Alec Lynch氏はデザインクラウドソーシングサービスを提供しているDesignCrowdの設立者でCEOだ。DesignCrowdはオーストラリアに拠点を置き、インド、シンガポール、フィリピンでサービスを展開している。Lynch氏のフォローは@aleclynchまで。
アジアはデザインクラウドソーシングという分野では他の地域をリードしている。アジアのクラウドソーシングに関する5つの事実を紹介しよう。
アジアで勢いを増している業界と言えば、多くの人は中国の製造業、インドのアウトソーシング、フィリピンのコールセンターのことを思い浮かべるだろう。オンラインビジネスを思い浮かべる人はそう多くはない。実際のところ、オンラインビジネスモデルはアジアで急成長している。
近年、アジアでのオンライン業界やウェブサイトが欧米を凌ぐほどの勢いを見せ始めた。例えばオンラインゲームだ。中国のTencentはアメリカの競合Zyngaを越えつつある(TencentはZyngaよりずいぶん早い1998年に創設されたが、Zyngaの4倍もの収益を上げている)。
デザインクラウドソーシングがアジアでブームとなっている。とりわけ、ロゴ、グラフィック、ウェブデザインなどの分野に特化したデザインクラウドソーシングが成長している。私はDesignCrowd.com (オーストラリアを拠点とし、最近アジアでの事業を開始したグローバルデザインクラウドソーシングサイト)を運営している。だからクラウドソーシングという2つの面を持つマーケットの両方(企業側とデザイナー側)で何が起きているか理解できるのだ。
私たちは中国やインド、フィリピン、インドネシア、シンガポール、パキスタンにおける、またそれらの国々から発信されるクラウドソーシング事業の急激な高まりを感じている。アジアがデザインクラウドソーシングにおいて世界をリードしているのはもっともなことだ。この新しい業界の勢いを目の当たりにしていても、アジアのクラウドソーシングについてまだ知られていないであろう5つの事実を以下に紹介しよう。
1) デザインクラウドソーシングはアジアで始まった
クラウドソーシングという言葉が作られたのは2006年だが、クラウドソーシングという活動は何百年とは言わなくても数十年も前からあった。クラウドソーシングについての歴史はさまざまに言われており、その起原についてもさまざまな説がある。
私が見つけたもっとも古いデザインクラウドソーシングの例は、日本で行われたものだ。1936年にトヨタが同社のロゴをクラウドソーシングし、2万7000点もの応募作品が寄せられた。応募数に関して言えば、このコンテストは今なお世界記録となっている。
トヨタはその後もクラウドソーシングを強く支持しており、Dream Car Design Contestを毎年主催している。2013年には7回目のコンテストが開かれる予定だ。
2) インドはクラウドソーシングが大好きだ
上位クラウドソーシングサイトの利用状況を分析すると、目立って大きな収入を得ているのがインドのユーザであることが多いのがわかる。例えば、Elance.comでもっとも多額の金額を得た上位25人のうち、半数以上がインドのユーザである(そしてそのうちの多くがウェブデサインを専門にしている)。
私たちのウェブサイトには10万人以上のデザイナーが登録されている。デザイナー数ではアメリカが一番多いが、上位50人ではインドが世界一だ(アメリカを含む)。実際、インドはクラウドソーシングが大好きなようで、2010年にはインド政府がルピーの記号をクラウドソーシングしたくらいだ。
3) 中国のデザインクラウドソーシング産業は盛況を見せている
中国には世界でも最大級のオンラインアウトソーシングやクラウドソーシングサイトがいくつかある。例えばZhubajie.comは800万人以上のメンバーを誇る。もしこれが正確な数なら、Zhubajieの「従業員」はマクドナルド(190万人)と Walmart(210万)を足したものよりも多いことになる。
興味深いことに、Zhubajieではデザイン関連のプロジェクト(ロゴデザインとウェブデザインの2つのカテゴリーが上位2位を占めている)の比率が大半とは言わないまでもかなり高いように見えることだ。
4) アジアは世界をリードしている
デザインクラウドソーシングの人気が高いのはインドや中国だけではない。インドネシア、マレーシア、フィリピン、そしてパキスタンでさえ極めて人気が高い。つまり人気の高さはこの地域全体によく当てはまるということだ。
DesignCrowd(や他のクラウドソーシングサイト)のようなサイトヘのトラフィックを分析すれば、興味深いトレンドがあることがわかる。アジアのデザインクラウドソーシングウェブサイトは、欧米のものよりもトラフィックという点では人気があるようだ。
例えば私たちのビジネスに関して言えば、DesignCrowdは現在、トラフィックという点では世界の(またアメリカの)上位サイト1万位以内に迫っている。しかしアジアの場合、マレーシア、インドネシア、フィリピンでは上位7500サイトに、インドでは上位5000サイトに、パキスタンでは上位1000サイトにそれぞれすでにランクインしている。
このトレンドはDesignCrowdに限らず、他のクラウドソーシングサイトにも同様に見られるもので、アジアにおけるクラウドソーシングサービス(特に仕事を探しているインターネットユーザ、この場合はデザイナーの間で)の相対的人気をさらに高めるものだ。
注目すべきなのは、これらの国々は単に大勢のデザイナーがいるというだけでなく、彼らが質の高いデザイナーであるということだ。DesignCrowdには世界中から有能なデザイナーたちが集まってきている。
アジアでは、DesignCrowdの特に才能ある上位40人のデザイナーのうち、60%がインド、フィリピン、インドネシア、パキスタン、またはマレーシア出身である(また、これまでDesignCrowdで2番目に大きな成功を収めているデザイナーはフィリピンを拠点に活動している)。
5) オーストラリアがデザインクラウドソーシングのハブ拠点に
オーストラリア(アジア太平洋地域の一部)はデザインクラウドソーシングにおいて、世界的なハブ拠点かつリーダーとなっている。
実際、オーストラリアでは今デザインクラウドソーシングはホットな話題だ。世界では少なくとも20のデザインクラウドソーシングサイトが存在するが、オーストラリアはその中でもリーダーとなっており、2大デザインクラウドソーシングサイト(DesignCrowdも含め)の登場により、大健闘を見せている。
オーストラリアはまた、スタートアップImagebrief(写真クラウドソーシング専門サイト運営会社)やEnvatoのような有名デザインマーケットプレイスの本拠地ともなっている。EnvatoのWordPressデザインテーママーケットプレイスであるthemeforest(6つのマーケットプレイスのうちのひとつ)は、istockphotoの2倍のトラフィックを誇り、現在インドで上位100サイトにランクインしている。
確かに言えることは、デザインクラウドソーシングにおけるオーストラリアの成功の理由のひとつは、アジアと距離が近いこと(そして相性の良さ)だ。アジアのユーザがこれらマーケットプレイスでの成長を後押ししてくれている。
以上をまとめると、デザインクラウドソーシングはアジアで成長しており、アジアはデザインクラウドソーシングにおけるリーダーであると言っても間違いないだろう。このことは、昨年暮れに私たちがシンガポール、フィリピン、インドでDesignCrowdの運営を開始し、アジア地域での投資を継続する理由のひとつである。
またそれゆえに、私たちは今、Crowdsourcing Week(シンガポールで今年7月開催予定)のようなアジアに焦点を置いたクラウドソーシングイベントにも注目している。アジアでのオンラインビジネスはブームとなっており、クラウドソーシングのビジネスモデルが成長を続け、アジアを技術革新と成長の世界的リーダーの地位へと押し進めているのだ。
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