価格戦略支援SaaS「Pricing Sprint」運営、プレシリーズAで1億円を調達——STRIVE、East V、CACから

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Incubate Camp 13th でピッチするプライシングスタジオ代表取締役 CEO の高橋嘉尋氏
Image credit: Masaru Ikeda

B2B SaaS や B2C サブスク事業者などを対象に、価格戦略や価格決定を支援する SaaS「Pricing Sprint」を提供するプライシングスタジオは11日、プレシリーズ A ラウンドで約1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、STRIVE、East Ventures、CyberAgent Capital(CAC)。

プライシングスタジオは2019年6月にエンジェルラウンド(East Ventures が参加)、2019年9月に シードラウンド(East Ventures と CAC が参加)を実施している。同社は過去ラウンドの個別の調達額を明らかにしていないが、同社 web サイトに記載された資本金額などから推定すると、今回の調達を受けて累積調達額は2億円以上に達したとみられる。

プライシングスタジオは GREE や Parasol 出身の高橋嘉尋氏(代表取締役 CEO)、サイカや ABEJA 出身の相関集氏(取締役 COO)らにより2019年6月に創業(設立当初の社名は、Best path Partners)。企業の価格戦略や価格決定を支援する Pricing Sprint を提供している。創業当初は飲食業向け価格支援サービスと並走させていたが、コロナ禍の社会変化を受け Pricing Sprint に事業シフトした。

サブスクサービスでは価格戦略は大きな部分を占める。顧客にとっては、煩雑な稟議プロセスを経なくても現場判断で導入できるメリットはあるが、料金にはシビアにならざるを得ない。提供側にとっては、同業の競合や既存サービスを意識しながら、機能の充実や利便性と同時に、価格の優位性を常に保ち続ける必要があるだろう。

<参考文献>

「Pricing Sprint」
Image credit: Pricing Studio

社内に価格戦略に精通したチームや人材を持たない企業の場合、この種の業務は戦略コンサルティングファームに外部委託され、その多くは億単位の金額で発注がなされている。プライシングスタジオの独自推計によれば日本における価格戦略の市場規模は624億円、しかし、戦略コンサルに1億円を支払えない価格戦略の潜在需要が390億円あると同社では見積もる。

Pricing Sprint が提供するのは、戦略コンサルティングファーム水準の、価格決定のための情報収集・分析の支援。仮に価格を上げたときに、どの水準でどのようなお客さんが離れてしまうのか、ということも手に取るようにわかる。(高橋氏)

価格戦略のベースとなる情報収集は既存ユーザへの調査が中心になるため、あまりに駆け出しのスタートアップの SaaS が Pricing Sprint でメリットを享受するのは難しい。髙橋氏によれば、Pricing Sprint の分析結果をもとに価格戦略でインパクトを出せるのは、ARR(年間経常収益)が2億円以上というのが目安になるという。

チームメンバー(一部)。左から2人目が取締役 COO 相関集氏、3人目が代表取締役 CEO の高橋嘉尋氏。
Image credit: Pricing Studio

Pricing Sprint では、得られた情報をもとにした価格戦略の分析や提案は、今のところ、AI などで完全自動化されているわけでなく、プライシングスタジオの専任スタッフにより行われている。つまり、分析フェーズは戦略コンサルなどと同じく人海戦術になるわけで、戦略コンサル同等のサービスを戦略コンサルより安いコストでなぜ提供できるのか、スケーラビリティなどに疑問は残る。

この点については、業界を固定した事業拡大により、知見を効率的に活用できるためコスト削減が可能、とのことだ。確かに、顧客の多くが B2B SaaS や B2C サブスクであれば、さまざまなパラメータの情報収集も自動化しやすい。ローンチから3ヶ月で、マネーフォワード、ノーコード EC の Appify、お菓子サブスクの Snaq.me、マッチングサービスの Parasol ら9社が Pricing Sprint を導入している。

情報収集の多くを自動化し、業界を固定することでパターン化できるため、高品質なサービスを提供できる。気がついたら毎月の価格分析が自動的に終わっていて、それがマーケティングに自動的に反映されている、といった SaaS ならではの可能性を提供できるのではないか。(高橋氏)

プライシングスタジオでは、当面は B2B SaaS や B2C サブスクなどを対象に事業展開し、その後、リアル店舗のサービスや小売サービスにも拡大していきたい考え。また、アメリカやシンガポールといった海外市場への拡大も視野に入れている。

同社は昨年10月、インキュベイトファンドが主催した年次合同合宿「Incubate Camp 13th」に採択された。

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