企業内通貨プラットフォーム開発ゼロビルバンク、福利厚生サービス大手ベネフィット・ワンと提携——トークンエコノミー確立の先駆けを目指す

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Image credit: ZEROBILLBANK

ZEROBILLBANK JAPAN(ゼロビルバンク・ジャパン、以下 ZBB と略す)は東京に拠点を置き、企業内通貨を発行・管理するプラットフォーム「ZBB CORE」や、企業内通貨を利活用するためのモバイルウォレット「ZBB WALLET」を開発・提供するスタートアップだ。

ZBB は12日、企業向け福利厚生サービス大手のベネフィト・ワン(東証:2412)と提携し、ZBB CORE とベネフィット・ワン のポイント制報奨制度「インセンティブポイント」のサービス連携を3月から開始することを明らかにした。インセンティブポイントは、優秀な成績を残した従業員等に企業がポイントを付与し、レストランの食事券や映画、観劇などのエンターテインメントチケット等、約2万点の商品と交換できるサービス(perk)だ。今回の両社の提携により、ZBB CORE とインセンティブポイントの両サービスを利用する企業では、従業員同士が企業内通貨を交換したり、サービスと交換したりできるようになる。

このしくみでは、ZBB の特徴を最大限に活用することで、報酬の付与プロセスも、そのトリガーとなる検出プロセスも、完全にデジタル化されるようだ。例えば、位置情報などを利用して定時に退社したことを検出したり、IoT 端末を活用して提出物が期限通りに提出されたことを検出したりすることで、対象従業員に当該企業の企業内通貨を自動的に発行することができる。

「ZBB CORE × インセンティブポイント」のビジネスモデル
Image credit: ZEROBILLBANK

ZBB が今回、このサービスを立ち上げた背景には、バリューチェーンの再定義とトークンエコノミーの隆盛という2つのキーワードがある。ビジネスに必要不可欠な3つのアセット——ヒト・モノ(カネ)・コト——のあり方は近年激しく変化している。これらの要素は相互にインターネットに接続されるようになり、サービスやプロダクトのアンバンドル化や、労働人口の減少に伴う人材不足や働き方改革の動きも手伝って、企業のバリューチェーンはもはや1社の中や、1受発注関係の中では完結できなくなっている。

前出した3つのアセットは企業の壁を超えて往来するようになり、競合を排除して市場での寡占や利潤を追求してきた、従来型の企業経営は進路変更を余儀なくされる。当然、企業の中で働く人々のモチベーションも変化していくだろう。ひょっとしたら、産業革命以来か、あるいは、資本経済有史以来の大きなパラダイムシフトになるかもしれない。今回 ZBB が発表したサービスが、すぐさまその答えになるわけではないが、新たな経済のしくみを作る上での足がかりになることは間違いないだろう。

Image credit: ZEROBILLBANK

ZBB では今後、デジタルトランフォーメーションを図ろうとする企業やコンソシーアム向けに、ZBB CORE や ZBB WALLET をはじめとする、SaaS ベースのデジタル資産管理ソリューション「DDAM(Distributed Digital Asset Management、分散型デジタル資産管理)」を展開していくとしている。年内は企業内通貨の発行ソリューションに特化し、将来は持株会など、従来機能をデジタルで代替するしくみづくりも視野に入れているようだ。

ZBB は2015年2月、IBM シンガポール出身の堀口純一氏によりイスラエル・テルアビブで創業(ZEROBILLBANK LTD. として)。2015年6月にサムライインキュベートから10万ドル、2016年6月までに匿名エンジェル複数から資金を調達している。その後 MUFG FinTech アクセラレータ第1期(現在の MUFG DIGITAL アクセラレータ)に採択され、MUFG 傘下のカブドットコム証券向けに、残業を減らすことを目的とした、ブロックチェーンベースの企業コイン「OOIRI」をリリースした。2017年には「相鉄×高島屋アクセラレーションプログラム」に採択、n 対 n  の商取引・ビジネスを自動化する「ZEROBILL-Contract」を公開している。

2016年8月、MUFG FinTech アクセラレータ第1期デモデイに登壇する堀口純一氏
Image credit: Masaru Ikeda

【補足】

企業内通貨と表現するか、企業内トークンと表現するかについては議論の余地があります。仮想通貨においては、取引所で取り扱われ、コミュニティ横断的に流通し価値が認知されることが、トークンではない通貨という定義があります(この定義は唯一ではなく、解釈の主体により意見は異なります)。本稿においては、マーケットプレイス上で異なる企業のリワードが価値交換できる可能性をかんがみ、企業内通貨と表現しました。この表現は、市場の動向やコミュニティの認知に応じて、将来、変更する場合があります。

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