Googleがアプリ統一へ、SuperApp化する世界

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ピックアップ:Report: Google is about to take on Slack and Teams with a new ‘unified’ communication app

ニュースサマリー: Googleが企業向けモバイルおよびブラウザアプリの統一に動いているとThe Informationが報じた

「Gmail」「Drive」「Hangouts Meet」「Hangouts Chat」を1つのインタフェースで利用できるようにし、「Google Calendar」などの統合されない予定のサービスとの連携を強めるという。これまで多数のコミュニケーションアプリを立ち上げたGoogleだが、機能を統一させ、ユーザーにわかりやすく訴求させる狙いだ。

競合には大手企業に人気のある「Microsoft Teams」や、スタートアップに利用される「Slack」が挙げられる。Microsoftは再設計した「Outlook」に好意的なレビューが集まっている。Slackに関しては、Googleの各種サービスとの連携が手軽にできる一方、Hangoutsのようなチャットサービスは自社を使うように設計されている。

大手競合2社からユーザーを引き戻せるかに注目が集まる。一般的に企業は、利用ソフトウェアを一度決めたら変更をしたがらないため、どこまで切り込めるかが重要となる。

なお、今回の統合はG Suiteのみが対象になる模様。一般に公開されているものではなく、エンタープライズ向けサービスに適用される見込み。Microsoftは2,000万人の月間アクティブユーザーが持ち、Slackより多いとしている。同値が当分のベンチマークとなるだろう。

Superappの流れ

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話題のポイント:今回のGoogleの動きは、中国から世界へ波及している2C市場トレンド「Super App」の流れを汲んでいると考えられます。

Super Appとは言わば、あらゆるサービスを一社がパッケージとして提供する業態を指します。同用語を広めた米国VC「Andreessen Horowitz(a16z)」のブログ記事にもある通り、中国発祥のトレンドです。

中国ではBATの台頭と共に、急速にトップ数社による全サービス領域の網羅およびユーザーの囲い込みが加速しました。モバイル時代の流れに乗り、水平統合型のサービスが登場しています。統合サービスが登場するにつれ、ユーザーは利用頻度の高いアプリ以外は使わなくなり、新しいアプリをインストールする機会は減少。各スタートアップは大手企業と連携することで生き残ろうとしています。

中国のトレンドは欧米へ渡り、今では「Uber」が徐々にSuper App化していると言えます。日本で配車サービス「Uber」より使われているであろう「UberEats」の存在は好例でしょう。高頻度ながら利益率の低いサービスで顧客獲得を進めつつ、最終的には低頻度で利益率の高い事業へと送客する仕組みを確立するモデルがSuper Appです。

顧客理解と幅広いデモグラフィック分布を武器に攻勢を強めるのが特徴です。この点、Uberはフードデリバリーサービスを展開したり、クレジットカードを発行し始めているなど、Super Appならではの多角化の動きを見せています。

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さて、2Cトレンドの動きが2Bでも顕著に見られるようになりました。それが今回のGoogle Suite統合のニュースです。

元々、Super Appと相性の良い領域はコミュニケーションやECアプリなど、ユーザーが日常的に利用するサービス。なかでもライフラインとして必須であるコミュニケーション領域を抑えた企業が、Super Appとして先行できる印象があります。そこでGoogleは2B市場におけるSuper Appを目指そうとしていることが伺えます。

ただ、2B市場では競合であるMicrosoftがすでに先行済み。a16zが広めたSuper Appの用語が登場する前からTeamsを展開し、ユーザーがサービス選択で迷わないようにチームワーク向けハブ機能を企業に提供しています。一方のSlackは、自社で各種サービスを開発するというよりは外部サービスとの連携・共存をして成長を続けています。なお、定義上ではSlackの方がSuper Appとして的確な戦略を展開していると言えるでしょう。

GoogleがSuiteの統合アプリを進めればUXが改善されることは間違いありません。しかし、自社サービスに閉じた形になるため、周りを巻き込めない欠点を持ちます。従来Googleを使わないユーザーからしてみれば、仮に統合が進んだとしても使う理由があまり見当たりません。MicrosoftやSlackユーザーが、わざわざGoogleへ乗り換えることはしないでしょう。

そこで待望されるのが、新たなサービスの追加です。Amazon Primeのように定額サブスクで料金はほとんど変更されることなく、新規サービスを投入してユーザーの期待値を超えていく戦略が必須となるのではないでしょうか。たとえば、つい先日買収したノンコーディング・アプリ開発サービス「AppSheet」の機能をSuiteに追加することで、企業の開発ニーズに応えていくことが想定されます。

企業向けツールはチャット・ミーティング・電話など、利用シーンが限られているため、サービスの特色が似てしまう傾向があります。そのため、いかに「Super Appサブスク企業」として顧客満足度を高め、競合からユーザーを引き抜くための新規サービス充実度を増すかが直近の展望となりそうです。

また日本でもSuper Appのトレンドはやってくると思われます。2C市場では「LINE」がすぐに思いつきますし、2B市場では「Chatwork」が該当するでしょうか。いずれにせよ、中国BATと米国GAFA勢がSuper App戦略に基づいて日本市場攻略に本格的に乗り出した際、どのように生き残るかは考えておいた方がよさそうです。これは大企業だけでなく、スタートアップにとっても同じことが言えるでしょう。

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