ソーシャルスタートアップのSolarHome、プレシリーズAで110万米ドルを調達——東南アジアで電力未供給の貧困家庭に太陽光発電を設置

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Photo credit: Pixabay

東南アジアでは、2,700万世帯近くの家庭に電力が供給されていない。SolarHome の会長 Greg Krasnov 氏によると、毎年これらの家庭は苦労して得た収入を灯油や使い捨て電池のほか、危険で最適とは言えない燃料に30億米ドルもの金額を費やしているという。

電力の供給が済んでいない家庭でも利用できる太陽光システムもあることはあるが、通常100米ドルの先行投資が必要となるが、農家、漁師、村でお店を営む人など農村部にいる人々はこのような貯えは持っていないと彼は付け加えた。

そこでシンガポールに拠点を置く SolarHome は、携帯電話にチャージするのと同様の手法でこういった人々が環境に優しく、信頼性の高い電力を少しずつでも得られる方法を考案した。同社は62万5,000米ドルのプレシリーズ A ラウンドを完了し、現在までに合計110万米ドル以上の資金を調達した。

仕組みはこうだ。まず、購入する人はパネル、バッテリー、電子機器を備えた太陽光システムを住居に設置するために小額を前払いする。使用するには1か月あたり平均3〜15米ドルの、毎日、毎週、または毎月のクレジットが必要で、スクラッチカードまたはモバイルマネーを使用して購入できる。システムの所有権は2年経つと自動的に「アンロック」され、購入者に移転する。

Krasnov 氏によると、SolarHome の都度払い(PAYG:pay-as-you-go)モデルは、月額85米ドル足らずの収入しかなく銀行融資を受けることができない農村部の家庭にとって、障壁が引き下がるものだという。

また、低品質、組立て困難で維持コストのかかる他の太陽光システムとは異なり、SolarHome は2年保証付きで「独自の価値を提案している」と彼は付け加えた。

社会貢献の創出

SolarHome は、Krasnov 氏がマネージングディレクターを務めているベンチャービルダー Forum Capital からスピンオフしたスタートアップの一つ。東南アジアでインクルーシブ・フィンテックと消費者向けファイナンスに特化している Forum が、50万米ドルのシード資金を同社に出資している。

Krasnov 氏は、Forum が2015年に再生可能エネルギー市場に参入する方法を模索していた際、SolarHome のアイデアを思いついたと述べている。リサーチの結果、アフリカの M-Kopa という PAYG の大手太陽光発電会社について知ることとなる。彼はこう回想した。

より深く検討を重ね、そのシステムに惚れ込みました。PAYG はマイクロファイナンスが可能な仕組みで、当社の中核事業であるファイナンシャル・インクルージョンに大変近いものです。また、こちらから優れた経営陣とシニアアドバイザーを配置できると確信していました。

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Photo credit: SolarHome

彼らは、会社がもたらす巨大な社会貢献にも後押しされたという。太陽光発電により、農村部の貧困家庭がケロシンによる健康被害を避けられるだけでなく、働く時間が長くなることでより多くの収入を得られ、子供に長期の教育を与えられるようになり、さらに、炭素排出量の削減にも貢献できる。

Krasnov 氏はこのように強調する。

SolarHome が米国国際開発庁の支援を受けて調査を実施したところ、現地で当社の事業に投資した1ドルが、約400%の利益となって社会に還元されると示されました。これは実に素晴らしい社会貢献です。

規模拡大

同社はミャンマーでの試験プログラムを完了しており、他の PAYG モデルの太陽光発電会社との競争が激化する中、今回調達した資金を東南アジアにおける規模拡大に活用する予定。競合には DlightAngaza などがおり、両社とも世界の発展途上市場に着目している企業だ。

SolarHome は2017年末の約2,000台から来年には1万台以上の設備増設を目指している。

当社は200万米ドルから300万米ドルの収益となると予想し、2018年末までに EBITDA がプラスに転じると想定しています。(Krasnov 氏)

今回のプレシリーズ A ラウンドは Uberis Capital がリードし、他にも Beenext Venture Capital や匿名の地域投資家が参加した。

Uberis Capital のマネージングパートナー Nicolas de Boisgrollier 氏は、SolarHome の見通しについて非常に強気だ。

PAYG モデルはアフリカ、インド、中南米の電力未供給エリアにおける自家発電では明らかなリーダー的モデルとなっています。数百万の家庭に電力を供給し、過去数年間で5億米ドル以上の投資をもたらしてきました。 大規模な未電化人口、代替クレジットスコアリングとモバイルマネーの台頭など、東南アジアでも同じような追い風を感じています。エネルギーの分配を試みる政府の認識が高まっていることも役立っています。

他の多くの再生可能エネルギー企業とは異なり、PAYG はスケール可能で補助金なしで高い収益を生むことができるので、このビジネスモデルは非常に魅力的です。

PAYG が出現する前の自家発電の種類について言えば、最も広く普及しているモデルは、再生可能エネルギーを利用したミニグリッドである。しかし Krasnov 氏によると、このモデルには潜在的な問題が多数あるという。まず、初期投資を回収するのに十分な収益を確保するため、システム設置前の段階で村に住むほとんどの人との契約が必要となる。つまり、プロジェクト立ち上げと高い顧客獲得コストが障壁であり、規模拡大も困難ということだ。やはり、村全体よりも一顧客を獲得する方がはるかに容易なのだ。

ミニグリッドはまた、高価で精密な機器を現場に設置する必要があり、高い維持費を伴う。Krasnov 氏は次のように説明した。

基本的には、開発資金や資金供給側の補助金なしでは、ミニグリッドモデルは経済的でなく実用性に欠けます。 PAYG はアフリカで非常に優れたビジネスモデルであることが証明されており、すでに何十万軒もの家庭がずっと短期間のうちにきちんと電力供給されるようになっているのです。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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