スマートシティの創出に必要なもの——構想発表から10年、スペイン・マラガの経験(前編)【ゲスト寄稿】

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mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


Image credit: ParallelVision via Pexels

世界中のほとんどの国際都市では、都市計画家、政治家、不動産デベロッパが、大都市をスマートシティに変えることに取り組んでいる。不動産やそれに付随する業界で働いている人であれば、スマートシティという概念がホットなものであることを知っているだろう。しかし、多くの多幸感に満ちた新しいトレンドのように、スマートシティという概念はさまざまな解釈が可能だ。

そんなことから、スペインのマラガ市でスマートシティプロジェクトを展開しているデジタルアーキテクトの一人にお会いしたときには、彼の知見を拝する機会に飛びついた。Rubén Fernández Vela 氏はスペインの弁護士で、現在は東京でデータ保護とプライバシー、デジタル法とテクノロジー、スマートシティの分野で法律コンサルタントとして働いている。

<参考文献>

以下は彼との会話の抜粋だ。

Rude VC:

「スマートシティ」という言葉にはさまざまな解釈があるようですが、その定義を説明していただけますか?

Vela 氏:

Rubén Fernández Vela 氏

スマートシティは、多くの著者や団体が一連の要素や基盤に基づいて説明しようとしてきた、大きく複雑な現象です。

スマートシティという概念が前世紀の初めに生まれた当初は、エネルギー効率を追求し、CO₂ 排出量を削減することを目的としていました。現在では、情報通信技術の活用や、市民生活の向上、経済、都市のサステナビリティなど、さまざまな考え方が関係しています。技術は目標を達成するための手段であり、目標とは人間中心の都市の発展です。

我々が言うスマートシティとは、情報が流れるデジタル・ユビキタスの世界の中で、市民が都市情報に接続しリアルタイムに活動する理想的な都市のことを意味します。

スマートシティの概念の正確な定義は、デジタル技術を使用して、そのコンポーネントとして重要なインフラと公共サービスの両方をよりインタラクティブに、より効率的に提供し、市民がそれらをより意識することができるようにする都市、となります。

Rude VC:

スマートシティプロジェクトを実現し、自分たちの街をスマートシティに変えたいと思う自治体の職員を鼓舞するものは何ですか?

Vela 氏:

DESA(国連経済社会局)によると、2050年には都市に住む人の割合が世界の人口の70%に達すると言われています。自治体職員は、市民の生活の質だけでなく、環境や既存企業の競争力にも直接的でポジティブな影響を与えることを目指しています。

都市はいかなる国の社会経済的発展においても基本的な役割を果たしています。都市は、経済成長、イノベーション、社会的進歩、文化、知識、多様性の主要な推進力となっています。都市の魅力とは、基本的なサービスを提供し、生活の質を保証し、ビジネス創造と人材開発のためのより良い条件を促進する力に由来し、最高の市民と企業を魅了すべく競うことになります。

スマートシティは、行政、市議会、民間団体、市民、それぞれの期待を完璧に結びつけるものです。自治体は、市民の問題点やニーズを理解することで、市民の信頼を得たいと考えています。

Rude VC:

市の職員は、スマートシティになることで何を達成しようとしているのですか?

Vela 氏:

スマートシティとは、都市のあらゆる分野(都市計画、インフラ、交通、サービス、教育、健康、治安、エネルギーなど)の効率的な管理を実現し、都市と市民のニーズを満たすことを目指しています。そのためには、技術革新とあらゆる社会的主体と企業の協力が必要です。都市に必要なのは、a) 技術的なインフラ、b) エネルギー戦略、c) 資源の管理と保護、d) 官民サービスの創造、e) 市民それぞれの個人データがアクセス可能で、オープンで、再利用可能なオープンガバメントです。

自治体は、交通、公共サービス、廃棄物収集などに影響を与える、市民運営やサステナビリティに関連した問題に直面するニーズを解決しようとしています。その解決策は、意思決定のためのテクノロジー、具体的には AI、IoT、ビッグデータの利用にあります。

スマートシティとはサステナブルな都市です。それは、社会的イノベーション、効率的な移動と輸送の方法、エネルギーイノベーション(ゼロカーボン)、オープンガバメント、協調経済を目指す都市のことです。

成功したスマートシティは、市民の生活を改善し、サービスの提供を改善し、行政と市民の間の新しいコミュニケーションの形を開発し、サステナブルな開発を実現し、行政のための経済的節約を実現し、起業家のエコシステムを育成するためにテクノロジーを採用しています。

Rude VC:

スマートシティの実現について考えるプロセスとは?

