型調達

Codium

テックスタートアップの最前線は何といっても AI の進化を中心に急速に拡大している。まずは AI コーディング支援の分野では、長文脈 AI モデルの開発が大きなブレークスルーをもたらしている。 Magic 社が開発した1億トークンの長文脈ウィンドウを持つ AI モデルは、コードの理解と生成能力を飛躍的に向上させた。このモデルは、プログラマーの思考プロセスをより深く理解し、より複雑で長大なコードベースを一度に処理することができる。

従来の AI コーディングアシスタントは、短い文脈での補完や単純なタスクの自動化に限られていたが、新世代のモデルは、プロジェクト全体の構造や目的を理解した上で、より適切で高品質なコードを生成できるようになっている。これは、単なる効率化ツールから、開発者の創造的なパートナーへと AI の役割が進化していることを示している。

さらに、 Codium のような企業は、 AI コーディング支援技術をオープンソース化することで、より多くの開発者がこの技術を利用できるようにしている。これにより、ソフトウェア開発の民主化が進み、コーディングスキルを持たない人々でも複雑なアプリケーションを開発できる可能性が広がっている。

アーティストを別のキャラクターに置き換える AI

次世代ビデオ生成の分野では、 Viggle AI が物理法則を理解した AI ビデオ生成技術を開発し、業界に新風を吹き込んでいる。この技術は、単に映像を生成するだけでなく、例えば、ミュージックビデオの制作において、アーティストの動きを別のキャラクターに置き換えるなど、創造的な表現の可能性を大きく広げている。また、この技術を使用することで、大規模な撮影や高価なセット制作を必要とせずに、高品質な映像コンテンツを制作することが可能になっている。

もうひとつ、空間コンピューティングの分野では、 Miris が空間コンテンツのリアルタイムストリーミング技術を開発した。この技術により、ユーザーは大容量のデータをダウンロードすることなく、高品質の空間コンテンツをリアルタイムで体験できるようになる。特に、5G ネットワークの普及と相まって、モバイルデバイスでのリッチな空間体験を可能にし、遠隔教育や仮想ツアー、バーチャルイベントなどの分野で利用が期待される。例えば、学生が世界中の博物館や歴史的遺跡を高品質な3D 空間でリアルタイムに探索したり、企業が世界中の従業員を集めて没入型の仮想会議を開催したりすることが可能になる。

AI が電話で顧客対応

Bland AI
Bland AI

AI による顧客サービスの自動化も話題だ。Bland AI が開発した AI 電話エージェント技術は、人間のような自然な対話を実現し、顧客サービスの質を大幅に向上させるという。この技術は、単純な質問応答だけでなく、複雑な問題解決や感情的なサポートまでをも提供できる。さらに、24時間365日の対応や多言語サポートも容易になり、グローバル企業の顧客サービス戦略に大きな変化をもたらす可能性がある。

Bland AI の技術は、特に多言語対応や文化的な文脈の理解において優れている。例えば、顧客の言語や文化的背景に応じて、適切な言い回しや対応を選択することができる。これにより、グローバル企業が各地域の顧客に対してよりパーソナライズされたサービスを提供することが可能になっている。

アフリカ B2B コマース企業が大型合併

新興市場でも大きめの動きがあった。まずはインドのコマースから。

クイックコマース企業 Zepto の目覚ましい成長が業界の注目を集めている。同社は、10分から15分という超短時間での商品配達を実現するクイックコマースを提供するスタートアップだ。インドの特殊な事情として、人口密度の高い都市構造や、既存の小売り店舗のデジタル化の遅れがクイックコマースの成長を加速させている。また、コロナ禍での外出制限も、オンラインでの即時配達サービスへの需要を高めた。 Zepto の年間成長率は150%に達すると予測されており、この急成長ぶりはインドの e コマース市場全体にも大きな影響を与えている。

アフリカの B2B コマース企業 Wasoko

一方、アフリカでは、 B2B コマース企業 Wasoko と MaxAB の合併が大きな注目を集めた。アフリカでは、物流インフラの未整備や、中小企業の金融アクセスの制限など、従来型の流通システムが抱える問題が大きい。Wasoko と MaxAB の合併は、これらの課題に対してテクノロジーを活用したソリューションを提供しようとする試みだ。両社は、デジタルプラットフォームを通じて、小売店と卸売業者をつなぎ、効率的な取引と在庫管理を可能にしている。さらに、金融サービスも提供することで、中小企業の成長を支援している。

記事ではこの合併の背景には、アフリカにおけるスマートフォンの普及とインターネットアクセスの改善があるとしている。また、若い起業家層の台頭も、デジタル技術を活用したビジネスモデルの受容を促進している。 Wasoko と MaxAB の合併は、アフリカ全土でのサービス展開を加速させ、大陸全体の経済効率化に貢献することを目指している。

米国では、移民向けフィンテックサービスの台頭が新たなトレンドとなっている。 Comun は、米国の移民、特にラテンアメリカからの移民向けにデジタルバンキングサービスを展開し、2,150万ドルの資金調達に成功した。このサービスは、米国の金融システムにおける移民の排除という長年の課題に取り組んでいる。

米国では、ラテンアメリカからの移民が増加し続けており、彼らの金融ニーズに対応するサービスの需要が高まっている。 Comun は、100種類以上のラテンアメリカの身分証明書を受け入れ、スペイン語のカスタマーサポートを提供するなど、移民特有のニーズに細やかに対応している。

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