THE BRIDGE

Taishi Masubuchi

Taishi Masubuchi

1996年東京生まれ。シンガポールでの高校生活、米シアトルでの大学生活を通し、いつの間にかテクノロジーが好きに。現在はブロックチェーンリサーチャーとして活動。個人で、イーサリアム関連のプロジェクトに多く関わる。ブロックチェーン以外でも、東南アジア、北米(シアトル中心)のスタートアップの動きに着目。ジャーナリズムを通した小さなムーブメントを乱発し続けるために記事執筆。旅行をもっとしたくなるような、"位置"に価値を付けていく事業考案中。旅が好きです! Twitter - @taiseaocean

執筆記事

確かな需要に応えるスーツケースの“運び屋”、その名はBob

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ピックアップ:Investors pour €3M into traveltech biz Bob.io ニュースサマリー::スペイン・バルセロナを拠点とするトラベルスタートアップ「Bob」は9日、ベンチャーラウンドにて300万ユーロ(約330万ドル)の資金調達を実施したと発表した。同ラウンドには、 K Fund、 TA Ventures、 GAA Investments、 Big Sur Ven…

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Image Credit:Bob

ピックアップInvestors pour €3M into traveltech biz Bob.io

ニュースサマリー::スペイン・バルセロナを拠点とするトラベルスタートアップ「Bob」は9日、ベンチャーラウンドにて300万ユーロ(約330万ドル)の資金調達を実施したと発表した。同ラウンドには、 K Fund、 TA Ventures、 GAA Investments、 Big Sur Venturesが参加している。

同社は2017年創業。旅行者向けに市街から空港までのトランク・預入荷物運搬サービスを展開する。空港まで運搬される荷物は、そのまま提携航空会社のカウンターでチェックインされるるため、ユーザーはシームレスに飛行機への搭乗が可能となる。

同サービスは現在マドリードとバルセロナのみで展開され、荷物1つにつき15ユーロの値段設定となっている。(追加荷物は1つにつき5ユーロ)

話題のポイント:読者のみなさんが旅行をした際、一度は経験したことのあるであろう旅先の「スーツケースどうするか問題」。これに対し、ストレートなソリューションを提示しているのが今回ご紹介するスタートアップBob(正式名称:Bag on Board) です。

従来のケースを考えてみましょう。重たく、移動の邪魔になるスーツケースは宿泊先のホテルに預かってもらうか、専用のロッカーに預けるなどが一般的でした。しかし、問題点として必ず預けた場所に一度戻らなければならず、空港と市街を行き来することを考えれば、ストレスが伴っていたのが実情でしょう。

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Image Credit:Bob

Bobでは荷物の決まった受け渡し場所があるわけではありません。Uberのように自身が希望するロケーションを指定することで、配達員との受け渡しを完了することが出来ます。数多くのエアラインと提携することで、空港へ配達するだけでなく、チェックイン作業まで依頼することが出来るのが大きな強みでしょう。現時点で、イベリア航空、ルフトハンザ航空、KLM航空、Vueling航空、エアフランスがパートナーとされています。

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Image Credit:Bob

荷物の配達は、たとえばアメリカンエクスプレスが同社クレジットカードの特典として提供している例がありますが、Bobのようにオンデマンド型でというのは珍しかったのではないでしょうか。しかしよく考えてみれば、旅をする上でのニーズを踏まえたうえで妥当なアイデアです。

Bobは現段階ではスペインのみでサービス提供ですが、エアラインとのパートナシップを既に整えていることからEU圏内における拡大はそこまで難しくないことが予想されます。また、企業向けサービスとしての強化を図ることで、ビジネス旅行者の需要も多くカバーすることができると思います。

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2020は“空港無人化”が進むーー無人ロボットカフェ「Cafe X」が空港へ進出

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ピックアップ:Cafe X shuts some of its robot coffee shops ニュースサマリー:ロボットがコーヒーを淹れる無人カフェ「Cafe X」が店舗を閉鎖したとAxiosが報じている。サンフランシスコの3店舗が対象で、2017年頃よりロボットアームが特徴的な無人カフェを香港・サンフランシスコダウンタウンにて展開を開始していた。 Cafe Xによれば、ダウンタウンの店舗…

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Image Credit: Cafe X

ピックアップ:Cafe X shuts some of its robot coffee shops

ニュースサマリー:ロボットがコーヒーを淹れる無人カフェ「Cafe X」が店舗を閉鎖したとAxiosが報じている。サンフランシスコの3店舗が対象で、2017年頃よりロボットアームが特徴的な無人カフェを香港・サンフランシスコダウンタウンにて展開を開始していた。

Cafe Xによれば、ダウンタウンの店舗は一時的な実証実験の一環だったとし、昨年12月にサンフランシスコ空港(SFO)とサンノゼ空港(SJC)に新店舗を設立したことを強調。2020年は空港を中心に施設展開していくとした。

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Image Credit: Cafe X

話題のポイント:2020年以降、空港店舗に「無人化」のトレンドが訪れると感じます。今回、Cafe Xが空港にバリスタロボット進出を果たしたように、24時間運営に需要がある環境「エアポート」に注目が集まりつつあります。

