関連スタートアップを買収して力をつけるSpotify、有料会員数も堅調に成長中

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Credit: Paul Sawers / VentureBeat

音楽ストリーミング大手のSpotifyは17日、オンライン音楽・オーディオレコーディングスタジオを提供するSoundtrapを買収した

Soundtrapは2012年にSpotifyの本拠地でもあるストックホルムで創業し、アマチュアのミュージシャン向けに、クラウド上でレコーディングができるオンラインプラットフォームを提供してきた。音楽制作ツールは複雑になりがちだが、音楽好きが簡単に録音できることがウリだ。

オンライン上でのコラボレーション機能は教育者の間で人気となり、Soundtrap上のビデオコールを通じて教師が生徒向けに音楽に限らず様々な授業を提供するなど、教育の現場でも使われるようになった。GoogleがChromebookに搭載する教育サービスにピックアップしたことも成長に拍車をかけ、VentureBeatによれば約1年前の時点で75万ユーザー数を有していた。

今回の発表に際して、「Soundtrapの急速な事業の成長は、Spotifyの音楽エコシステムを民主化したいというビジョンと高く共鳴するものです」とSpotifyはコメントしている。

Soundtrapは、「私たち両社はカルチャーや創造性、戦略的にも非常に合っています。Soundtrapはこれからも、Spotifyファミリーの中で消費者、教育者、学生のために音楽づくりのプロセスに革命をおこしたいと思います」とコメントする。

今年はAIスタートアップの買収を強化したSpotify、有料化員数は右肩上がり

Soundtrapの買収は、Spotifyにとっては12件目の買収事例だ。今年に入ってからはSpotifyは4件、関連のスタートアップを買収している。

今年の買収を振り返ってみると、まず3月にはニューヨーク拠点でAIを使って個人の好みや友人の評価をもとに動画を推薦するサービスを提供するMightyTVを買収してる。MightyTVは2015年に創業。ファウンダーは、Admeldというアドテック企業をGoogleに売却した経歴をもつブライアン・アダムズ氏だ。

翌月4月には、やはりニューヨーク拠点のスタートアップMediachainを買収。ブロックチェーンを使って、インターネット上の作品の権利者の登録や特定、追跡をするシステムを開発していたチームだ。ロイヤリティの未支払い問題に直面し、今年3月には3000万ドルの解決金を支払ったこともあるSpotifyにとっては、作品の権利者管理は死活にかかわる問題だ。

そして5月には、パリに拠点を置く機械学習スタートアップNilandを買収した。音楽の検索と推薦機能の最適化において、Nilandの技術を活用することが目的だ。

このように、今年に入ってからはAIに強いスタートアップを積極的に買収してきたことが分かる。よりスマートなユーザーエクスペリエンスを実現すること、そして権利者情報が特定しにくい作品も効率的にプラットフォームに載せていくことが狙いだろう。一方でSoundtrapについては、彼らが築いてきた教育者や学生といったユーザー層を取り込むことが一番の目的ではないだろうか。

Spotifyは今年の7月の時点で有料会員数が6000万人に達している。3月の時点で5000万人を突破したので、その4ヶ月間だけでもかなりの増加だ。

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鈍ることのないユーザー数の成長の背景の一つには積極的な買収がある。2ヶ月前のロイターの報道では、評価額は約160億ドルである。

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