同世代をターゲットにした事業を設立、中国の現状に挑むミレニアル起業家たち

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1990年から1999年の10年間は中国の歴史において重要な部分を占める。1986年から1990年まで行われた中国の「開放政策」を通して市場経済と民間企業部門が生まれた。90年代に生まれた世代(九零后=ジョウリンホオと呼ばれる)の多くの人々は、それまでの多くの激動の時代の後に、そして中国で一人っ子政策が定着した時代の後に生まれ、考えの開かれた、自信ある青年たちに育った。

LB Investment China のマネージングパートナー Tony Park 氏は TechNode(動点科技)に次のように語った

90年代に生まれた人々は、安定した政治環境のもとで育ち、急速に成長する中国経済の恩恵を享受しました。その前の70年代、80年代に生まれた世代と違い、彼らは何ら大きな社会変革を経験したことがありません。そのため、この世代は非常に自信に満ちているのです。

90年代生まれの若者はテクノロジーに詳しいと言われる。というのも、彼らこそ子ども時代からインターネットにアクセスしていた最初の世代だからだ。Baidu(百度)によれば、彼らが初めてインターセットを使った時の平均年齢は7.53歳で、2014年には彼らの1日のインターネット使用時間の平均は11.45時間である。CITICのデータによれば、彼らは2015年に中国のインターネットユーザの26%を占めていたという。

Alibaba の e コマースプラットフォーム、Taobao(淘宝)やTmall(天猫)の主な消費者となったのも90年代生まれの世代である。彼らのうち86.8%が衣服やバッグの費用をオンライン購入で抑えている。Tmall Global(天猫国際)と CBNData の報告によると、若年購買層(1988年以降の生まれ)は、今やTmall Global 上の全消費のほぼ半分を占めているということだ。

現在90年代生まれの世代のうち最も年長の人々、つまり1990年生まれの人々は28歳であり、既にキャリアを始めている歳である。中には自らのビジネスを始めた者もいる。90年代生まれの世代には多くの成功した起業家がいる。例えば、3大陸に進出した自転車レンタル企業 Ofo(小黄車)の創業者で CEO の Dai Wei(戴威)氏、中国の大都市に急速に進出したフレーバーティーの企業 Heekcaa の創業者で CEO の Nie Yunchen(聶雲宸)氏、Baidu の史上最年少のバイスプレジデントである25歳の Li Jing(李靖)氏などだ。

我々は上海で活躍する3人の90年代生まれの起業家にインタビューし、彼らがいかにして独自の新鮮でクリエイティブなアイデアによって従来の市場にディスラプションを起こしているかを探った。

中国で外国ブランドに挑む

Zedot(甯承)チームの共同創業者6人は全員、90年代後生まれで上海人だ。
Image Credit: TechNode

ゲーマー用メガネのブランド Zedot(甯承)の創業者、Jiang Jun(江俊)氏は昔、Tencent(騰訊)の売れ行きナンバーワンのゲーム、Honour of Kings(王者栄耀)で2ヶ月丸々毎日10時間プレイしたことがあった。彼の目は赤くなりゴロゴロしたが、青い光を遮断するメガネがそうした症状を和らげてくれた。同じようなメガネを作るブランドがいろいろとたくさんあることが分かったが、それらは主にドイツ、アメリカ、日本製のものだった。そして、彼はこういったメガネのデザインがそれほどクールではないことに驚いた。

一体こうしたメガネのせいで私みたいなカッコイイ男がブサイクな男に見えてしまっていいものか? 私はそれに耐えられなかったんです。私はもっと良いデザインを作れるに違いないと思いました。(Jiang 氏)

Jiang Jun 氏は、メガネ業を20年間続けてきた家族の出身で、業界についてよく知っていた。上海人である彼は裕福な家庭の出で、中国の代表的メディア Diyi Caijing(第一財経)のマーケットプランナーとして月収2万人民元(3,010米ドル)を稼いでいた。後に彼に加わることになる6人の友人は、3万人民元(4,516米ドル)の月収を手放して、彼のローンチした企業に加わった。1人を除いて、彼らは皆90年代生まれである。

上海人であれば、一般的に言って、家、車を所有していて、生活状況はそれほど悪くないものです。安定はしていますが、誰かのために働きたいというわけではなく、何らかのことを成し遂げたいという思いでしょう。(Jiang 氏)

ゲーム市場をターゲットにして、Jiang 氏のチームはデジタル機器を見つめることによる目の疲れを緩和するメガネの開発を目指した。しかし、彼は全く新しいデザインを望んでいたので、メガネについて一切知識のないデザイナーに設計に参加してほしいと思っていた。

Zedot のゲーマー用メガネ
Image Credit: Zedot

彼は Reddot デザイン賞を受賞したデザイナーを見つけ、このデザイナーが Zedot のメガネをデザインした。彼らのメガネにはレンズの近くに水を溜める小さな空間があり、これによりゲーマーは長時間ゲームをしても目が乾かないようにできる。

