脳血管内手術の手術支援AIを開発するiMed Technologies、初のエクイティファイナンスで1.7億円を調達

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Image credit: iMed Technologies

脳血管内手術の手術支援 AI を開発する iMed Technologies は1日、直近のラウンドで1.7億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、SBI インベストメント、GLOBIS Alumni Growth Investment、三井住友海上キャピタル。同社はこれまでに、東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)の起業支援プログラム「1st Round」第1期採択や NVIDIA Inception Program などを通じて助成金など1,500万円を調達しているが、エクイティファイナンスで資金調達するのは今回が初めてとなる。

iMed Technologies は2019年、脳神経外科医の河野健一氏らにより設立。脳梗塞やくも膜下出血の治療手段として、近年、開頭を必要とせず患者負担が少ない脳血管内手術(足の付け根の動脈からガイドワイヤーやカテーテルを入れ、脳血管まで誘導して行う手術)が脚光を浴びている。一方でこの手術は、カテーテルが血管の中の正常な位置を移動しているか、脳を映したリアルタイムの X 線映像4つを見ながら細心の注意を払って行う必要があり、熟練の医師にとっても難易度が高い。

術者(医師)はミリ単位の調整を X 線映像を見ながら行っている。万が一、脳内の血管を破ってしまうようなことがあると大変だが、複数の医師や助手が映像を見守り、危険な前兆が見えたら「危ない」と声を掛け合って事故を未然に防いでいるのが現状。(中略)

人は一ヶ所に集中して注意を払うことはできるが、同時に一人で複数部位の複数箇所に注意を払うことは難しい。むしろ、それは AI が得意とするところ。我々は結果造影装置の映像を AI に取り込むことで、リアルタイム解析し、危ないシーンで医師に注意を促す「神の眼 AI 」を開発している。(河野氏)

脳内血管造影映像
CC BY-SA 3.0: u2em via Wikimedia Commons

iMed Technologies が強みとするのは、この道16年のキャリアを持つ河野氏らが築いた人的ネットワークと、医療機関や研究機関から提供を受けた X 線画像(静止画)100万枚という膨大なアセットだ。これらをディープラーニングにより AI に学習させ、危ないシーンで適切にアラートを出せるシステムの精度向上に役立てる。

iMed Technologies では今後、手術支援 AI に加え、動画などを使って術例共有により教育や評価に役立てられるプラットフォームの構築、また、「ダヴィンチ」のような手術支援ロボットと手術支援 AI を組み合わせることで、医師の熟練度に過度に依存しなくても安全な手術が受けられる環境づくりを展望している。研究開発・薬事承認などを経て、2023年の医療機関への販売を目指す。

iMed Technologies には現在、河野氏(代表取締役 CEO)のほか、経営共創基盤出身の金子素久氏(代表取締役 COO)、エンジニアの Jeong Doowon 氏らが業務に従事しているが、今回の資金調達を受け人員体制を強化する。本日、新たに VPoE(Vice President of Engineering)として、東芝メディカルシステムズ(現在のキヤノンメディカルシステムズ)でディープラーニングを用いた画像診断装置の新機能の開発リーダを務めた福田省吾氏が参画したことも明らかになった。

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