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Yuki Sato

Yuki Sato

ベルリンを拠点に活動中のテックライター&翻訳者。欧州のスタートアップの状況を日々探索中。Twitter: @yuki_sat , Blog: serialforeigner.com

執筆記事

「Googleは革新的じゃない」——Googleの著名エンジニアが東南アジアの配車サービスGrabに移籍した理由

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Googleで13年間エンジニアを務めたスティーブ・イェジ氏がGrabに移籍したというニュースが注目を集めている。イェジ氏は、「Stevey’s Blog Rants」というブログを運営していたブロガーとしても知られており、プログミングコミュニティの界隈ではよく知られる人物だ。Googleのエンジニアが利用する社内ツールGrokの開発も手がけ、Googleの前はアマゾンのソフトウェア開…

Photo by Mike Enerio on Unsplash

Googleで13年間エンジニアを務めたスティーブ・イェジ氏がGrabに移籍したというニュースが注目を集めている。イェジ氏は、「Stevey’s Blog Rants」というブログを運営していたブロガーとしても知られており、プログミングコミュニティの界隈ではよく知られる人物だ。Googleのエンジニアが利用する社内ツールGrokの開発も手がけ、Googleの前はアマゾンのソフトウェア開発チームを率いていた。

そんなイェジ氏は、先日「東南アジアのUber」とも称されるGrabのエンジニアリング、データインサイトのヘッドに就任した。そして、その理由をMedium上の長文記事で書き綴っている。

Googleを去った理由に「イノベーション精神の欠落」を挙げており、反対にGrabに大きなポテンシャルを感じ、「Web黎明期以来の大きな戦いを見ている」とコメントしている。彼がGoogleに失望した理由、そしてGrabに大きな希望を見た理由を紹介したい。

保守的、傲慢さ、ライバル中心主義・・・Googleを去る理由

まず、Googleを去った理由について。「私がGoogleを去った主な理由は、Googleはもはやイノベーションを起こしていないからだ」とイェジ氏はMediumの投稿で書いているが、主に次の4点が理由だという。

  1. 保守的である:守りに入っており、リスクをとることを恐れている。
  2. 政治に左右される:大企業であれば仕方ないけれど、実行する際のスピードが遅くなる。
  3. 傲慢である:社員一人ひとりは謙虚で非常に賢い人ばかりだけれども、会社としてここまで成功してしてしまった結果、自己満足に陥りがちである。
  4. 顧客中心ではなくライバル中心になっている:最大の理由は顧客にフォーカスしておらず、むしろ競合にフォーカスしている点だと彼はいう。「ユーザーにフォーカスしよう、そうすれば他のすべてのことがついてくる」という新しい社内スローガンが掲げられたものの、社内のインセンティブが顧客中心になるような仕組みになっておらず、機能やプロダクトのローンチの成功にインセンティブを置いており、その結果競合をコピーするという安易な方法に走る結果になっていると説明している。

Googleは、競合の動向ばかりを気にかけるようになった結果、競合のコピーのようなものばかりを作るようになった(Google+ はフェイスブック、Google CloudはAWS、Google HomeはAmazon Ecoを意識したもの)と批判する。もちろん、BigQueryやTensorFlow、Waymoなどコピーではない例外もあるけれど、全体的にコピー製品ばかりが増えてインスピレーションが得られなくなったという。

Grabに参画する理由は「現場主義、顧客中心主義、激しい競争」

一方で、Grabにジョインすることを決めた理由はどこにあるのか?

その感覚は簡単には言えないけれどと前置きしつつ「ゲリラ軍に囲まれて、文字通り革命戦争に参加しているような気分になるのです。生きるか死ぬかなのです」と彼は書いている。「こんな大規模なランドラッシュを目にするのは、Web黎明期以来であり、それよりもさらに大きなものかもしれない」と、その競争の規模の激しさと大きさに感銘を受けたイェジ氏の興奮が伝わってくる。

実際、東南アジアにおいては、ここ2年で自動車やバイクの配車アプリの流通総額、予約数は急速に成長している。毎日の配車の予約数は2015年の130万から2017年に600万に、配車アプリを運営する企業に登録してるドライバーの数も60万から250万と大きく成長している。

関連: 飛躍する東南アジアのインターネット経済、配車アプリ予約は2年で4倍、1日600万件に

また、競合の動向ばかりを意識するようになったと批判しているグーグルとは逆に、Grabのマントラは「Go to the ground(現場に行け)」であると、その現場・顧客中心主義を賞賛する。カスタマーのニーズと来たるべきマーケットの変化を読んで、すぐにピボットできるようにするためにユーザーとできるだけ頻繁に関わることを重視する同社の姿勢に深く共感しているようだ。また、こうした顧客中心主義を徹底しているチームだからこそ、「この領域の激しい戦いに、Grabは勝つことができる」と確信している。

Grab側にとっても、大きな資金も投入され、ネットのインフラも整ってサービスを拡大する基盤が整いつつあるものの、残る課題の一つはエンジニア、特にシニアレベルのエンジニアの不足であっただけに、イェジ氏の移籍は嬉しいものだろう。

また、今回のような米テック大手のシニア人材の東南アジアスタートアップへの移籍は、まさに世界のスタートアップシーンの中心が東南アジアにシフトしつつある状況を象徴しているようだ。

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米アマゾンの第2本社の選考に落ちた都市の敗因は? 米各地のローカル誌や市長が分析

