台湾の経済成長担当大臣、日台のイノベーション協力推進を強調

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台湾国家発展委員会(NDC)主任委員 Chin-ching Liu(劉鏡清)氏
Image credit: Masaru Ikeda

日本・台湾イノベーションサミット2024」参加のため来日した台湾国家発展委員会(NDC)主任委員(日本における大臣に相当)の Chin-ching Liu(劉鏡清)氏は17日、日本記者クラブで会見を開いた。Liu 氏は台湾の成長戦略を担う中枢的役割を果たしており、会見では経済安全保障や対日半導体戦略、グローバルサプライチェーンにおける台湾の役割などについて語った。

Liu 氏は冒頭、今回の訪日には二つの重要な目的があると述べた。

一つは日本と台湾の友好をさらに推進すること。もう一つは、イノベーションとスタートアップの協力を促進し、強力なエコシステムを築くことです。(今朝開催されたサミットのオープニングイベントは)非常に盛況でした。オンラインとオフラインを含め約500名の方々が参加し、台湾からは46の優れたスタートアップチームが集まりました。

日台協力の具体策として、Liu 氏は、台湾スタートアップの国際展開を加速させるために、「Bridge Plan(橋梁計画)」を立ち上げたことを明らかにした。また、18日には Startup Island TAIWAN の東京オフィスが、台湾初の海外イノベーション基地として正式オープンし、台湾企業の日本市場開拓支援と、日本企業の台湾での活動サポートを本格化させる方針だ。

Starup Island TAIWAN の東京オフィスは大門駅前に開設される。ファミリーマートがあるビルの9Fだ。

半導体分野での協力については、日本は素材や設備技術に強く、台湾は製造分野においてリードしており、両国は相互補完的な関係にあると説明。台湾が世界の AI サーバの製造シェアの90%を占めていることに触れ、今後もこの分野で日本との協力を強化する意向を示した。

台湾政府の取り組みとして、Liu 氏はスタートアップエコシステムの構築を進める上で、50億ニュー台湾ドル(約220億円)規模の資金を市場に投入していると述べ、大学や研究機関との連携も進めていることを明らかにした。先週には、京都大学と NDC の間で正式な MoU を締結し、技術連携が強化されたことを具体例に挙げた。

Image credit: Masaru Ikeda

質疑応答では、記者から、台湾の電力政策や日本企業の対台湾投資、中国市場への依存度、安全保障リスクなどについて質問が寄せられた。

AI データセンターなどの設置が増える中で、懸念される電力不足を補うための政策については、2025年5月までは原発の再稼働を禁止されているものの、電力の供給に関しては、さまざまなバックアップの電源を用意し、外資系企業向けにも支援体制を整えているため、現時点で電力不足の問題はないとの認識を示した。

また、日本企業の対台湾投資のメリットについては、台湾企業が域外に多額の資産を持っており、それが域内に投資されることでスタートアップエコシステムの発展が期待されることや、優秀な人材の存在を強調した。また、NVIDIA が台湾に2つ目の R&D センターを設置し技術者を1,000人以上採用する計画にも触れた。

中国市場への依存度に関する質問について、Liu 氏は、これまで中国市場への依存度は高かったものの、現在では多くの台湾企業が東南アジアや他の地域に進出していて、中国に対する投資は減少傾向にあり、台湾国内に戻った資金も2.3兆ニュー台湾ドル(約10.1兆円)に上っていて、世界展開を奨励する政府の方針を示した。


以下は、台湾国家発展委員会から17日に発出されたプレスリリース(原文ママ)。

台湾・国家発展委員会 プレスリリース

日本と台湾が協力してスタートアップ支援を強化する中、 台湾の中枢機関 国家発展委員会が初めて東京都と共同でサミットを開催

発表日:令和6年9月17日
発表部署:台湾 国家発展委員会産業発展部

日本の内閣官房にあたる台湾の国家発展委員会が進めるグローバルなスタートアップ支援 「ブリッジ計画」の第一弾として、同委員会の劉鏡清(りゅう・きょうせい)委員長(大臣に相当) は9月17日(火)50社近くの台湾スタートアップを率いて東京で「日本・台湾イノベーションサミット」 の開始を宣言致しました。

9月17日、18日の2日間にわたって行われるイベントには、参加者数は1,000人を超えると見込まれ、 台日間で最大のイノベーション・スタートアップ交流プラットフォームとなります。 今回のサミットは、台湾と東京都が共同で開催する初めての大規模なフォーラムであり、 東京都知事の小池百合子氏も体調が優れない中、ビデオメッセージを通じてこのイベントへの重要性を強調していただきました。 今後、台日双方の信頼関係に基づき、さらなる協力を通じてイノベーションの推進を強化していく予定です。

さらに、本日(17日) 午後、 劉主任委員は日本記者クラブ(JNPC)の招待を受けて記者会見を行い、100人近くの日本メディアのジャーナリストにご参加いただきました。劉主任委員はスピーチで、 国家発展委員会が推進する「ブリッジ(Bridge)計画」の目的は、 台湾のスタートアップ産業が世界と繋がり、 グローバル共創エコシステムを構築することだと強調。 台湾は、AI、 クリエイティブ産業、 バイオメディカル、グリーンテクノロジーなどの新興産業を支援するファンドを拡大するとともに、京都大学とのMoU を通じて、 台日双方が相互に投資し、 ディープテック(Deep Tech)の分野で優れたチームを育成することに取り組んでいます。

また、東京に実体拠点(ハブ)を設置し、 台湾と日本の企業、スタートアップ、投資機関間の継続的な双方向の交流を図り、これまでの単点的な連携から包括的な交流へと拡大し、 より多くの実質的なビジネスチャンスを創出する予定です。 さらに、劉主任委員は、東京都の支援に感謝し、今回のイベントを東京を代表するイノベーション拠点「東京イノベーションベース(Tokyo Innovation Base、TiB)」 で盛大に開催できたことに触れました。 今後、 台日間の双方向協力を強化し、「Together, Go Big!」のスローガンの下、共に大きな発展を目指していきます。

国家発展委員会は、「日本・台湾イノベーションサミット」関連の一連のイベントが、50社近くのスタートアップ企業を日本の投資家やビジネス界とマッチングさせることを目的とし、 AI、 バイオメディカル、サイバーセキュリティ、デジタルサービス、フィンテック、 防衛・航空宇宙など多岐にわたる分野をカバーするとしています。 今年のサミットはこれまで以上に規模が大きく、半導体サプライチェーンなど、日本が特に重視する産業イノベーションにも焦点を当て、今後の協力基盤をさらに強固なものにするための橋渡し役を果たします。

サミットには、日本側からの出席者も非常に多く、東京都、福岡市、日本貿易振興機構 (JETRO)、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行(SMBC)、 大和企業投資、Headline、三井物産などの金融機関、 ベンチャーキャピタル、商社などが参加します。 この訪問を通じて、台日双方の協力ネットワークがさらに強化され、繁栄する国際的なエコシステムの構築が期待されます。

2024 日本・台湾イノベーションサミット

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