IoTはモノにこだわりすぎると失敗するーープラットフォーム3社が語るIoTビジネスの本質 #bdash

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2016.3.5

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あらゆるモノのネット化を指し示すワード「Internet of Things(IoT)」が語られだしてから数年ほどが経過するだろうか。源流は諸説あれど、国内ではやはり秋葉原に出現した「DMM.make AKIBA」のインパクトで一気に進んだ感はある。

「ものづくりニッポンよ再び」のイメージが先行する一方、そのビジネスが販売なのか、通信なのか、ストレージなのか、はたまた違う何なのかよく解らないという側面があるのも事実だ。

福岡で開催中の招待制カンファレンス「B Dash Camp 2016 Spring」の壇上で、この答えのありそうでなさそうな話題に取り組んだのが、Skydisc代表取締役の橋本司氏、エブリセンス代表取締役の真野浩氏、さくらインターネット代表取締役の田中邦裕氏の3名。モデレートはABBALab代表取締役の小笠原治氏が務めた。

大量のデータが生まれる時代に備えたビジネス

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さくらインターネット代表取締役の田中邦裕氏

さくらインターネットが展開する「さくらのIoT Platform」については、発表当初から全体像を把握するのに苦労している人もいるのではないだろうか。

例えば時計や体重計といったものがネットに繋がるようになれば大量のデータが集まることになる。更に、固定のネット回線だけでなく、3Gを中心とする移動通信が自由に使えれば、その範囲は無限大に広がる。

スマートフォンシフトで、多くの人たちがネットに繋がり新たなアプリ経済圏が生まれたのは記憶に新しいが、その数が数倍増するイメージだ。そしてこういうデータが集まってくれば、処理や蓄積が必要になってくる。

ここに商機を見出しているのが田中氏だ。

「データが膨大になれば、どういうビジネスになるかは今ははっきりと分からないけれど、大きくとっておけば可能性が出てくる。(現在高額な)3G通信モジュールや通信料を低価格にすることで計測できるものが爆発的に増える」(田中氏)。

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ABBALab代表取締役の小笠原治氏

体重計からデータを取るのに月額数百円かかるようでは、なかなか利用は進まないが、これが数十円、数円レベルになれば取れる範囲が広がる。彼らが用意するプラットフォームの役割はそこにあるという。

このデータを流通させることでビジネスにしようというのが真野氏だ。例えばある場所で取得した気温情報を、全然関係のない別の場所にいる人たちが必要としたとする。この双方の間に入って取引を成立させる、いわば「データの証券取引所」のようなサービスを提案している。

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エブリセンス代表取締役の真野浩氏

そんな彼の指摘で興味深かったのがハードに対する考え方だ。

「最近のメイカーズブームっぽいのって「IoTイコール製造業」なんですよね。でも私が聞くのは、来年のポートフォリオが(※商品ラインナップ)どうなってるのだろうってことなんです。牛丼一筋でいくのかフルコースでいくのか。ハード製造業だとポートフォリオを広げていかなければいかない。来年は何種類になって、更に儲かったものを次のものに全部投資しちゃう。こうなるともうハムスター状態」。

これだけモノが溢れる時代にテレビや冷蔵庫のようなロングセラーを生み出すのは至難の業と言っていいだろう。売り切りのハードを作り続ける事業というのはまさしく滑車を走り続けるハムスターの如しだ。

ネット接続できるガジェットだからIoT、というのではやはり本質的ではなく、最終的に提供されるサービスを含めたビジネスモデル全体でこの新しい市場を考えるべきだろう。そういう意味で、真野氏がハードから生み出される「データ」の取引に商機を見出しているのは注目すべきポイントと思う。

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Skydisc代表取締役の橋本司氏

そして彼らの話をコンパクトに統合したビジネスを具体的に展開しているのが福岡拠点のスタートアップ、Skydiscだ。

「デバイス開発からクラウド利用、分析までを全て提供しています。14種類の中からセンサを組み合わせてデバイスにすることで(様々なデータ取得の課題を)解決しています。また、分析も環境用なら環境用と特化したサービスを提供していて、新しい分野が出てくれば、デバイスと同じく、分析や解析も付け外しができるようになっています」(橋本氏)。

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橋本氏らは農業、環境、流通の3分野でデバイスから分析までの一気通貫したIoTプラットフォームサービスを提供している。全体の話を通じて感じるのはハード、クラウド、アウトプットするサービスなどのバランスだ。

「モノにこだわりすぎると失敗しますね。例えば(さくらインターネットで提供している)VPSはハードとソフトウェアでできています。利益を出すためにはハードの比率を下げなければなりません。IoTも同じことです」(田中氏)。

まだ、IoTでビジネスとして突出した実例がまだ国内では見えていないのもこのワードがふんわりしている理由かもしれない。セッションを通じて感じた一種の物足りなさは、圧倒的な成功事例ひとつでクリアになるはずだ。

その日がくるのを楽しみにしたい。

Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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