彼らの市場は大きい。Newzoo の2016年のデータによると、5億6,000万人近くのゲーマーが中国にはいて、その36%はゲームにお金を費やしているという。

自社のメガネを399人民元で売るために、Jiang 氏は2つのやり方でゲームプラットフォームと協力している。1つには、一流のコンピュータサプライ販売店 Taidu をスタートさせた。Taidu は未来型のコンピュータ備品で知られている。この販売店は独占販売店なので、Jiang 氏は製品開発に集中することができる。もう1つには、自社のメガネとその効用について認知度を高めようと、ゲーム企業やゲームのライブストリーミングを扱う企業などマーケティングチャネルを見つけている。

現在のところ、中国の消費者市場を握っているのはたいてい国際ブランドで、中国のブランド製品というのは多くありません。インターネットから食品、飲料に至るいかなる産業部門であれ、より多くの中国人が企業を始めるように鼓舞したいと思っています。どの従来のビジネスも90年代生まれの世代の新しい考え方を必要としているのです。(Jiang 氏)

同氏はまた、ちょうど彼がそうだったように、現在何らかの企業に勤めていて、今後自らのビジネスを始める準備をしている人たちにも次のようなアドバイスを送った。

良い起業家になるためには、まず今の会社で良い上司、良い同僚でないといけません。その後自分のやりたいことを始めるのです。もし今の会社での成果が芳しくないとして、そのまま自分のビジネスを始めても、多くの問題が生まれるでしょう。中国の諺に、『家の中を整理することができない者が、どうしてその他の世界について考えることができようか』という意味のものがあります。同僚と上司皆に好かれ、尊敬されていれば、自分のビジネスをスタートできるでしょう。なぜなら、その人脈の中に多くの好機があり、彼らがサポートしてくれるからです。(Jiang 氏)

物より体験

Global Extreme Player Club(全球極限玩家倶楽部)の中国人客が、ウェイトレスネス体験トレーニングを受けている
Image credit: Global Extreme Player Club

中国人観光客が、3日間軍事訓練を受けるためだけに1万米ドル以上も海外で使っているなどと想像できるだろうか? これこそ27歳の Prescilla Li(李奕霏)氏の設立したスタートアップにとっては重大なビジネスである。

The Global Extreme Players Club(全球極限玩家倶楽部)の CEO で共同創業者の Prescilla Li 氏は言う。

中国人旅行客は、旅行の目的地不足を経験しています。北極、南極への遠征、車で海外を旅行すること、ヨーロッパで芸術品を購入することのほかに、何を想像できるでしょうか?

Global Extreme Players Club(全球極限玩家倶楽部)の CEO Prescilla Li(李奕霏)氏
Image Credit: Global Extreme Players Club

2015年8月にスタートしたこの会社は旅行スタートアップであり、エクストリームスポーツ、海、空、陸での軍事体験を専門としている。彼らの顧客は1万米ドル以上を惜しみなく使って3日から3ヶ月の間旅行し、グローバルな軍事体験や狩り、エクストリームスポーツ、飛行を行い、自分の度胸試しをしたり限界に挑戦したりできる。

彼女によると、顧客は90年生まれからより年長の人までで、大半は友人と、時折家族のメンバーと共にやってくるという。彼らは WeChat Moments(微信朋友圏)で自慢したがるようなタイプの人たちではなく、自分の内輪で体験をシェアしたいような人たちだ。例えば、投資家、富裕層の起業家たちなどだ。今最も人気の目的地はロシアとウクライナで、ここで顧客は軍艦、飛行機、潜水艦を操縦できる。

中国人には軍事文化に対する理想と憧れが確実にあります。以前私たちのお客さんの中に、若い起業家で、家族の不幸を経験した後人生に向き合えないという方がいました。彼を私たちの旅行の1つに連れて行くと、日に日に彼が変わって行くのがわかりました。そしてついに大きなブレイクスルーが来たのです。つまり私たち人間は、その旅行で苦しい状況に直面すると、もはや悲観的ではいられなくなり、そのことが私たちを奮い立たせてくれるのです。(Li 氏)

北京生まれの Prescilla Li 氏は、かつて普通の旅行ツアーガイドで、これまでは顧客をゴルフや釣り、観光に案内していた。2年その仕事を続けて、彼女は、顧客がもっと冒険的なものを特別に求めていることに気づいた。

20ヶ国以上を旅し、自分のビジネスを開こうか長く考え続けた後、Prescilla 氏と、エクストリームスポーツを愛する彼女の共同創業者はビジネスを始めることを決心した。

私たちの最初の目的地はメキシコでした。初めての事業を始めるに当たって、まずは現地の人々と一緒に調査をし、最も価値ある冒険で可能なものは何かを彼らに尋ねました。そして、現地の軍隊に近づきました。彼らと契約を結んだ後、私たちの最初の旅行グループを彼らが受け入れてくれました。(Li 氏)

同社はフランス企業とサービス提携を結び、今ではフランス人旅行客も同社のサービスを利用して同じ体験を楽しむことができるようになっている。

男性優位に挑む

学位を海外で取得した後に帰国する中国人(「海帰」と呼ばれ、これは同じ発音の「海亀」との言葉遊びである)の数は急速に増加している。中国の教育部(日本の文科省に相当)によれば、海外の大学で学んだ250万人の中国人学生がこれまで中国に戻り、2015年には、海外で学位を取得して帰国した者の76.4%が中国でビジネスを始めたという。

