NASDAQ上場を果たした中国のソーシャルECプラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」、驚くべき急成長の理由と背景に迫る(後編)

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Image credit: NASDAQ

前編からの続き)

Alibaba(阿里巴巴)から JD(京東)まで中国では大手 e コマースに事欠かない。同国の e コマース市場は非常に集約されているが、適切な顧客グループに適切なソリューションを提供できれば、スタートアップがこの市場に風穴を開けることも不可能ではない。

中国のソーシャルeコマースプラットフォーム「Pinduoduo(拼多多)」はそれを証明して見せた。上海を拠点とする同社はアメリカの株式市場に16億米ドルという巨額の IPO を申請した。これは今年最大級の取引である。同社を取り巻く興奮は急速に盛り上がり、これにより競争の激しい中国 e コマース市場で、同社が3年間でかなりの成功を成し遂げることとなった。

Pinduoduo の歴史と主なマイルストーン

2015年9月に設立された Pinduoduo は、元 Google 社員であり e コマースの初期の検索アルゴリズムにも取り組んだことがある Colin Huang(黄峥)氏の4つ目のスタートアップである。同氏の以前のスタートアップには家電eコマースサイト Ouku.com(欧酷)や、eコマースプラットフォームのマーケティングエージェントサービス Leqi(楽騏)、そして WeChat(微信)を基礎としたロールプレイングゲーム企業がある。

eコマースとゲーム業界の経験を得て、eコマースとゲーム・ソーシャルのそれぞれで優位を占める中国インターネットの大手2社 Alibaba(阿里巴巴)と Tencent(騰訊)の両社の成功の秘訣を融合させるべく、Huang 氏は Pinduoduo を設立した。Huang 氏は Bloomberg に次のように語った

彼らは、他社がどうやって利益を上げているのか本当に分かっていなかったのです。

この2つの業界が上手く融合するという点について、Huang 氏は正しかったようだ。Pinduoduo の年間 GMV(総流通総額)は同社の始まりからおよそ2年後の2017年に1,000億人民元(1.6兆円相当)を超えた。そこに届くまでに Taobao は5年、VIP.com は8年、JD は10年を要した。Pinduoduo は現在3億4,360万人のアクティブな購入者がいて、年間の GMV は2,621億人民元(4.2兆円相当)であるとしている。

大きなターニングポイントは2017年の第3四半期、週間アクティブ率、普及率、そして Pinduoduo アプリの起動率のすべてが JD のものを上回ったときだった。Jiguang(極光)のデータによると、前年と比べて同社は1,000%の年次成長率を達成した

急勾配を描く成長は財政的な支援を呼び込んだ。2015年、Huang 氏は2番目のスタートアップ Leqi のチームと共に、フルーツのソーシャルコマースプラットフォーム Pinhaohuo(拼好貨)をローンチした。ゲームのスタートアップは Pinduoduo の母体となった。

Pinduoduo が2016年3月に IDG とLightspeed China(光速中国)から非公開のAラウンドを受けた4ヶ月後、同社は1億1,000億米ドル以上のシリーズBの融資を Baoyan Partners、New Horizon Capital(新天域資本)、Tencent などから獲得した。2018年4月には、Pinduoduo は30億米ドルを調達する新たなラウンドを完了させ、150億米ドル近い評価を受けた。Pinduoduo は WeChat をベースとしたエコシステムであるため、Tencent は再び投資者としてラウンドに参加した

PinduoduoとPinhaohuo の間の歴史のため、そしてソーシャル eコマース分野の2大プレーヤーであったため、この2社は合併し支配的な1社となった。

中国の新たな偽物天国?

