東大発スタートアップのソナス、シリーズAでグローバル・ブレインとANRIから3.5億円を調達——省電力マルチホップ無線通信技術を開発

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左から:熊倉次郎氏(グローバル・ブレイン ジェネラルパートナー)、木塚健太氏(グローバル・ブレイン プリンシパル)、百合本安彦氏(グローバル・ブレイン CEO)、大原壮太郎氏(ソナス CEO)、鈴木誠氏(ソナス CTO)
Image credit: Global Brain / Sonas

IoT 向け無線通信技術「UNISONet」を開発するソナスは9日、シリーズ A ラウンドでグローバル・ブレインと ANRI から総額3.5億円を調達したと発表した。ANRI からは、シードラウンド(2017年実施、具体的な時期や調達額は不明)での調達に続くフォローオンとなる。ソナスでは今回調達した資金を使って人員の拡充を行う。

ソナスは2015年設立、2017年営業開始の無線通信技術を開発するスタートアップ。メンバーの多くは、先進的なモバイルネットワークやセンサーネットワークを研究する東京大学森川研究室(担当教員は森川博之教授)の出身だ。

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マルチホップの無線通信ネットワークは、そのネットワーク構成(トポロジー)からスター型とメッシュ型に大別される。Sigfox、LoRaWAN、Zigbee、BLE(Bluetooth Low Energy)などは、各通信ノードとハブが通信するスター型だが、通信速度の速さと通信範囲の広さはトレードオフの関係にある。一方でメッシュ型の場合、通信環境によってデータの配信経路(ルーティング)が変化するため、ノード間での時刻同期をとったり、省電力設計にしたりするのが難しい。

ソナスの開発した UNISONet は、スター型とメッシュ型の〝いいとこ取り〟が可能な技術だ。データの同時送信フラッディングと細粒度スケジューリングとを組み合わせることで、高機能で高性能な省電力マルチホップネットワークを実現する。

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Sonas x01(左)と Sonas xs01(右)。両者の写真縮尺は異なります。
Image credit: Sonas

既存の通信技術や電源が確保しにくい環境において、複数の通信ノード間で同一タイミングでの値が取得可能であることから、現時点のユースケースとしては、加速度センサーを使った建築物や構造物の検査や健全性判断に使われることが多いようだ。UNISONet のしくみは、三井住友建設が長崎市の軍艦島で実施するヘルスモニタリングシステムの PoC に採用されているほか、複数の実橋梁のモニタリングにも使われていて、建築物の安全検査の効率化・省力化への応用が期待される。

また、関西電力系の通信会社ケイ・オプティコムと協業しており、発電所機器やモータ軸受のヘルスチェックなど、電源や通信経路が確保しにくい環境でのモニタリングにも活用される予定。異常兆候が事前に把握しやすくなり、問題の発生を予防したり定期チェックを代替できたりするようになる。

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ソナスのロードマップ
Image credit: Sonas

ソナスの UNISONet 技術は独自開発の無線通信モジュールに集約されているが、企業ユーザがより利用しやすくするため、高精度の加速度センサー、省電力センサー、プロセッサ、ストレージが一体となったセンサーデバイス「sonas x01」「sonas xs01」、Windows ソフトウェアやデータを集積・分析できるクラウドを合わせたパッケージを開発してきた。このパッケージは、これまでソナスと協力関係にある企業を中心に販売導入されてきたが、今回の資金調達を受けて販売が本格化する予定だ。国内での拡販に加え、アメリカや中国などへの展開も視野に入れている。

ソナスはこれまでに、東京都創業助成事業の助成を受けているほか、東京大学協創プラットフォームの第1回東大 IPC 起業支援プログラム総務省 SCOPE(戦略的情報通信研究開発推進事業)、特許庁 IPAS(知財アクセラレーションプログラム)に採択されている。

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