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米アマゾンの第2本社がどの都市に置かれるか、注目を集めている。アマゾンは昨年秋に第2本社の開設計画を発表。これまで238の都市が候補に名乗りでて、アマゾンに対して様々な提案がなされた。今月18日、同社は最終候補地20都市を発表。オースティン、ボストン、シカゴ、デンバーまたカナダのトロントなどが候補地に残っている。 最終候補に残った20都市はとりあえず安堵したことだろう。一方、候補に残らなかったその…

アマゾン本社があるシアトル

米アマゾンの第2本社がどの都市に置かれるか、注目を集めている。アマゾンは昨年秋に第2本社の開設計画を発表。これまで238の都市が候補に名乗りでて、アマゾンに対して様々な提案がなされた。今月18日、同社は最終候補地20都市を発表。オースティン、ボストン、シカゴ、デンバーまたカナダのトロントなどが候補地に残っている。

最終候補に残った20都市はとりあえず安堵したことだろう。一方、候補に残らなかったその他の多くの都市は落胆するとともに、多くの地元紙や市長がその敗因について分析している。以下に一部紹介したい。

メリーランド州ボルチモア:犯罪率の高さ、教育環境の問題が原因か?

現地の新聞は、犯罪率の高さや最近話題になった同市のネガティブなニュースに言及。ボルチモアの殺人事件の多さや、予算不足のために学校の暖房がつかずに生徒が教室で凍えていた、メリーランド大学病院で患者が入院用の服を着た状態で通りに放り出されたといった、最近話題になった「炎上ニュース」が原因だったのではないかと分析している。

ミシガン州デトロイト:テック人材不足

現地のデトロイトフリープレスは、地元の公共交通機関網が充実していない点にも言及しつつ、致命的であったのはテック人材が不足していることだろうと挙げている。

ミネソタ州ミネアポリス:優遇措置で候補都市に追いつかず

ミネアポリスも最終候補に残らなかった都市のひとつだが、その理由は財政面での優遇措置を十分に提示できなかったからであるといわれる。「ミネソタが提示した優遇措置は300万から500万ドル程度のもので、今回ファイナルに残った20都市のうち少なくとも9都市が提案した10億ドル相当の優遇に比べればはるかに少ないものだ」と地元紙は書いている

オクラホマ州オクラホマシティ:公共サービスへの投資が足りないのでは?

市長は、教育など軸となる公共サービスへの投資が州として少なかったことが敗因の一つと分析。同じくオクラホマ州のタルサも最終候補に選ばれなかったことに言及し、タルサ市長とともに州レベルでの今後の改善に向けて尽力したいとツイートした。

ミズーリ州セントルイス:テック人材不足が敗因か

セントルイス市もアマゾンに熱いラブコールを送っていた街のひとつだ。市内とアマゾンのキャンパスまでロープウェイでつなぐ、同市の国際空港にはアマゾンウェルカムセンターを作るといった提案を熱くピッチした。熱意は残念ながらアマゾンに届かなかった。「テック人材が乏しいため」というアナリストの分析もある

改めて振り返ると、アマゾンが第2本社に求めている点は主に以下の4つだ

  • 100万人以上の都市圏であること
  • ビジネスフレンドリーな安定した環境があること
  • テック人材を惹きつけ、かつ保持できるポテンシャルをもつ都市または郊外であること
  • 立地や不動産の選択肢を検討する際に、大きくかつ創造的に考えることができるコミュニティであること

こうしたアマゾンの求める条件をどこよりも満たすために、各都市が税制優遇措置などの提案に必死になっている。第2本社の設立に50億の支出、そして5万名の雇用が見込まれていることがその理由だ。地元の雇用創出、経済活性化の方法を模索している都市にとっては、これほど大きな起爆剤はないだろう。

最終候補地に残っている20の都市は以下の通り:

アトランタ、オースティン、ボストン、シカゴ、コロンバス、ダラス、デンバー、インディアナポリス、ロサンジェルス、マイアミ、モンゴメリー郡、ナッシュビル、ニューアーク、ニューヨーク、バージニア州北部、フィラデルフィア、ピッツバーグ、ローリー、トロント、ワシントン

参照:Why some cities didn’t make Amazon’s HQ2 finals(recode)

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Facebook、友人家族の投稿を増やし、ニュースや企業コンテンツを減らす方向性を発表

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Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、ニュースフィードに表示する内容について、大きな変更を行う予定であることを発表した。メディアやブランドの投稿を減らして、その代わりにFacebook上でつながっている友人や家族の投稿を増やす予定であるという。 ザッカーバーグCEOは、本日Facebook上の投稿で次のように述べている。 私たちは、人々がつながるため、自分にとって重要な人々をより近くに…

flicker: Maurizio Pesce

Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、ニュースフィードに表示する内容について、大きな変更を行う予定であることを発表した。メディアやブランドの投稿を減らして、その代わりにFacebook上でつながっている友人や家族の投稿を増やす予定であるという。

ザッカーバーグCEOは、本日Facebook上の投稿で次のように述べている。

私たちは、人々がつながるため、自分にとって重要な人々をより近くに感じられるようにするためにFacebookを作りました。だからこそ、私たちは友人と家族をこのエクスペリエンスの中心においてきました。

ですが、最近はコミュニティからパブリックなコンテンツーービジネス、ブランド、メディアからの投稿ーーが増えて、お互いにつながるきっかけとなるようなパーソナルな瞬間が少なくなってるというフィードバックがありました。

(中略)

