発達障害課題にテクノロジーで挑む起業家・岸慶紀氏、開発プロダクト「Holoash」は現代人の救世主となるか?

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.11.15

Holoash 岸慶紀氏
Image credit: Masaru Ikeda

ADHD という言葉をご存知だろうか。日本語では「注意欠陥・多動性障害」と訳されている。細かいことに注意がいかない、連続した仕事をやり遂げるのが難しく、時間管理や作業の順位づけが下手など、発達障害の疾患の一つだ。

ADHD 障害を持つ人にとっての課題の一つは、身の回りであれ、仕事であれ、本人の意思に反して、あらゆることがやりっぱなしになってしまうということ。その結果、周囲や職場などで叱責される対象となってしまい、自己肯定感やモチベーションを失いがちだ。自身も ADHD 障害を持つ岸慶紀(Yoshua Kishi)氏は、テクノロジーを使って、この症状の緩和を試みようとしている。

Holoash のイメージ

彼が現在取り組むのは、認知科学に基づいたホログラフィックインターフェイスの「Holoash」。ホログラムで表現されたキャラクタが話しかけてくれ、ADHD 障害を持つ人がキャラクタとの会話を通じて自己肯定感が上がることを狙う「モチベーション・インタビューイング」あるいは「セラピューティックコミュニケーション」と表現されるアプローチをとっている。

Holoash の中で繰り広げられる対話は、映画「her/世界でひとつの彼女」に出てくる人工知能型 OS「サマンサ」で実現される世界観に近い。今年初めの CAMPFIRE でのクラウドファンディング成功を受け、現在はモバイルアプリ(本稿下のビデオ)を使った仮説検証と PMF(プロダクトマーケットフィット)を行なっているフェイズだ。最近では Y Combinator の Startup School の参加対象に採択されたり、Accenture HealthTech Innovation Challenge のファイナリストに選ばれたりするなど、海外で評価される機会が目立つ。

ホログラムを使って、障害の緩和を目指す手法を選んだ点について、岸氏は次のように説明してくれた。

注意力が散漫にならずに、目の前に集中するものがあるというのが大事。また、人間は平面的なモノを見るのは苦手なので、三次元でモノを見てもらい、そこに集中できる環境を作ることにこだわりたい。

最近では、ADHD 障害を持つ人だけでなく、スマートフォンや SNS の普及が〝健常者の ADHD 化〟さえ助長する傾向があるのだという。岸氏はこの事象を「Digital Dementia(デジタル認知症)」と呼んでいるが、スマートフォンなどでプッシュ通知が飛んできて、そちらに注意が向いてしまい、本来やるべきことの優先順位が下がったり、もともとやろうとしていたことを忘れてしまったり、ということは誰しも経験があるだろう。

シリコンバレーの TVLP(Technology Launch Venture Program)でピッチする岸氏
Image credit: TVLP

つまり、ADHD だと医師に診断された人のみならず、現代人であれば、程度の大小はともあれ、誰しも似たような課題を抱えている。Holoash の仮説検証が実証に漕ぎ着ければ、さまざまな可能性が広がるだろう。近い将来には(ADHD 障害の人が苦手とする)スケジューリング管理の機能も付される予定だが、Alexa などが搭載されれば、スマートスピーカー以上のユースケースも期待できる。

Holoash は今年、エンジェルラウンドで、INDEE Japan、曽我健氏(SGcapital)、芝山貴史氏(BLANQ)、小笠原治氏(ABBALab)から資金調達しており、Holoash のハードウェアプロトタイプ開発などに向けて、先ごろプレシードラウンドの資金調達を開始した。今月には、スタンフォード大学出身の客員研究員メディカルセラピストがアドバイザーに就任、保険・製薬業界との協業やアカデミアとの共同研究が期待されるところだ

<参考文献>

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