Monozukuri Hardware Cupでファイナリスト8チームがピッチ登壇——stak、mui、Xela Roboticsが、米本家参加権を獲得【ゲスト寄稿】

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本稿は、京都を拠点とするジャーナリスト Sasha Kaverina 氏による寄稿を翻訳したものである。

オリジナルはこちら

Monozukuri Hardware Cup は、京都のハードウェア特化スタートアップアクセラレータ Makers Boot Camp、ニューヨークの FabFoundry、東京の TechShop Japan で構成されるモノづくり起業推進協議会が開催している


 

Photo Credit: Amanda Narumi

先週、開催された Monozukuri Hardware Cup 2019 は、英語で実施される関西のスタートアップピッチイベントの一つとして、3回目を迎えた。HackOsaka 2019 で開催された準決勝には日本のイノベーティブなスタートアップ8社が登壇、AlphaLab Gear の Hardware Cup 世界決勝が開催されるピッツバーグへのチケットを賭けて、日本内外からの審査員に向けビジネスをピッチした。

Monozukuri Hardware Cup 2019 には28社からエントリがあり、準決勝までに8社にまで絞られた。今年のピッチイベントには、日本中から興奮させられるビジネスモデルを持ったチームや野心的なスタートアップが参加した。メンターや投資家らは、批評家としての眼、専門知識を持って、世界決勝に日本代表として出場することになる優勝チームを選んだ。

審査員を務めたのは、次の方々。

  • Allen Miner 氏(サンブリッジ CEO)
  • Hongwei Yuan 氏(Green Pine Capital Partners パートナー)
  • Paul Kim(日本エア・リキード Digital Transformation Project Manager)
Q&A セッションでタフな質問を投げかける3人の審査員の皆さん。
Photo Credit: Amanda Narumi

スタートアップ各社は聴、Hardware Cup を運営する AlphaLab Gear の公式フォーマットに則り、聴衆の前でピッチをきっかり4分間、Q&A を5分間行った。数時間に及んだピッチと審議の結果、国際的に定められた条件に従って3社のファイナリストを選んだ。

スマートホームテックスタートアップの Stak が優勝し、ピッツバーグ決勝への往復チケット代として賞金30万円を受け取った。同チームは Hardware Cup 決勝で日本を代表し、韓国、イスラエル、インド、カナダ、アメリカのスタートアップらと戦う予定。

デジタルデバイスで、より静かな環境に合わせデザインされた木製プラットフォームを開発する mui Lab は2位の座に輝き、ピッツバーグへのツアー代として20万円を受け取った。

触覚ロボットセンサーの Xela Robotics は3位に選ばれ賞金10万円を獲得。これら上位3位に入賞したスタートアップは、ピッツバーグで日本ブースのデモエリアに出展し、Hardware Cup 決勝の翌日に開かれる投資家とのネットワーキングに参加する。

【優勝(Hardware Cup Finals 2019 日本代表権獲得)】stak

stak CEO の植田振一郎氏
Photo Credit: Amanda Narumi

機構制御であれ、家電であれ、あなたの家はどこからでも完全に制御できる。広島を拠点とする stak は、ルーティングタスクを自動化し時刻通りに動作させ続けられる電球型の IoT デバイスを開発している。stak CEO の植田振一郎氏によれば、このスマートホームソリューションであらゆるものをカバーでき、導入工事は不要だという。シンプルな操作で接続でき、エアコンをつけたまま外出してしまった、などの心配をする必要がなくなる。

【2位】mui

mui CEO の大木和典氏
Photo Credit: Amanda Narumi

多くの点において、技術はクールであり、日常生活で我々を助けてくれるものだ。しかし、ラップトップやモバイルデバイスの普及にはそのメリットと同時に、注意を散漫にしたり依存性をもたらしたりするなど、大きな欠点も存在する。大木氏のチームは、リラックスできて、気が散らなくて済むデジタル環境を作り出すことを目的とした、シンプルな木の板形のスマートインターフェース「mui」を開発している。磨かれた表面を手でスワイプすると、光る LED ドットで構成されたディスプレイで会話、メッセージの送受信、ニュースや天気の確認ができ流。