私たちは、Facebookをつくる方法において重要な変更を加えることにしました。プロダクトチームに与えた目標を関連コンテンツを見つけやすくすることよりも、意義深いソーシャルなインタラクションが増えることにフォーカスするように変えました。

このニュースが業界、そしてFacebook自身に与えるインパクトは大きいだろう。

Facebookにとっては原点回帰ともいえるが、パブリッシャーやブランドにとっては、こうした方向にFacebookが進むことで、コンテンツや広告を同SNSに掲載するメリットが低くなる。パブリッシャーが得られるページビュー数は、GoogleとFacebookの二強テック大手間で競争が繰り広げられており、最近ではGoogleの勢いが再度増して、Facebookとの差を広げている傾向にあったが、今後さらにこの傾向が進むのではないかと、パブリッシャーと投資家の懸念はふくらむだろう。

また、Facebookの友人間での情報共有の形は、オルタナ右翼のような一部の偏った思想グループに燃料を投下した、コミュニティの分断を招いたと批判する声もある。Facebookに限ることではないものの、似た価値観・思想でつながる友人間で情報が共有・拡散されることによって、自分の価値観によって「見える世界」が大きく変わる。今回の方針は、この傾向をさらに加速するのではないだろうか。

Facebookは、SNS機能とニュース・広告プラットフォーム機能のバランスをとるべく模索が続いている。たとえば、現在は「Today In」という、ローカルなニュースやイベント情報がフィードで得られる新しいセクションを米国の一部の都市で実験中だ。

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メッセージングアプリとチャットボットで顧客体験はどう変わるか? 試される企業の活用方法

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日本人の多くが日常的に友人や家族とのコミュニケーションのためにLINEを使っているように、世界でもWhatsAppやFacebook Messengerなどのメッセージングアプリは幅広い地域と年齢層に普及している。 Twilioの発表したレポート(How Consumers Use Messaging Today)によれば、いまやメッセージアプリのユーザーは世界で30億と、ソーシャルメディアのユー…

Photo by Jacob Ufkes on Unsplash

日本人の多くが日常的に友人や家族とのコミュニケーションのためにLINEを使っているように、世界でもWhatsAppやFacebook Messengerなどのメッセージングアプリは幅広い地域と年齢層に普及している。

Twilioの発表したレポート(How Consumers Use Messaging Today)によれば、いまやメッセージアプリのユーザーは世界で30億と、ソーシャルメディアのユーザー25億を上回る。

スマートフォンのホームスクリーン上に3つのメッセージングアプリを有し、1週間に3つのメッセージングアプリを使い、1時間にメッセージを3通送る、というのが平均的なユーザーなのだそうだ。

スマホとメッセージングアプリの普及、そして今後成長が期待される会話型サービスのチャットボットによって、将来大きな変化が確実視されるのが個人ユーザーと企業間のコミュニケーションだ。今後、メッセージングアプリを通じた企業とのやり取りはどのように進化するのだろうか?

カスタマーサービスやマーケティング、広がるメッセージングアプリの使い方

そもそも二者間のコミュニケーションの手段として挙げられるのは、
対面・郵便・電話・Eメール・メッセージング・SNS・ビデオチャット だ。
だが、企業対個人のコミュニケーションは最初の4つの手段まではだいぶ定着したものの、新しい手段を活用していない企業はまだまだ多い。

Twilio: How Consumers Use Messaging Today

だからこそ、メッセージングアプリを活用して、どのようにユーザーエクスペリエンスやエンゲージメントを高めることができるかは、一般消費者向けのビジネスを展開する企業の今後を左右する重要なポイントになる。

現時点でもっとも多く活用されているケースというのは、リアルタイムな通知を送るときだろう。フードデリバリーの注文確認や配送の通知、飛行機や電車の遅延といった緊急性が比較的高いものだ。

こうした緊急性の高いメッセージ以外に、今後の進化が期待されているのが、マーケティングとカスタマーサービスの分野であり、まさに会話形式のチャットボットが本領を発揮する分野だといえる。

Appleも参入、Facebookが牽引するチャットボットプラットフォーム

メッセージングアプリ上におけるチャットボットの活用の分野で、プラットフォームとして牽引しているのはFacebookで、11月にはFacebook Messengerのエクスペリエンスをウェブサイトに統合できるカスタマーチャットプラグインがローンチしたばかり。ウェブ上の会話をその後もメッセージングアプリ上で確認、継続できるという連続性が実現することによって、ブランドや企業は活用次第でユーザーをよりひきつけることができる。

Appleもまた、今年のWWDCではビジネスチャットという企業向けのプラットフォームをローンチすることを発表した。iPhone、iPad、Apple Watch、そしてSafariやSiriなど、異なる端末とアプリケーション上でも連続した経験が可能になれば、ユーザーはより快適に企業とつながることが可能になる。

買収や資金調達が進むアジアのチャットボットスタートアップ

チャットボットの開発も世界各地のスタートアップが取り組んでいる。

11月には、対話型AIを開発する韓国のスタートアップFluentyがサムスン電子に買収された。銀行向けチャットボットを開発するインドのActive.aiは、最近資金調達をしている。

ジャカルタを拠点にチャットボットを開発するKata.aiも、今年7月にシリーズAラウンドで350万ドルを調達した。台湾のTrans-Pacific Technology Fundが主導し、韓国、インドネシアなどアジア諸国もこのラウンドに参加した。

自然言語処理やAIを活用したチャットボット開発が盛んであるのは当然アジアだけではないが、今後のeコマースの大きな成長が期待できる東南アジアは特にチャットボットが果たす役割も大きいだろう。