Vela 氏:

スマートシティを実現するプロセスは簡単なものではありません。関係するさまざまな分野の専門家の時間と努力が必要です。政府、市民、公共・民間組織にメリットをもたらすリーダーシップとビジョンが必要です。

スマートシティを実現するまでの設計は、一般的に以下のような段階を経て行われます。

    1. チームビルディング
    2. 検証
    3. マルチセクター(多業界)視点でのソリューションの設計
    4. 実行計画の策定
    5. 複数組織の連携
    6. 評価と反復

スマートシティの哲学を適用する際には、自治体の規模、性格、進化、成長、適応能力などのいくつかの要素を考慮しなければなりません。それは、サステナブルな開発の原則に従った変革であり、すべてのスケールで効率的な管理を適用し、そのすべてに技術的なエコシステムを導入することを意味します。これらのニーズは、市民、役所や行政、関係企業の協力によってのみ解決されます。

Rude VC:

一般市民はどのようにスマートシティ開発プロジェクトに従事していますか?

Vela 氏:

都市とは、人々が生活や仕事をし、提供する多くのサービスの枠組みの中で活動を展開するプラットフォームです。エネルギー資源の大部分の中心であり、国の発展に大きな影響を与えます。

スマートシティには、市民の声に積極的に耳を傾け、市民と完全に接触する役割としての透明性の高い政府が必要です。そのためには、「従来型」から「スマート」な都市への進化にデジタル技術が不可欠です。

都市自体が、市民を中心とした人間中心のプラットフォームとなる。スマートシティでは、市民は自分の都市の情報システムにリアルタイムでアクセスできるようになり、提供されたデータによってより良い意思決定をすることができ、重要なのは、自治体の意思決定プロセスに影響を与えることができるようになるということです。

デジタル技術によって実現されたスマートシティは、市民を能動的なエージェントに変え、自分たちの属する社会の共同創造者に変えます。自分たちが暮らす環境を最もよく知っているのは市民であり、自分たちの住む地域や都市の運命を行政と一緒に提案し、共同で決定できるのは市民です。

Rude VC:

一般の人々はスマートシティ・プロジェクトについてどのような懸念や恐れを抱いているのでしょうか? そのような懸念はどのように緩和されますか?

Vela 氏:

都市の民営化、デジタルデバイド、データ保護と電子プライバシー、質の高いデータへのアクセスは、一般の人々がスマートシティプロジェクトについて抱く可能性のある最も一般的な懸念のいくつかです。

プロジェクトに関与するすべての民間会社等専門家の顔ぶれとアジェンダを開示し、構想段階から都市に関与させることは、市民からの潜在的な懸念を先取りするために非常に重要です。

IT へのアクセスが平等でなければ、市民はスマートシティにアクセスすることができず、アイデンティティを大きく失うことになる。スマートシティの設計と計画においては、連携と教育プログラムが必要があります。

スマートシティを実現するプロジェクトでは、データ保護の観点から、新たにあつらえられたプライバシー法と、元々のプライバシー概念を尊重する必要があります。

最後に、データベースのサービスを開発し、スマートシティでデータドリブンの経済を創出するためには、データが人口のすべてのセクター対して、特に市民やスタートアップからアクセスできるようにする必要があります。そのためには、オープンソースのデータでの作業を容易にする API や web サイトの開発に加え、データの再利用、透明性、オープンガバメント、電子行政などのポリシーを策定することが不可欠です。

後編に続く

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