Huang 氏は株主への手紙で次のように述べた。

目を閉じて Pinduoduo の次のステージを描いてみるならば、それはインテリジェントエージェントの分散型ネットワークで駆動する、「Costco」と「Disneyland」を合わせたものになるでしょう。

Huang 氏の喩えは「金額に見合った価値」とエンターテインメントの融合という風に解釈されるが、はたして Pinduoduo が設立者の期待に添えるのかどうか、もしくはどの程度添えるのだろうかと疑問に思っている者は多い。

Pinduoduo は商品の価格を下げる複数のチャンネルを持っていると主張しているが、品質と偽物への増加する苦情は安かろう悪かろうの可能性への懸念をまだ払拭できていない。中国の e コマース研究センター(電子商務研究中心)が発表した「2017年度主要 e コマースプラットフォームの国内ユーザ満足度調査」によれば、Pinduoduo 上の苦情の率は17.87%であり、ユーザ満足度は星1つに過ぎなかった。苦情の主な対象となった問題は、低品質、遅配、紛らわしい広告などである。

国内で増大する苦情に加えて、この中国のアプリはアメリカのIPOを申請した少し後に商標権侵害の訴訟という打撃を受けた。Alibaba によれば、自身のプラットフォームから偽造品を排除する Alibaba や JD の取り組みとともに、偽造品は Pinduoduo や Weishang(微商)のような新興の e コマースプラットフォームに流れ込んでいるとのことだ。

上場への準備を進める Pinduoduo は e コマースの大手に倣ってプラットフォームの浄化を進めている。同社の2017年消費者権利保護報告書によると、プラットフォームの偽造品販売業者の95%にあたる1,070万点の問題がある掲載品を取り下げ、4,000万の疑わしい外部リンクをブロックしたとのことだ。同社は販売後のトラブルに対処するために1億5,000万人民元(24.3億円相当)の基金を設けた。

しかし規制の強化は Pinduoduo とそのプラットフォーム上の業者との間で、より多くの摩擦が発生する原因となる。6月には、Pinduoduo で商売をする14名の店主が同社のオフィスビルの下で抗議し、店主の権利を侵害する不適切な品質チェックを Pinduoduo が行っていると主張した。同社の設立者Huang氏は、Pinduoduo の店主への決定と処罰は公平公正なものであると強調した

Pinduoduo の価値の提案の確実性を疑問視する者も多くいる。リサーチ企業 86 Research(八六証券研究)は、次のように述べている。

私たちが観察したところ、Pinduoduo でのショッピングが非常に楽しいと感じているのは少数のユーザだけでした。その楽しみは非常に低い価格とWeChat ユーザ間の交流のためであると言えます。

IPO とその先

induoduo(拼多多)
Image credit: Pinduoduo(拼多多)

Pinduoduo は7月26日に NASDAQ で公開され、16億米ドル以上を調達し、600億米ドルの価値が付いた。しかしながら、株主はまだ同社の基礎的な部分に懸念を抱いているだろう。

財政的には、同社はまだ赤字である。Pinduoduo は2016年と2017年にそれぞれ2億9,200万人民元(47.3億円相当)と5億2,510万人民元(85.1億円相当)の純損失を蒙っている。今年の第1四半期では純損失は2億100万人民元(32.6億円相当)に上った。ブランディングと広告への投資のため、純損失は拡大するものと思われる。Pingduoduo の第1四半期の収入12億人民元(194.5億円相当)の88.4%以上は、マーケティングに費やされた。これは困難なトラフィック獲得の兆候として解釈することもできるかもしれない。

最も典型的な Pinduoduo のユーザは、下級の都市に住み価格に敏感な女性である。販売業者らはこのグループに受けが良い低価格で販売している。だが、こういったユーザを引きつけておくこと、そして成長の勢いを維持することは、品質への苦情が増えていることを考えれば、大きな難問だ。

潜在的な GMV の減速が暗示されており、リテンションレートは Pinduoduo にとっての難問です。Pinduoduo はユーザのデモグラフィックやブランドイメージのため、マーケットプレイスをプレミア商品のものへとアップグレードするには困難が待ち受けていることでしょう。(86 Research)

【原文】

【via Technode】

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