特にインドネシアでは平均して4.2個のメッセージングアプリがスマートフォンにインストールされており、97%の人々が1日に複数回メッセージングアプリを使用しているという状況は、メッセージングアプリの利用状況の地域差を考える上でも興味深い。LINEユーザーが圧倒的な日本からは想像しがたいが、メッセージングアプリごとの特性や使われ方の違いは今後大きくなっていくだろう。

友人・家族間と企業とのやりとりで使われるメッセージングアプリは違う / How Consumers Use Messaging Today

だからこそ、日本でも旅行客向けにはLINE以外のメッセージングアプリを通じたカスタマーサービスの提供やマーケティング、また海外の一般消費者をターゲットにする場合には地域差を考慮したサービスの設計が求められると考える。

メッセージングアプリの利用状況など、Twilioによるレポートもぜひ参照のほど。


関連記事:
AIチャットボット技術を開発する韓国スタートアップFluenty、サムスン電子が買収
関連記事:バンガロールを拠点に銀行向けチャットボットを開発するActive.ai、シリーズAラウンドで825万米ドルを調達
関連記事:インドネシアのチャットボットプラットフォーム「Kata.ai」、シリーズAで350万米ドルを調達——台湾と東南アジアへのサービス展開に着手

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AIスタートアップ都市として注目が集まるカナダのトロント、その背景は?

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<ピックアップ>Toronto’s thriving AI ecosystem serves as a model for the world カナダのトロントはAI・深層学習の分野で世界のトップ人材、企業を惹きつけているが、その背景にはなにがあるのだろうか? CyclicaのCEO、Naheed Kurji氏がVentureBeatに寄稿した「トロントの勢いあるAIエコシステムは世界に対してモデ…

Photo by Alex Shutin on Unsplash

<ピックアップ>Toronto’s thriving AI ecosystem serves as a model for the world

カナダのトロントはAI・深層学習の分野で世界のトップ人材、企業を惹きつけているが、その背景にはなにがあるのだろうか?

CyclicaのCEO、Naheed Kurji氏がVentureBeatに寄稿した「トロントの勢いあるAIエコシステムは世界に対してモデルになる」で指摘していた重要なポイントを以下に抜粋してみた。

・AIに強い大学が活用事例を提示、人材を輩出:世界トップレベルの研究機関であるトロント大学、また近郊にウォータールー大学を有する。この二つの大学は特にヘルスケア、ライフサイエンスの分野でAIの新たな活用事例をつくっている。また、優秀なコンピュータサイエンティスト、データサイエンティスト、人材を輩出する。

  • 多様な人々がAIエコシステムを形成:トロントは多様なバックグラウンドをもち、インターナショナルな人々が集まる。投資家、インキュベータ、テクノロジストなど、さまざまな人々がAI業界を築いている。
  • AIのパイオニアが集まる:Geoffrey Hinton氏、 Sanja Fidler氏、Anna Goldenberg氏、Raquel Urtasun氏といったAIのパイオニアが率いる、または助言をしている組織がある。
  • ビジネスと研究機関の連携:ビジネスの成長を重視するネットワーク、ラボがある。MaRS Discovery District、The Vector Institute、Creative Destruction Labがその例。これらの組織は学術的なプログラムとも連携しながら事業開発を行い、人材育成にも貢献している。
  • 国内外の投資家の積極投資:トロントの投資家は地元のAIスタートアップに積極的に投資している。今年は、Alphabetの子会社であるSidewalk LabsやFacebookのザッカーバーグCEOによるチャン・ザッカーバーグイニシアチブなどもトロントのプロジェクトや企業に投資し、国外からの注目度も増している。
  • グローバル企業も積極投資:グローバル企業もトロントで様々な取り組みを展開中。Johnson & Johnsonは、トロントでJLabsというプログラムを運営し、創薬におけるAIの活用に期待している。グーグルは、AIの権威ジェフリー・ヒントン氏がチーフ科学アドバイザーを務めるトロント大学内の取り組み The Vector Instituteに500万ドルを出資した

簡単にまとめると、長期間かけて成長してきた学術界のAIネットワークにまず国内の資本が投入されて、事業開発が始まり、軌道に乗ったところで、国外の大手企業が投資を始めて成長に加速をかけたという感じだろうか。

カナダはトロントの他にモントリオールもAIハブ都市として注目されており、FacebookはAIの研究拠点を同市に立ち上げている。テック業界のカナダ経済への貢献度がますます高まりそうだ。

関連記事:Facebook、人工知能の研究拠点をモントリオールにオープン

参照:Toronto’s thriving AI ecosystem serves as a model for the world

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飛躍する東南アジアのインターネット経済、配車アプリ予約は2年で4倍、1日600万件に

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東南アジアのオンライン経済な堅調のようだ。Googleとシンガポールの政府ファンドTemasekが発表したレポートから、東南アジア地域でのオンライン経済、インターネットやモバイル端末の利用状況の実態が浮かび上がってくる。その内容を以下に一部ピックアップしてみた。 3億3000万のインターネットユーザー、モバイル利用時間が長い 2015年以来の年平均成長率は13パーセント。90パーセン以上のユーザー…

Photo by Mike Enerio on Unsplash

東南アジアのオンライン経済な堅調のようだ。Googleとシンガポールの政府ファンドTemasekが発表したレポートから、東南アジア地域でのオンライン経済、インターネットやモバイル端末の利用状況の実態が浮かび上がってくる。その内容を以下に一部ピックアップしてみた。

