建設業界向けDX SaaS運営のCONOC、2.3億円をプレシリーズA延長調達——建設業からピボット、ローンチ3年で500社が導入

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CONOC の皆さん。右から4番目が代表取締役の山口一氏
Image credit: CONOC

建設業界向け SaaS を提供する CONOC は10日、プレシリーズ A エクステンションラウンドで約2億3,000万円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ウィルグループ(東証:6089)、GA インベストメント、ブルーテック。後述するが、同社は事業をピボットする前の事業でプレシリーズ A ラウンドで資金調達している。

今回のラウンドを受けて、同社の累積調達額は約4億5,000万円に達した。資金は、主にサービスの開発、採用や組織の強化、マーケティング活動に充てられる予定だ。

CONOCは、2021年10月に「CONOC業務管理クラウド」をリリースし、3年で導入企業数が500社を突破した。この成長の背景には、建設業界に特有の課題に焦点を当てたサービス設計がある。現在、リフォーム会社を中心に中小の建設事業者が同社の主な顧客層となっている。特に、現場管理と業務管理を一元的に行える点が評価されており、今後もさらなる顧客拡大が見込まれている。

現場とオフィスの業務直結で差別化

建設業界では、現場での作業が終了した後も膨大な管理業務が残り、これが長時間労働の原因となっている。特に、現場監督は現場作業の終了後に、報告書、写真管理、工程表の更新などを行うため、残業が常態化している。このような非効率な業務フローが、人材不足や若手離職率の高さにつながっている。CONOC は、業務管理、現場管理、クラウドストレージの3つの機能を提供する。

現場での業務が終わった後、オフィスに戻ってからの書類作業が長引くケースが多く、これが業界の長時間労働の一因となっています。我々のツールは、現場とオフィスの業務を一体化させ、効率的に処理することで、こうした負担を軽減することを目指しています。(山口氏)

建設業界向けの SaaS は既に複数存在しているが、CONOC の強みは業務管理と現場管理を包括的に提供している点にある。多くの現場管理ツールは、現場作業に特化しているものの、バックオフィス業務の効率化にまで踏み込んでいない。一方、CONOC は現場とオフィスをシームレスにつなぐプラットフォームを構築しており、建設業務全体の流れを統合的に管理できる。

Image credit: CONOC

例えば、現場監督が撮影した写真や作業日報は、リアルタイムでクラウドにアップロードされ、オフィスのスタッフがすぐに確認できる。このような即時性は、これまで手作業で行われていた業務プロセスを大幅に効率化し、無駄な時間を削減することに寄与している。また、従来の業務管理システムが持つ複雑さを解消し、誰でも使えるシンプルなユーザインターフェースを採用している。

現場での業務とオフィスの業務を分断せず、スムーズにつなぐことが我々の最大の強みです。特に中小企業の建設業者にとって、煩雑な手続きが省けることで、日々の業務がより簡潔になります。」(山口氏)

ピボットと今後の展望

CONOC は元々、2010年に設立された会社で、当初はオフィスデザイン事業を手掛けていた(以前の社名は TRUST)。しかし、建設業に従事していた経験から、山口氏が業界の非効率な業務プロセスに対する疑問を抱き、2020年に SaaS 事業への転換を決意した。若手社員の離職率の高さや、現場作業後の過剰な残業に課題を感じ、業務全体を効率化するツールが必要だと痛感したという。

CONOC は、今回の資金調達を通じて、さらなる成長を目指す。特に、パートナーセールスの強化を進める予定で、具体的には、建設業を多く顧客に持つ OA 機器販売代理店などと協力し、サービスの普及を加速させる方針だ。また、人材採用にも積極的で、セールスやバックオフィスなどのポジションを募集し、組織体制を強化する計画だ。

建設業界は近年、働き方改革関連法の影響もあり、DX 化の必要性が急速に高まっている。特に、時間外労働の規制強化により、業務効率化が求められている中、CONOC は建設業界に最適化されたソリューションを提供している。同社の調査によると、建設業に従事する4人に1人が業務管理ツールの導入を希望しているものの、実際に導入している企業はまだ半数以下にとどまっている。

CONOC は、シンプルで使いやすいデザインのツールを提供することで、建設業界の現場作業員や事務スタッフが容易に導入できるように工夫した。この使いやすさは、現場での即時性を重視する職人や現場監督にとっても大きなメリットとなっている。今後は、属人化しがちな知識や技術の共有にも貢献しており、業界全体のナレッジマネジメントを強化する役割も果たしたいとしている。

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