トロント大学で数学と統計学の学位を取得した後、Angela Wang(王蕾)氏は中国に帰国し、Micro Capital(微特融優)を共同設立した。Micro Capital は国境を越えたベンチャー投資プラットフォームで、ビッグデータとその関連業種における先駆的プロジェクトに対し、投資、サポートを行っている。同社は Wuxi Bing Jian Technology(無錫冰鑑科技) などに対し、目を見張る投資実績を見せ、6倍のROIを達成した。

RiverPay の CFO で創業者の Angela Wang(王蕾)氏
Image Credit: RiverPay

RiverPay の CFO で創業者の Angela Wang 氏は TechNode に次のように語った。

私たちは巨額の投資リターンを得ました。しかし、起業家たちを支援するだけでは私には物足りなかったのです。彼らが大好きで憧れており、自分もその1人になりたいと思いました。だから自分でスタートアップを立ち上げようと決意したのです。

数学に熱心な彼女は、北米の小売店舗市場を見出した。アメリカへの中国人旅行客が年々増える中、海外の小売店舗は中国語のモバイル決済手段を提供する必要が出てきている。旅行観光業担当部局(NTTO)のまとめた報告書によると、2016年には297万人もの中国人がアメリカに旅行し、総額330億米ドルを使ったという。

北米の決済方式は、非現金決済社会である中国社会よりもはるかに遅れています。私たちのターゲットは、中国人を主な消費者層とする北米企業でした。彼らは中国語のモバイル決済手段を提供できないという弱点を抱えていました。

ベンチャーキャピタルをやるのは簡単です、売り込みの電話もしなくていいのですから。良い企業は自然と集まってきます。しかしベンチャーキャピタルをやるのは若い人たちにとって良いことではありません。若いとき楽をするべきではなく、苦労すべきです。起業はベンチャーキャピタルをやるよりずっと大変な仕事です。起業は変革を起こすことであり、自分がその変革を起こしているのですから。だから、起業は大変ですが、面白いのです。(Wang 氏)

RiverPay は既にアメリカとカナダの様々な都市に着実に進出し、現在北米の数千の高級店と協力している。例えば、世界有数の高級品チェーン Holt Renfrew、カナダの高級男性服ブランド Harry Rosen、Tiffany、Van Cleef & Arpels、Chloe、Balenciaga, Givenchy、Porsche、BMW、UPS といった有名ブランドである。RiverPay は現在、自社の Alipay(支付宝)、WeChatPay(微信支付)決済方式を利用する店からサービス料を取ることで利益を得ている。

私たちは、ロサンゼルス、ニューヨーク5番街、トロント、バンクーバー、サイパン、ラスベガス、ハワイを含めて、20以上の都市でビジネス開発チームを雇っています。

RiverPay の強みは、彼らが独自に開発した、主流ビジネス ERP システムとドッキングできるレジ統合技術にあり、これは現在特許出願中である。中国語のモバイル決済手段を現地で提供するに当たり、同社は Alipay や WeChatPay などの決済ネットワークだけでなく、アメリカやカナダの規制機関の遵守要件にも従っている。また、独自のビッグデータ業界チェーンも作り、正確なマーケティングサービスを北米の各企業に提供している。

今後5年間で北米の決済業界を完全に覆し、中国の国際決済の現状を変革しようと望んでいます。かつてはテクノロジーの話になると、『アメリカからのコピー』ということをよく言いました。今では私たちは『中国からのコピー』を行っているのです。

Wang 氏はまた、男性の起業家らがフィンテックと投資ビジネスの分野で優勢な傾向も変えたいと望んでいる。

フィンテックとベンチャーキャピタルの分野ではもっと多くの女性の CEO リーダーシップが必要です。今のところ80%を男性が支配しています。より多くの女性が必要なのです。男性は論理的である傾向がある一方、女性は細かいことに対してより注意を払うことが多いです。女性の重役は、従業員の感情によち注意を向ける傾向があり、仕事志向よりも人間志向の雰囲気を重視します。

90年代生まれの世代が中国の未来の原動力に

先行する世代に比べてより裕福な環境で育った90年代生まれの世代は、新しい消費者の考え方を備えており、商品とサービスに対して、より良いデザイン、新たな体験、利便性などの価値を求めている。彼らはまた、従来の伝統的な業界で働いた経験があり、自らの生活でも市場でも現状を揺るがせたいという気持ちを持っている。

国連のデータによると、中国で90年代生まれの人は2050年までには全体の人口の31.3%に達するとされている。つまり、この世代こそ、中国の未来の発展と消費の原動力になるということだ。この世代にぜひこれからも注目していただきたい。そして、彼らによる挑戦を受ける心構えをしていただきたい。彼らは、未来の顧客、未来の従業員、さらには未来の上司としてあなたに関係する人たちかもしれないからだ。

【via Technode】 @technodechina

【原文】