3億3000万のインターネットユーザー、モバイル利用時間が長い

2015年以来の年平均成長率は13パーセント。90パーセン以上のユーザーが、スマートフォンでウェブにアクセスすることを好んでいる。

東南アジアの人々は、他のどのエリアよりも突出してモバイル端末でインターネットを使う時間が長い。その平均時間は1日3.6時間で、中国の3時間、米国の2時間、日本の1時間に比べても長いと、Googleのバイスプレジデント、東南アジア・インド担当マネージングディレクター Rajan Anandan氏はコメントしている。

特にモバイルでのネット利用が好きなのはタイ人 4.2時間で、インドネシア人の3.9時間が続く。

eコマースと配車アプリの成長、毎日の配車アプリ予約数は600万件

e-Conomy SEA Spotlight 2017 / 東南アジア地域のインターネット経済市場規模

オンライン経済の規模は今月末には500億ドル規模に、2025年には2000億ドル規模になると見込まれている。

インターネット関連ビジネスの全体における比率は2015年時点では1.3パーセントだが、2025年までにはその比率も6パーセントにまで達する見込みとのこと。特に、成長が見込まれているのがeコマースと配車アプリだ。

Google上でeコマース企業の検索は過去2年間で倍増しており、ローカルのeコマースサイトの滞在時間は毎月平均で140分とのこと米国は80分)。

中小企業による消費者向けの市場、中古品市場、C2Cプラットフォーム、オンラインクラシファイドなどのB2Cのeコマースの市場規模は、今年109億ドルに達する見込み。

e-Conomy SEA Spotlight 2017 / 配車アプリの市場規模の成長予測

自動車やバイクの配車アプリは過去2年で総流通総額が2倍に。毎日の配車の予約数は2015年の130万から2017年に600万に、配車アプリを運営する企業に登録してるドライバーの数も60万から250万と大きく成長している。2025年には配車サービス市場は200億ドルに達する見込みとのこと。

関連記事:Uberとシンガポールのタクシー会社ComfortDelGro、4億7,400万米ドルでジョイントベンチャーを設立へ

モバイル決済やオンライン教育、デジタルヘルスケアは今回の調査では「萌芽期であるため」対象にならなかったようだが、こうした分野の成長も今後は要注目だ。

投資はユニコーン企業に集中、アーリーステージへの出資数も大きく増加

2016年から2017年の第三四半期の間、総額130億ドルがスタートアップに出資されているが、そのうち90億ドルがGo-Jek、Grab、Lazada、Razer、Sea、Traveloka、Tokopediaといた一部の「ユニコーン」企業に集中している。

では、アーリーステージのスタートアップに対する投資が少ないのかというと、そうではなく、1370件中1095件がシードステージとシリーズAの投資であり、創業初期段階へのスタートアップにも資金が投入されている。

e-Conomy SEA Spotlight 2017

出資の件数が大幅に落ちるのはシリーズB以降で、シリーズB・Cでの資金調達は94件と、一般的に安定した成長という結果が求められるシリーズB段階に進む際の壁が現状では大きいようだ。

課題は地元のエンジニア不足、ユニコーン企業は中国やインドに開発拠点を設立

スタートアップへの投資も大きく増え、インターネットのインフラや配送ネットワーク、オンライン決済における消費者の信頼の向上など、ここ2年で大きな改善が見られた一方で、残る大きな課題の一つは「テック人材不足」と、レポートは言及する。

地元出身のエンジニア、特にシニアレベルのエンジニアが不足しており、そのためGrabやGo-Jekといった既に規模が大きくなったスタートアップは、優秀なテック人材を集めやすい中国やインド、アメリカに開発拠点を置く結果となっている。

また、成長する過程でエグゼクティブ人材が必要になった際に、経験値の高い外国人を選ぶか、経験は少なくともローカルな事情が分かる地元の人材をとるかで悩むスタートアップも増えているとのこと。

成長に伴って新たな課題にも直面しつつ、業界の成長と変化は今後も続きそうだ。

さらに詳細の内容は以下のレポートを参照のほど。

参照:330 million internet users accelerating the growth of Southeast Asia’s internet economy

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資金調達額は過去最高、ロンドン・パリ・ベルリンが三大テック都市ーー欧州スタートアップシーンの現状

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欧州のテックスタートアップシーンの現状をまとめたレポート「The State of Europearn Tech」を、ベンチャーキャピタルのAtomicoが先週リリースした。 143ページにわたる詳細なレポートでは、欧州のスタートアップシーンの現状と将来をさまざまな角度から分析している。総じて、その内容はポジティブなものである。以下に、特に印象に残った部分をピックアップしたい。 欧州のテックシーン…

上:ベルリンのテックフェスティバル Tech Open Air (著者撮影)

欧州のテックスタートアップシーンの現状をまとめたレポート「The State of Europearn Tech」を、ベンチャーキャピタルのAtomicoが先週リリースした。

143ページにわたる詳細なレポートでは、欧州のスタートアップシーンの現状と将来をさまざまな角度から分析している。総じて、その内容はポジティブなものである。以下に、特に印象に残った部分をピックアップしたい。

