シェアスクーター戦争激化、「Bird」が7,500万ドルの追加調達と競合「Circ」買収発表

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The latest Bird escooter, the Bird Two.
Image Credit: Bird

電動スクータースタートアップ「Bird」はシリーズDラウンドの追加調達7,500万ドルを加え、総額3億5,000万ドルを調達(2019年11月の2億7,500万ドルから増加)した。

さらに1月27日、ベルリンとサンタモニカを拠点とするBirdは「Circ(前進Flash)」を非公開額で買収したと発表。ヨーロッパを拠点とするCircが抱える300名超の従業員が、「合理化された、持続可能で安全な輸送を提供する」というBirdのミッションに参加することになる。

「3年ほど前にBirdを設立しました。なぜなら現状を変え、世界中の人々を危険にさらす交通と環境汚染問題に立ち向かうための、変革的な姿勢を取る必要があったためです。ミッションをさらに加速させるため、欧州市場をリードするCircを買収できたことに興奮しています。都市単位を顧客として扱い、成長よりも収益性を優先するという考え方に焦点を合わせています。12か月以上前、成長から収益性(ユニットエコノミクス成立)に焦点を移しました」(Birdの創設者兼CEOのTravis VanderZanden氏)。

買収に先立き、ベルリンに拠点を置くCircは2019年1月のシリーズAラウンドで5,500万ユーロ(6,057万ドル)を獲得し、資金面の困難を乗り越えている。また、昨年11月のTechCrunchの報道によると、効率性と優秀な社員採用を優先する組織にするため、約50人の従業員(従業員の10%)を解雇したという。当時CEOのLukasz Gadowski氏は食品配達サービスDelivery Heroを設立している。同氏によると、リストラ要因として「季節性」と「運用学習」を挙げている。

Circは2019年にサービス展開国の約3分の1(14か国中5か国)の都市でユニットエコノミクスが改善したと主張し、年内にはグループ全体で収益性の高いユニットエコノミクスを達成すると予想。加えて、2019年後半の時点でCircが保有するスクーターは、アラブ首長国連邦に加えて43を超える都市および12か国の300万登録ユーザーに対し、1,000万のライドを提供した。

「都市との深いパートナーシップと最先端の技術により、私たちはヨーロッパのマイクロモビリティ市場のリーダーとしての地位を確立しました」と、Gadowski氏は1月27日に発表されたプレスリリースで述べている。 「Birdの合弁企業として、安全・手頃に利用可能な、便利で持続可能な輸送手段を提供するという、欧州市場でのミッションを大きく加速することができます」と語る。

Birdの既存投資家であり、今回の合弁会社に参加する投資家には、Target Global、Team Europe、Idinvest Partners、Signals Venture Capitalが含まれる。

Circの買収に続き、Birdは「Scoot Networks」を約2500万ドルで買収してサンフランシスコでのサービス運営を可能にした。 また最近、Birdは業界をリードするほどのバッテリー寿命を備えた1,299ドルのスクーター「Bird Two」を発表。最大2人の乗車を可能とするパッド入りシートを備えたミニチュアバイク「Bird Cruiser」や、Cruiserを改造した「Scoot Moped」を発表している。これら機種は毎月25ドルで選択した都市で無制限にスクーターに乗ることができるBirdのレンタルプログラム立ち上げ後に発表された。

Birdの顧客体験は競合他社である「Lime」「Spin」「Skip」とほぼ同じ。アプリを使用してユーザーはスクーターを1ドルでレンタルし、都市に応じて15セントから20セントの1分あたりの料金がかかる。移動が終了すると車輪がロックされ、ギグエコノミーワーカーのチームがスクーターを回収して充電、その後で再度展開される。 (各Birdトリップからの収益の半分は、こうした充電作業に充てられる)

実際、Birdはシンプルなビジネスモデルでありながら、スクーターネットワークを120以上の都市に拡大、創業以来たった2年間で1,000万人以上へ輸送サービスを提供。ただ、欠点も発生している。2018年11月現在、Birdは50万ドル近くの罰金と裁判費用を支払い、何百ものスクーターを押収している。また、2019年3月には年次パフォーマンス・レビュープロセスの一環として、従業員の4%から5%を解雇している。

利益を高めるため、Birdは5月にライドシェアリング事業を欧米以外の起業家に委託する可能性にも言及している。Bird Canadaのようなフランチャイジー企業は、車両とスタッフ管理を簡素化するために設計されたカスタムソフトウェアソリューションを事前インストールされたスクーター「BirdBrain」を購入。フランチャイジーは関連するメンテナンス費用を負担するが、Birdの運用チームから技術サポートとアドバイスを受け、引き換えに各トリップ収入の20%を受け取る。

The Vergeや他のメディアが指摘しているように、Birdの分散型モデルへの転換は、厳しい業界で収益性を達成するのに苦労していることから始まる。Quartzが発行した最近巻では、ケンタッキー州ルイビルで運営されているBirdスクーターが85マイルを超える平均70回のトリップを、バッテリー切れまで23日間ある状態で完了したと指摘。加えて、Birdのスクーターが損益分岐点に達するには少なくとも6か月は必要であると述べている。

The Informationによると、Birdは2019年第1四半期に1億ドル近くの損失を計上し、総収入は前四半期の4,000万ドルから1,500万ドルに減少。7月には投資家に対して、1回の乗車当たり平均3.65ドル、粗利率が19%であると伝え、スクーター1台当たりのコストを551ドルから360ドルに削減しようとしていると伝えている。

Birdには無数の競争相手がいるが、主なライバルはこれまでに7億6500万ドルを調達したLimeが該当するだろう。

サンフランシスコに本拠を置くSpinは、Fordによって昨年1億ドルで買収された。一方、Jump Bikeは昨年1月に1,000万ドルを集め4月にUberに買収されて電動スクーター事業を拡大している。 Y Combinatorが支援するSkipは、サンディエゴ、オースティン、ワシントンD.C.、サンフランシスコに拠点を確立するために3,100万ドルを調達。

オランダのスタートアップDottは最近、電動スクーターとバイク数を増やすために2,300万ドルを調達している。スウェーデンのVoiは5,000万ドルを調達し、電動スクーターをヨーロッパのより多くの都市に拡大した。そして、北京に拠点を置くOfoは、自転車とスクーターを250以上の都市と20か国に展開するために22億ドル以上を費やしている。

とはいえ、シェアスクーターおよびバイクを含むマイクロモビリティ領域は冷え込んでいる。Pitchbookデータのクオーツ分析によると、今四半期には7つの取引を通じて7億9,500万ドルを調達。昨年9月の時点では33件の取引で昨年13億ドルを調達していることがわかる。これは、2018年の第1-3四半期で48件の取引を通じて48億ドルの調達額と比較して、調達額が約73%、取引量が31%減少していることを意味する。

Limeは投資家からの圧力もあり、今月初めに100人の従業員を解雇し、今年収益性を上げることを目標に12の市場を去ると発表している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

 

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