クラウド会計サービスのfreee(フリー)は5月2日、消費税8%に対応した申告書の出力が可能になったと発表している。2014年4月1日以降に対応が必要となる税区分の処理はサービス側が自動的に消費税8%に個別選択し、手作業での入力や集計作業は不要となっている。また、納税に必要な申告書も消費税8%に対応したものが自動的に出力されるようになっている。
従来、クライアントインストール型の会計ソフトを使ったことがある人であれば、この消費税変更が「ソフトの買い替え」を意味していたことを理解できるはずだ。
細かい税制変更の度に高い料金を支払ってアップデートを経験した事業者にとって、何もせずにこの対応が可能なオンラインサービスはやはり使い勝手、費用的効率共に高い価値を感じられることだろう。
大型調達が続くクラウド会計の展望
そういった利用ユーザーの好反応を背景に「利用社数を7万事業所に拡大させている」(freee代表取締役の佐々木大輔氏)というfreeeだが、先月大型の資金調達を実施した。
金額にして8億円、これまでの調達額(公開されているもの)は総額で11億3000万円と、昨年10月に調達をしているマネーフォワードの5億円と合わせ、クラウド会計サービスへの積極的な資本注入が続いている。
佐々木氏にも話を聞いたのだが、市場のクラウド会計への理解を背景に「とにかく今は先行投資してアカウントを獲得する」と、至ってシンプルな戦略のようだ。大型の調達資金は主にカスタマーサポート、マーケティング、開発に注がれるという。
しかし、このクラウド会計の需要はどこに天井があるのだろうか?
ひとつはスモールビジネスの事業所の数だ。統計局の発行しているデータによれば国内事業所の数はざっくりと600万ほど。この8割から9割近くがいわゆる「スモールビジネス」に該当するので、国内だけでもそれだけの「面」があることになる。佐々木氏はさらにこの先に海外展開、北米では大手のインテュイットが大きく占めている先行事例もあり、アジア方面には特に注目していると話していた。
さらに提供するサービスの「深さ」も興味深い。佐々木氏が狙うバックオフィスの自動化は、会計だけでなく給与や請求などの処理、さらに営業管理と徐々に企業経営の基幹部分に近づいていく。
さらにオンラインならではのネットワークも重要なポイントだ。例えば、事業者間でfreeeをベースにしたネットワークが成立していれば、受発注などが同一フォーマットでやりやすくなる。
佐々木氏との会話で、既にこの分野でクライアントソフトとして先行している弥生などは、既存顧客との兼ね合いからなかなかクラウド会計に手を出せないという話もあり、しばらくはfreeeとマネーフォワードというクラウド会計2強の躍進は続きそうだ。
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