欧州のテックシーンに対する見方は楽観的

まず、「1年前と比べて、欧州のテックシーンの将来について楽観的か」という質問では、ほとんどの地域で過半数の回答者が楽観的に考えていることがわかる。

上:「1年前と比べて、欧州のテックシーンの将来について楽観的か」に対する回答

レポートによれば、テック業界の雇用力は伸びており、欧州全体で2.6パーセント増よ業界全体の平均よりも3倍の伸び率だ。

資金調達額は過去最高を記録、トップはロンドン

欧州のスタートアップによる資金調達も好調だ。今年の資金調達件数は昨年よりも減ったものの、調達額は過去最高の190億ドルを記録した。都市別にみると、ロンドン、ベルリン、パリの順で調達額が多い。

ブレグジットに対する懸念は大きく、特に資金調達や人材獲得が不安

一方で、「過去1年で欧州のテックエコシステム対して最も大きな影響を与えた出来事はなにか」という質問に対しては「EU離脱プロセスを開始するための第50条が発動したこと」を挙げた人が多く、ブレグジットに対する不安は大きいことがわかる。

特に挙がっている懸念点としては、「資金調達、投資に関する状況が大きく変わること」「人材獲得」だ。一方で「影響はない」と考えている人も32パーセントおり、ブレグジットに対する考え方は多様であるようだ。

上:欧州のVCによる、自国以外のスタートアップへの出資件数

実際、欧州のVCが自国以外へのスタートアップに出資をする、つまり国境を超えた投資というのは、上のグラフの通り2012年以降大きく伸びている。英国を含めて一枚岩で語られることの多い「欧州のスタートアップシーン」であるが、その状況が英国離脱によってどう変わるのかは、当然関係者の大きな関心の的だ。

テックコミュニティは都市に集中、欧州トップ3のテック都市はロンドン・パリ・ベルリン

上:年間のスタートアップ関連イベント数と、アクティブなメンバー数の都市別比較

スタートアップコミュニティは都市に集中している。欧州でのミートアップの数は、2012年に比べると8倍ほどの数に増えている。中でも、こうしたイベントへの参加者が多い「ハブ都市」のトップ5は、ロンドン、パリ、ベルリン、アムステルダム、マドリードである。

ドイツではテックコミュ二ティの34パーセントがベルリン、スペインは32パーセントがマドリード、ハンガリーは87パーセントがブダペストと、一部の都市にコミュニティが集中する傾向にある。一方で、トップ20以外のテック都市で開催されるミートアップの数は徐々に増えており、こうした「テック都市」の数自体は増えている。

ファウンダーが起業の場所を選ぶポイントとして挙げるのが、「人材へのアクセス」と「事業を始める上の簡単さ・コスト」だ。都市に集中する背景には、人材(特にエンジニア)の採用しやすさと、事業を始めるにあたっての環境が整っていたり、関連の情報が多いことがあるだろう。

欧州でファウンダーを輩出している企業は、ロケットインターネットとノキアだった

その他、興味深かったのが、欧州でファウンダーを輩出している企業ランキングだ。

上:ファウンダーを輩出している欧州のテック企業

アメリカでは、GoogleやApple、Microsoftなどのいわゆるテックジャイアントを卒業したファウンダーは多く、こうした人材の循環がエコシステムを成熟させているといえる。

アメリカに比べると、その規模は下回るものの、欧州でもロケットインターネットやノキア、スカイプ、SAPなどのテック企業が多くのファウンダーを輩出しており、時間とともにエコシステムがまわり始めていることが見てとれる。

この他、エンジニアが集まっている都市やベンチャーキャピタルの投資状況など、詳細の情報はこちらのレポート「The State of Europearn Tech」を参照のほど。

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WeWork、大手企業ユーザーが1年で倍増、急成長を支える一因に

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全世界でコワーキングスペースを運営するWeWorkの猛進ぶりが止まらない。CEOのアダム・ニューマン氏は先週、今年の売り上げは10億ドルに達する予定であると発表し、具体的な時期については言及しなかったものIPOの予定があることも伝えた(参照:ロイター)。 現在、15カ国で149の場所に展開しており、12万人のメンバーを有するというWeWork。注目すべきは、大手企業ユーザー数の飛躍ぶりである。 「…

上:ベルリンのポツダム広場のビル内に昨年オープンしたWeWork (著者撮影)

全世界でコワーキングスペースを運営するWeWorkの猛進ぶりが止まらない。CEOのアダム・ニューマン氏は先週、今年の売り上げは10億ドルに達する予定であると発表し、具体的な時期については言及しなかったものIPOの予定があることも伝えた(参照:ロイター)。

現在、15カ国で149の場所に展開しており、12万人のメンバーを有するというWeWork。注目すべきは、大手企業ユーザー数の飛躍ぶりである。

「2年前までは、フォーチュン500に入るような企業がユーザーで占める割合は1パーセントだったものの、現在ではその割合は30パーセントまで伸びている」とのこと。また、recodeの報道によれば、1000名以上の社員を持つ法人ユーザーの利用が、この1年で倍増しているという。

WeWorkのチーフグロースオフィサーのDave Fano氏がrecodeに語った内容によれば、「一度に大きなスペース、または階ごと借りる法人クライアントのおかげで、WeWorkは以前よりも高いレント率で新しいロケーションに拠点をオープンすることができている」とのこと。

確かに、私が在住しているベルリンでもWeWorkをはじめ、外資やローカルのコワーキングスペースがここ2年ほどで急増・拡大したが、共通して見られる傾向は大手企業ユーザーの増加だ。

それまでは、コワーキングスペースのユーザーのほとんどが、フリーランサーか、または数名〜10名程度の比較的小さなスタートアップやスモールビジネスのチームだったが、ここ1、2年の大手企業ユーザーの増加ぶりは顕著だ。

