Monozukuri Hardware Cupでファイナリスト8チームがピッチ登壇—独立型交流電池を開発するAC Biodeらが、米本家イベント決勝参加権を獲得

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Kyoto Makers Garage を運営する Monozukuri Ventures は13日、京都市、京都高度技術研究所、京都リサーチパークとの共催で Monozukuri Hardware Cup 2020 を開催した。ファイナリストに選出された8チームがピッチに登壇し、独立型交流電池を開発する AC Biode が優勝した。

このイベントは「世界を舞台に活躍する日本のモノづくりスタートアップ企業の登竜門」と位置付けられるもので、上位3位入賞チームには、5月にアメリカ・ピッツバーグで開催される「AlphaLab Gear Hardware Cup Final 2020」への出場権または出展権が与えられ、アメリカ6都市と、中国や西アフリカから選出されたチームと共に、優勝賞金5万ドルを賭けてピッチで激戦を交わすことになる。

開会の辞を述べる、Darma Tech Labs 代表取締役 の牧野成将氏。
Image credit: Masaru Ikeda

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京都市長の門川大作氏も応援に駆けつけた。
Image credit: Masaru Ikeda

Monozukuri Hardware Cup 2020 で審査員を務めたのは次の方々だ。

  • Allen Miner 氏(サンブリッジ グループ CEO)
  • Oscar Kneppers 氏(Rockstart Founder)
  • 伊瀬禎宣氏(電通イノベーションイニシアティブ エグゼクティブ・イノベーション・ディレクター)

【1位】AC Biode(京都/ルクセンブルク)

(副賞:「AlphaLab Gear Hardware Cup Final 2020」への旅費として30万円)

AC Biode は、ドローン、モビリティ、再生可能エネルギーの蓄電用に世界初の独立型交流電池を開発。中間電極(Biode)を作ることで、直列接続・並列接続にも対応可能。電池そのものは既存材料・既存製造工程を応用しているため、リチウムイオン電池のみならず、あらゆる電池に適用が可能(空気電池を除く)。粒子加速器に使われている電気回路を応用しており、この点で特許を申請している。産業用ドローンのパイロット試験から着手し、電動バイクなどへと用途を拡大していく計画だ。日欧から40万ポンドを調達中。

【2位】Smart-Com by iXOS(東京)

(副賞:「AlphaLab Gear Hardware Cup Final 2020」への旅費として20万円)

iXOS(イーコス)は、AI スマートディスプレイ「スマコン」を開発。7インチ A4 サイズ、奥行30mm、重さ1.6キロのこのデバイスには、Blutooth、Wi-Fi、USB、ライン出力が備えられ、Android ベースで動作し、音声認識と OpenAPI に対応する。スーパートゥイーター、フラットパネルスピーカー、ウーハーが内蔵され、低周波から高周波の音を 3D で再生できるのが特徴。特に高周波の音は人間の耳には聴こえないが、それを身体で感じることができるのでリラックス効果などが得られるという。

【3位】Rabbit Vision by CrossEdgeLab(滋賀)

(副賞:「AlphaLab Gear Hardware Cup Final 2020」への旅費として10万円)

高齢化社会を迎える中で高齢者を見守るためのテクノロジーが求められている。単純センサーを使った方法では誤認識の可能性があり、また、カメラを使えばプライバシーの問題があり、また、サーモグラフィーでは死角が生まれる。CrossEdgeLab が開発した 全方位サーモグラフィー「Rabbit Vision」は、ベットの上の天井に使えることで部屋全体を見守ることができる。見守り対象者の体温を検知し、AI により座っているか、寝ているか、転倒したかなどを検出する。睡眠の深さを計測できることも特徴。


惜しくも3位以内に入賞しなかったものの、ファイナリストとして選ばれたスタートアップは、次の通り。

Aroma Shooter by Aromajoin(京都)

通信を使ったコミュニケーションの方法は、テキストのみから静止画付き、動画付きへと変化してきた。次のトレンドは、香り付きだとアロマジョインは語る。既存の香り技術は液体を使うため、拡散が遅く残香の問題があるが、同社は固体粉末状の香源を使った「Aroma Shooter」でこの問題を解決する。映画館、VR シネマ、香りを使った商品マーケティングなどに利用可能。ハードウェア+ソフトウェア+香源カートリッジで構成されるシステムは世界100社以上に販売済。シリーズ B で220万米ドルを調達中。

DouZen(アメリカ・サンフランシスコ)

DouZen は、多数の小型照明型スマートプロジェクターを用い、商業施設内での人の案内や誘導を核としたサービスを提供するプラットフォーム「Mooncast」を紹介した。このスマートプロジェクタ「Luna Zero」は壁や床などに経路を示す矢印などを投影するが、クラウドを通じて、投影コンテンツを随時変更できるのが特徴。ターゲットとするユーザは、空港、病院、美術館など。DouZen ハードウェアとアナリティクスを提供しユーザは月額料金を支払う。現在、富士通や FUKUOKA Smart EAST らと PoC を展開中。

Game Karaoke by Dokuen(京都)

カラオケボックスで複数人がカラオケする場合、自分の曲が回ってくるまで長時間待つ必要があったり、歌い手は他の聞き手の評価が気になったりするなど、楽しみに興じられない課題がある。ドクエンの「ゲームカラオケ」は、プロジェクター4台を使って映写することでバーチャルステージを演出するしくみ。ゲームカラオケの導入で、一つのグループにより多くの人が参加することが統計として判明しており、カラオケボックスにとっても利益が増える。日本市場から始め、将来はアジアや高齢者市場を狙う。4,500万円を資金調達中。

スマートウォッチ型血糖値センサー by Quantum Operation(東京)

Quantum Operation は、非侵襲の小型連続血糖値センサーを開発している。糖尿病患者が、身体を傷つけずに血糖値を測定する手段を提供する。近赤外線光を使った指紋認証センサーで培った技術を応用し、近赤外線センサーでの血糖値測定を可能にした。これにより、回路の小型化と消費電力の低減が可能になる。同社ではこのセンサーを内蔵した、スマートウォッチを開発中。完成すれば世界初のウエアラブルグルコースメーターとなる。

D Free by Triple W Japan(東京)

トリプル・ダブリュー・ジャパンは、排泄予知ウエアラブルデバイス「DFree(ディーフリー)」を開発。世界5億人が悩みを抱えるされる排泄の課題に取り組むべく、日本のみならず、アメリカやフランスでもサービスを展開。これまで介護施設など法人向けに排泄予測サービス、自立支援サービスを提供してきた。高齢化に伴う介護の課題先進国である日本の状況を生かし、排泄ケアやリハビリの世界標準を確立したいとしている。

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