オンデマンド経済はどのように進化するか? 2016年の4つの方向性

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Micha Kaufman氏はFiverrでCEOを務める。

Above: An Instacart grocery bag. Image Credit: Instacart
上:Instacartの買い物袋
Image Credit: Instacart

Uber、Airbnb、Instacart。2015年にもっとも話題にのぼった企業はすべて1つのカテゴリに属する。オンデマンドだ。なぜだろう? 見知らぬ人の自家用車に乗り込むことに対する抵抗も、そろそろ薄れた頃ではないだろうか?

その答えは論争だ。労働争議や法的論争を抱え、こういった企業を見ていて飽きることはない。しかし民間セクターが落ち着きはじめネットワーク効果も薄れるに伴い、ますます競争が激化するこの分野は生き残りをかけてどのような進化を遂げていくのか。私の2016年の予想は次の通りだ。

1. 「Uber for X(UberのX版)」は失敗に終わる

ドッグシッターや庭師、ヘアスタイリストやマッサージ師まで、「まるでUber、ただしX用の」と称する企業は数えきれないほどある。過去2年間、ベンチャーキャピタリストはUberのX版を主張するスタートアップ企業に投資してきたが、2016年にはそれも変わるだろう。そういった企業に対する評価は落ち始めている。

民間市場は立て直しを図っており、以前下した評価は積極的過ぎたかもしれないと公言する投資家もいる(参照:SnapChat)。

このような情勢下では、オンデマンド経済圏における三流企業など、実証済みのビジネスモデルも持たずに早くに資本を消費してしまう企業は、資金集めに苦しむようなことがあれば買収の標的になるだろう。

もちろん、勝者も出てくる。例えばThumbtackのように、多角化されたビジネスモデルや大きな牽引力となるものを持つ企業は成功する傾向にある。だが、ニッチあるいは限られたものを提供するスタートアップ企業があまりにも早急な拡大を目指すと、最終的には失敗することになる。

ニッチなスタートアップ企業が、Homejoyの話から学んで買収の可能性を探る中、取引に成功するのは、広範囲に及び多数の異なるサービスや商品を提供する水平型市場だろう。彼らにとって買収とは、特定の垂直方向に成長を加速し質を向上させる方法なのだ。

2. 軍配はフリーランスに

契約者対被雇用者についての議論は読み飽きたという人は、2016年はあまり期待しない方がいい。革新に追いつこうと、規制機関はもはや時代遅れとなった労働者潮流について論じ続け、ミレニアル世代が好む雇用上の選択肢の把握に失敗するだろう。

最新データによると、実はオンデマンド労働者の70%が仕事に満足している。

最終的には、Lyftのような一般的な雇用形態を活用する派遣サービス事業者と、従来の9時ー5時の仕事を好まず、自らこの道を選んだ典型的なフリーランサーをよりうまく活用するために乗り出す企業にはっきり分かれるだろう。要するに、週4日就業であろうと、契約者の採用プロセスの見直しであろうと、もっとも優秀な人材を得るためであれば企業はどんなこともするということだ。

最終的には、恐らく2016年中ではないだろうが、被雇用者向けの福祉手当も進化し、契約者向けにも提供されるようになるだろう。保険制度、退職金口座、通勤手当など、すべてがあらゆる雇用形態に対して提供され、フリーランサーと正社員の区別はあいまいになるだろう。

3. 今後もスタートアップは急増。だが、スケールできるか?

起業にかかるコストは2016年も引き続きほとんどかからない。かからな過ぎと言ってもいいだろう。商品化される技術(AIすらオープンソース化される)や初期段階のあり余るほどの資金により、スタートアップ企業は過剰に立ち上げられ、結果的にSN比は手に負えないほどになるだろう。

2016年に引き続き課題となるのは何か? それはスケールだ。企業のインフラであれ、依存するビジネスモデルであれ、あるいは育成しようとしている文化であれ、真の成功を手にする企業とそれ以外の企業とを分け隔てるのは、今後もスケーラビリティ(拡張性)だろう。

4. 従来の業界に迫る新ビジネス

今では、Uberユーザはランチを注文してオフィスに届けてもらうこともできれば、子猫を玄関まで、あるいは花を恋人に配達してもらうこともできる。Uberの既存業界への展開がただのバズマーケティングだと思うのであれば、考え直した方がいい。

ネットワーク効果は10年あるいは20年継続することすらあるかもしれないが、垂直化されたオンデマンド企業は、ビジネスを成長させるには1つのサービスを配達するという枠を超え、多様化する必要があるということに気付いている。

Amazonのeコマースビジネスの成長に陰りが見えてきた頃、同社のAWSビジネスが高成長・高利益率の収入源となったように、ライドシェア企業も飽和状態の兆しが見えてきているのに気づき、次に何が来るかに目を向けるようになるだろう。

そして「次に来る」のは従来のビジネスかもしれない。人々はニューヨークから東京への配達にはFedExを使うかもしれないが、米国内であればUberやその提携業者へと乗り換え、彼らを利用して贈り物を見つけ、手に入れ、そして配達するようにならないとは言いきれない。

しかもすべてスマートフォンの使い慣れたアプリから操作できるというのだから。これは非常に狭い範囲ではあるが、すでに現実化している。だが2016年には、オンデマンドビジネスの集中性による影響を実感し始める従来の業界―まずは配送業界―はますます増えるだろう。

Uberが良い例だ。A地点からB地点へと物を移動させるという作業をほぼ完璧に成し遂げる企業となった。人の移動から始まったという事実は、今後の展開においてはほとんど意味をなさない。独自ネットワークの効果的な利用を可能にするテクノロジーでビジネスが成り立っているUber、同社によるビジネス展開は今後の行方を示している。

もし私がFedExかUPSの立場にあったとしたら、きっと不安に感じるだろう、特に国内レベルで。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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