大手企業がコワーキングスペースに自分たちのスペースを持つ動機は、「スタートアップやフリーランスのデザイナー・クリエイターとの協業機会を模索している」「最新のテックやライフスタイルのトレンドを知りたい」「イノベーションに積極的である姿勢を示したい」などさまざまだ。

大手企業ユーザーの思惑はどうあれ、コワーキングスペースを運営する側にとっては、安定して大きなスペースを貸せるという点で彼らが借りていくれることは大きなメリットだろう。大手企業ユーザーへの供給が今後も安定して続くかどうかは要注目だ。

先月、WeWorkはコミュニティプラットフォームMeetupを買収し、この半年だけでも買収した会社は建設業界向け通信システムFieldlens、シンガポールのコワーキングスペース Spacemob、マーケティングプラットフォーム Unomy、コーディングブートキャンプFlatiron Schoolと、その勢いは止まらない。

この夏、Softbank GroupとSoftBank Vision Fundから44億ドルの大型資金調達したことは、その加速の大きな要因だろう。

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「呼吸」をするロボットを抱きしめて睡眠不足解消へーースリープテックに挑戦するオランダのスタートアップ

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世界では5人に1人が睡眠不足であるというが、オランダのスタートアップ Somnoxは、そんな睡眠不足で悩む大勢の人々により良い睡眠を提供するために「スリープロボット」を開発している。 ふかふかの素材で包まれたこの柔らかいロボットは、睡眠時に抱き枕のように抱えると、人間のように「呼吸」を開始する。ユーザーは自然と呼吸のリズムをロボットの「呼吸」リズムに合わせるようになり、それによってストレスが軽減し…

Credit: Somnox

世界では5人に1人が睡眠不足であるというが、オランダのスタートアップ Somnoxは、そんな睡眠不足で悩む大勢の人々により良い睡眠を提供するために「スリープロボット」を開発している。

ふかふかの素材で包まれたこの柔らかいロボットは、睡眠時に抱き枕のように抱えると、人間のように「呼吸」を開始する。ユーザーは自然と呼吸のリズムをロボットの「呼吸」リズムに合わせるようになり、それによってストレスが軽減しリラックスした状態となって良い眠りにつけるという仕組みなのだそうだ。

また、ロボットは心臓の鼓動音や子守唄、瞑想ガイドなどユーザーが付属のアプリで設定した音声も発することができる。

「睡眠不足をテクノロジーで解決できないか?」

Somnoxはデルフト工科大学の学生が中心となって、立ち上がったスタートアップだ。ロボット工学やインダストリアルデザインを学んでいた学生が中心となって立ち上げ、ファウンダーたちは20代前半と若い。

ファウンダーや彼らの友人たちで不眠を患っていたり、睡眠不足に悩んでいる人は多かった。「なぜ、睡眠不足に対する有効なテクノロジーを使ったソリューションがないのか?」副作用のリスクがある薬に頼らない解決方法が必要だと考えた。

この身近な問題を自分たちの専門分野であるロボティクスとデザインで解決したいと考え、試作品づくりをスタートした。

試作品が完成し、テストに協力してくれるユーザーを募ったところ1週間で2000通ものメールが届いたという。これに手応えを感じて「これはスタートアップにして取り組むべきかもしれない」と思ったという。

Somnoxは2015年に創業。彼らの出身校であるデルフト工科大学が運営するインキュベータ「YES!Delft」に参加してサポートを受けた。

ちなみに、YES!Delftはこれまでに200以上のスタートアップをサポートし、参加したスタートアップが調達した額は3億1600万ユーロにも到達する。

ロボットの人間的な呼吸が、ユーザーをリラックスさせる

上:Somnoxの試作品の内部
Credit: Somnox

Somnoxの仕組みだが、ユーザーがSomnoxを抱きしめるとロボットは呼吸をする人間のお腹のようにゆっくりと動き始めて「呼吸」をする。その呼吸とユーザーの呼吸のタミングが徐々に一致し、ユーザーはリラックスした状態で呼吸できるようになり眠りにつけるという。

Somnoxはユーザーが眠っているか起きているかを理解して、起きているユーザーに対しては適切なタイミングで感覚をくすぐり(tickle)、睡眠へと導くとのこと。その特許取得済みの技術がこのプロダクトの鍵であるようだ。

そのほか、ユーザーが設定した音声を流したり、温度の調整、ライトをつけて起床時に起こすといった機能も備えている。

これまでに24ヶ月を研究開発に費やし、5000名を超える人からのフィードバックを受けて、何百回も試作品を作り変えていった。医療機関とも協力して、臨床の評価も得る予定だ。

小売価格は500ユーロほどで考えているものの「Sleep as a service」として、睡眠不足が解決するまでの期間だけを貸し出す仕組みも検討中であるとのこと。

現在Kickstarterでキャンペーンを実施中。すでに目標額を上回り、12万8000ユーロ(約1500万円)に達している(11月24日時点)。

ミッションは「2025年までに、この世界でもっともナチュラルな睡眠ソリューションによって10万名の人々を助けること」だそうだ。

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ZOZOSUITは世界中のファッションコマースが悩む返品率を下げられるか? 「フィットテクノロジー」に取り組む企業たち

