「日本・台湾イノベーションサミット2024」東京で開幕——産官学でも連携、スタートアップ越境支援強化へ

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Image credit: Masaru Ikeda

17日、東京都内で「日本・台湾イノベーションサミット2024」が開幕した。このサミットは、台湾の国家スタートアップブランド「Startup Island TAIWAN」が主催し、東京都庁や JETRO(日本貿易振興機構)の支援を受けて実施された。今回で3回目を迎える本イベントは、日本と台湾のイノベーションおよび企業間協力を促進することを目的としている。

開会式では、台湾国家発展委員会(NDC)主任委員(日本の大臣に相当)の Chin-ching Liu(劉鏡清)氏、東京都スタートアップ・国際金融都市戦略室室長の吉村恵一氏、JETRO(日本貿易振興機構)専務理事の高島大浩氏らが登壇し、日台間の協力関係の重要性や今後の展望について語った。

台湾国家発展委員会(NDC)主任委員の Chin-ching Liu(劉鏡清)氏
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Liu 氏は冒頭、東京都庁の協力に感謝の意を表した。過去2年間で1,000人以上を動員し、70社以上の企業を日本に招聘してきたことを強調した。今回のサミットには500人以上が参加し、46社の台湾のスタートアップが来日したことを報告した。5月に開催された「SusHi Tech Tokyo 2024」にも積極的に参加し、大きな成果を得たことを述べた。

30年以上前から東京を訪れていますが、近年の変化、特に東京の人々の語学力向上には目覚ましいものがあります。東京人の語学能力は台湾を超えたと認識しています。東京都庁の長年の努力により、東京が新しい姿、新しい境地に到達しました。

Liu 氏は台湾の新政権の政策についても言及し、イノベーションと起業のための「Forest Ecosystem(雨林生態系)」の構築を目指していることを説明。毎年50億米ドルの投資を目標としていると述べた。この目標達成に向けて、4つの新しい投資基金を設立したことを紹介した。

Liu 氏(左)から贈答品を受け取る、東京都の吉村氏(右)
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具体的には、AI 向けの100億ニュー台湾ドルファンド、文化創造産業向けの100億ニュー台湾ドルファンド、医療事業発展向けの100億ニュー台湾ドルファンド、グリーン成長向けの100億ニュー台湾ドルファンドである。これらに既存の300億ニュー台湾ドルを加え、合計700億ニュー台湾ドルの投資を計画していることを強調した(100億ニュー台湾ドルは、日本円で440億円相当)。

さらに、「Bridge Plan(橋梁計画)」と呼ばれる海外展開支援策について説明。日本を一番目の連携先とし、今後アメリカ西海岸、東ヨーロッパ、東南アジアへと展開していく予定だと述べた。最後に、京都大学との提携についても触れ、大学発のスタートアップ支援にも力を入れていく方針を示した。

JETRO(日本貿易振興機構)専務理事の高島大浩氏
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JETRO の高島氏は、10年近くにわたり台湾企業の日本誘致活動に従事してきた経験を踏まえ、近年のイノベーション分野での日台交流の重要性を強調した。台湾のスタートアップシーンへの世界的な関心の高まりに言及し、今回のサミットには AI、DX、ESG をテーマに50社近い台湾のスタートアップが参加していることを紹介した。

JETRO の支援活動について、海外企業、特にイノベーティブなスタートアップの日本進出支援を行っていることを説明した。これまでに約100社の台湾企業の誘致または日本での事業拡大を支援し、現在も150社近くの支援案件をフォローアップしているという。2022年末時点で、台湾の対日投資残高は1兆2000億円を超え、国・地域別でトップ10入りしていることも報告された。

さらに昨年9月、TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出に関連して、「半導体分野等外国企業支援デスク」を設置し、台湾企業専用の支援窓口を開設したことを報告。半導体以外の分野でも、革新的な技術やサービスを持つ台湾のスタートアップ企業の日本進出をサポートしていることを強調した。

国家発展委員会(NDC)常務副主任委員の Fang-Guan Jan(詹方冠)氏
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国家発展委員会(NDC)常務副主任委員(日本の副大臣に相当)の Fang-Guan Jan(詹方冠)氏は、台湾の産業イノベーションの生態系発展と日本との協力機会について説明した。主に台湾と日本の経済・貿易関係、台湾のスタートアップエコシステムの発展、台湾の産業政策と重点分野について言及した。

経済・貿易関係については、台湾が日本の第4位の貿易パートナー、日本が台湾の第3位の貿易パートナーであることを挙げ、2023年の双方の貿易額が10.8兆円に達したことを報告した。また、2023年の双方向投資額は約1,200億円であったが、2024年1〜8月ですでに7,600億円に達していることを強調。半導体以外にも、バイオテクノロジー・医療分野での相互投資が活発であることを説明した。

台湾のスタートアップエコシステムの発展については、2015年に約3,000社だったスタートアップが現在7000社以上に成長したことを報告。世界的なスタートアップ投資の減少傾向の中、台湾は成長を維持しており、2023年の投資額は28億米ドルで、2015年比3倍に成長したことを強調した。さらに、2028年までに年間50億米ドルの資金調達を目標としていることを明らかにした。

台湾の産業政策と重点分野については、「六大核心戦略産業(前総統 Ing-wen Tsai=蔡英文氏による重点産業政策。IoT・AI、情報セキュリティー、バイオ・医療、防衛、グリーンエネルギー、戦略的備蓄の6業種を指す。)」の推進や「五大信頼産業(半導体、AI、軍需、安全保障、次世代通信)」の重点化について説明した。特に半導体と AI を双核として、他産業のデジタル化と効率化を促進する方針を示した。

また、スタートアップ支援策として、「Bridge Plan(橋梁計画)」を推進していることを説明。国際的な資金、人材、市場へのアクセスを支援し、グローバルな共創エコシステムの形成を目指すとした。具体的には、各成長段階に応じた資金支援(エンジェル投資、VC 連携など)、起業家ビザや就業ゴールドカードの発行(すでに1万件以上発行)、グローバル展開支援(国際イベント参加、海外アクセラレーターとの連携)、海外拠点の設立(東京、シリコンバレー、東南アジアなど)を実施していることを紹介した。

最後に、日台協力の今後の方向性として、投資・スタートアップ支援での連携(大学との協力拡大など)、人材交流の促進(台湾の「円夢基金(政府による若年層の海外進出を促す基金)」などの活用)、共同での第三国市場開拓(東南アジアなど)を提案した。また、AI、サイバーセキュリティ、ドローン防衛、バイオテクノロジー・医療などの分野で日本企業との協力機会を探ることへの期待を表明した。

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