【3位】Xela Robotics

Xela Robotics プロダクト開発担当の Tito Pradhono Tomo 氏
Photo Credit: Amanda Narumi

ロボットアームは多くの用途から需要を集めており、世界の包装市場の成長を牽引している。しかし、ロボットアームは、モノをつかんだり動かしたりする操作を失敗しないようにするため、インテリジェントな自動化が求められる。早稲田大学のスピンオフスタートアップである Xela Robotics が、ロボットハンドやグリッパ向けに3軸触覚センサーの開発に着手したのは、そんな理由からだ。プロダクト開発担当の Tito Pradhono Tomo 氏は、同社のスキンセンサーが、接触位置、形状、せん断力など詳細なフィードバックを提供すると語った。同社には人〜ロボット間の安全なインタラクションを確立するというミッションがあり、触覚センサーを人の指や腕に連携するという、野心的な目標に向けて挑戦している。

他のファイナリストは次の通り。

HoloAsh

HoloAsh CEO の岸慶紀(Yoshua Kishi)氏
Photo Credit: Amanda Narumi

スマートフォンの使用が世界的に急増していることで、人々は ADHD(集中力欠如と多動性を伴う精神障害)を発症するリスクが高くなる。ADHD との診断を受けた HoloAsh の岸慶紀(Yoshua Kishi)氏は、終わることの無い、アップダウンを伴うジェットコースターのような状況について、全てを知っている。サンフランシスコに拠点を置く彼のスタートアップは、毎日のように精神障害に苦しむ人々のために、安全な環境を提供するホログラフィック AI を開発している。岸氏は、高い薬代や自己負担の費用に依存する治療法に比べ、バーチャルアシスタントがより効果的で安価であると考えている。

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FutuRocket

FutureRocket CEO の美谷宏海氏
Photo Credit: Amanda Narumi

AI 機能を内蔵したスマートワイヤレスカメラは人気を集める一方、画像認識技術は、その導入費用やレンタル費用の高さから、小規模企業にとって導入が難しいままだ。FutuRocket は、特定の日、期間、時刻、場所で、何人の訪問者がいたかをトラッキングできるカメラ「ManaCam」を開発している。ManaCam は費用は安くて済むソリューションだ。CEO の美谷宏海氏は、ManaCam が比較的安価で導入も簡単であるため、店舗効率の最大化に理想的なツールになるだろうと語った。

Mira Robotics

Mira Robotics CEO の松井健氏
Photo Credit: Amanda Narumi

Mira Robotics CEO の松井健氏は、日常の雑用をロボットに任せることは、究極的には、日本で増大する高齢者と共働き世帯を支援できるようになる、と考えている。松井氏のチームは、遠隔で制御しながら多岐にわたる家事をこなせる「ugo(ユーゴー)」という対話型ロボットを開発している。サービス条件に従って訓練を受けたオペレータが遠隔でモバイルマニピュレータを操作、忙しい家の持ち主は最悪で不便な家事の心配をする必要がなくなる。その観点から、遠隔オペレータロボットは、人間の家政婦では提供できない、一定レベルのプラバシーを保証することになるだろう。

ノバルス

ノバルス CMO 兼 CSO の山中享氏
Photo Credit: Amanda Narumi

まもなく、このデバイスが自らエネルギーデータをシェアするようになれば、バッテリーを交換したり充電したりする必要は無くなるだろう。2015年に東京で設立されたノバルスは、おもちゃ、リモコン、時計アラームなど電池駆動デバイスを制御できる、電池型 IoT プロダクト「MaBeee」を開発している。このガジェットは、乾電池があらゆる場所で再び力をもたらせるようにしたことで、複数の賞を受賞している。

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TeNKYU

TenKYU CEO の管英規氏
Photo Credit: Amanda Narumi

家の電球が天気予報を伝えてくれ、スマートフォンの天気通知に代わって、外出時に傘を持っていくよう教えてくれたらどうだろう? TenKYU は、色を変えて通知するスマート電球を使った、電気予報を知らせる IoT プラットフォームだ。TenKYU CEO の管英規氏は、スマート電球は将来、そのプログラムと使い方次第で、事実上無限の可能性を備えていると語っている。TenKYU は外部サービスとも協業しており、セキュリティカメラが動きを察知したときや、電車の遅延や速報が入電したときに通知してくれるよう、電球を設定できるようになるだろう。

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入賞チーム3社で記念撮影
Photo Credit: Amanda Narumi

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