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ファッションeコマース「ZOZOTOWN」を展開するスタートトゥデイが発表した「ZOZOSUIT」が大きな注目を集めている。まさか、着用者の身体のデータを測定するスーツが登場するとは思わなかった。しかも送料は注文者負担とはいえ無料提供だというから、さらに驚いた。 筆者も洋服はオンラインで購入することがだいぶ増えた。住んでいるドイツではファッションeコマースのZalandoがこの業界では最大手で、私…

image: texel.graphics

ファッションeコマース「ZOZOTOWN」を展開するスタートトゥデイが発表した「ZOZOSUIT」が大きな注目を集めている。まさか、着用者の身体のデータを測定するスーツが登場するとは思わなかった。しかも送料は注文者負担とはいえ無料提供だというから、さらに驚いた。

筆者も洋服はオンラインで購入することがだいぶ増えた。住んでいるドイツではファッションeコマースのZalandoがこの業界では最大手で、私もよく利用している。

だが、洋服をオンラインで買うときには「サイズが合うかわからない」「実際の着心地や肌触りがわからない」など、悩ましい点は結構ある。私自身、慎重に選んでいるつもりでも注文した品の半分ぐらいは返送している。

Zalandoは送料・返送料金は無料であるため、気軽に注文して試着し、返送するユーザーも少なくないだろう。その返品率は実に50パーセント程度にもなるといわれている。返送にかかるコストは莫大なはずだ。ユーザーにとっても返送は面倒だし、なにより期待外れのものが届いたときの落胆も大きい。

だからこそ「フィットした服を届ける」ことは、返品率を下げるためにも、ユーザーエクスペリエンスをあげるためにも重要なミッションになる。

この「フィットテクノロジー」に取り組んできた会社は少なくない。各社、どのようなソリューションを提供しているのだろうか? いくつかピックアップしてみたい。

Metail:自分のアバターで試着できる「バーチャル試着室」を提供

2008年に創業したケンブリッジ発のスタートアップ「Metail」は、バーチャルフィッテイングルームを通販サイトなどに提供している。大学とも協力しながら、研究開発を進めてきた。

Metailのサービスを導入したサイトでは、ユーザーはMeModelとうアバターをつくることができる。自分の体型に関するサイズを入力したり、肌の色を変えるなどして、アバターを自分の身体に近くすることができる。そして、アバターにサイト上の洋服を試着させて、サイズ感を確かめることができる。

CEOのBryett氏は、このバーチャル試着室「Try-On」を導入した結果「サイトへの再訪問が50%増え、注文価格も31%増えた」とコメントしている。

これまで2000万ドル強を資金調達している。

楽天が買収したエストニア発の Fits.me

エストニアで創業し、その後ロンドンへと本社を移したFits.meもまた、通販サイト向けに検索拡張機能を提供する。

Fit.meの提供する機能が埋め込まれたサイトでは、ユーザーが身長や体重、ブラジャーのサイズなどを入力し、体型を選択すると、それに合う洋服をリコメンドされる。また、衣類は「衣類テクノロジスト」によって分析され、シルエットやストレッチの度合い、着心地の好みなどを考慮した上で衣類データがつくられる。この衣類データと購入者が入力したデータを合わせて、リコメンデーションがされる。

2009年に創業し1600万ドルほどを調達したのち、2015年に楽天が買収した。

Texel Graphics:高速3Dスキャナで身体のデータを読み取り、AIが洋服を提案

3Dスキャナーを開発するRussian Texelの子会社であるTexel Graphicsは、2016年からIKEAとロシアのBelaya Dacha Group のジョイントベンチャーであるショッピングモールMEGA BELAYA DACHAで、3Dスキャナを試着時に活用するパイロットプログラムをスタートさせた。

「客は30秒でスキャンされ、ニューラルネットワークに基づいたプログラムがそのデータに基づいて、サイズと予算にあった洋服を提案する」とのこと。

Texel Graphicsは、顧客の行動習慣や好みも分析して、リテーラーやブランドにデータ活用を提案することを計画しているそうだ。(参照:Russia Beyond

Try.fit:足を3Dスキャンし、適切なサイズの靴を提案

モスクワとアイルランドに拠点を置くTry.Fitは、3Dスキャナーと付属のモバイルアプリを通じて、ユーザーが自分に合った靴をオンライン・オフラインで選べる機能を提供する。

この3Dスキャナーを使えば、ユーザーは1分以内に足の「3Dクローン」をつくることができるという。また、同社は靴の内部スペースを測定するデバイスも開発し、そこで得られたデータとユーザーのデータを合わせることで適切なサイズを提案しているようだ。(参照:Russia Beyond

Acustom Apparel:3D測定技術を使ってオーダーメイドのスーツを提供

2011年に創業し、ニューヨークを拠点とするAcustom Apparelは、3D測定技術を使ってユーザーの身体とスタイルにあったオーダーメイドスーツ・シャツを提供している。

サイトでは「独自のデジタル測定技術をつかって、200万のデータポイントを集めて3Dボディモデルをつくります。そのデータを独自のアルゴリズムに投入すれば、身体にフィットしたシャツやスーツをつくることができます」と謳ってる。

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このように、さまざまな会社がユーザーにフィットした服を届けるための挑戦を続けている。ZOZOSUITはスーツ型という点で新しく、また身体のサイズだけでないユーザーの動作に関わるデータが、どのように今後活用されるかが要注目だ。また、ZOZOSUITを通じて取得できた精密なユーザーの身体に関するデータを、洋服側とどのようにマッチングしていくかも気になるところである。

5年後、この「フィットテクノロジー」の分野を牽引するプレイヤーは誰だろうか?

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