Amazon Goの「OMO戦略」でも触れましたが、Amazonは空港の不動産投資費用対効果に目を付け、無人コンビニの店舗拡大計画の一環として進出を進めているといいます。さらに、Amazon Goが中心商品として扱う「軽食」はダウンタウンの商品としては安価でありませんが、空港価格でいえば妥当なため販売促進が見込まれています。

Cafe XのCEO、Henry Hu氏によれば、過去2〜3年における街中での営業は消費者行動の分析を兼ねていたとAxiosに語っており、決してキャッシュフロー悪化によるシャットダウンでないとしています。つまり、実証実験の結果から同社のスイートスポットは空港であると結論付けたということでしょう。

ちなみに、空港における戦略で新しいものとえば、日本の成田空港・羽田空港に約300台ほど並ぶガチャガチャが想起されます。旅客のため、換金できない硬貨を最後の最後でお土産へと変身させることができることで世界中で話題となりました。旅行者需要を巧みに捉えた空港サービスと捉えられます。

さて、単なる「カフェ」でいえば、空港で求められるのは「コーヒーのクオリティー」より時間を過ごす場としての「環境」であると感じます。同社ウェブサイトを見る限り空港に設置されたロボットアームの”箱”(本記事最上部画像)は、自動販売機のような見た目で、いわゆるサードプレイスとしての環境提供を前提に置いていないことが分かります。

そのためCafe Xは空港をサードプレイスでなく、完全ロボット化を通した「圧倒的時短」による価値提供にこそ需要があると想定しているのかもしれません。この点で、Amazonが「無人店舗」戦略として空港に目を付けた背景とは大きく違ってきています。

いずれのケースにしろ、空港が環境として「無人店舗」と相性がいいことには変わりはなく、Cafe Xが空港における「圧倒的時短」への価値需要に対する仮説を証明できれば、今後より一層、空港のロボット化・自動化が進んでいきそうです。

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実は日本よりキャッシュレス後進国、滞在でみえた「お金体験アップデートのチャンス」とは

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2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。 ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。 今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば…

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Photo by Ingo Joseph on Pexels.com

2019年は欧州発のフィンテック企業、特にチャレンジャーバンクが数多く登場しました。たとえば、約8分で新規口座開設が出来る「N26」のように、モバイルファーストを売りとするスタートアップが躍進した一年となりました。

ただ、N26の拠点でもあるドイツは日本と同じレベルでキャッシュ愛好家が多い国として知られています。

今年4月に経済産業省が2018年に公開した「キャッシュレスビジョン2019」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18.4%となっています。キャッシュレスの首位を独走する韓国が89.1%、その次を行く中国が60%と、日本社会のキャッシュレス比率が同じアジア圏でも大きく差が出ていることが分かります。

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キャッシュレスビジョン2019

ではドイツはというと、日本の更に下、キャッシュレス決済比率14.9%を記録し、現金至上主義な社会であることが示されています。

理由として、財務省のレポートにもあるように、同国の歴史的背景に由来する、キャッシュが持つ「匿名性」の影響が挙げられます。レポートでは、第二次世界大戦時に中央政府による市民の監視が影響しているのではと述べられています。

「ベルリンの壁が崩壊したのは1989年であり、30年余が経過したものの、東西分断の痕跡は現在のベルリンにも少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう」ー財務省発表、スウェーデンのキャッシュレス化・ドイツのキャッシュレス化(下)ドイツ編より引用

以上より、中央管理を避ける風潮が国民文化としてのキャッシュを好むカルチャーを作っている一つの大きな要因だと考えられます。例えばドイツ銀行が公開したデータのように、ドイツにおけるデビットカードの保有率が大変高い状態にあるのもその裏付けのひとつと言えます。

Captureさて、話をベルリン拠点のチャレンジャーバンク「N26」に戻しましょう。同社のユーザー数は2019年4月時点で約250万人(※)とBusiness Insider Intelligenceに報じられています。N26はドイツ拠点というだけで、EU圏の対応国に住所を持っていれば誰でも口座開設可能です。

※補足修正:記事初出時に25万人と誤記しておりました。正しくは250万人が引用元記事の情報です。ご指摘いただきありがとうございます。

ドイツの人口は2018年時点で約820万人。同社からユーザーの居住国は公開されていませんが、ドイツ人ユーザー数はそこまで多くないのではと感じています。というのも前述の通り、キャッシュを好む傾向から、キャッシュレス決済といったチャレンジャーバンクならではの価値提供が見込めないからです。

実際、筆者は昨年末にドイツ・フランクフルトに滞在していたのですが、到着するまではいくら現金を好むといえ、フランクフルトのような大都市であれば生活に困らない程度でクレジットカード決済可能だろう、そう思っていました。

しかし、たとえばローカルのコーヒーショップやレストランなどは基本入り口に大々的に「CASH ONLY」と貼られており、大通りを歩いていてもカード決済可能な店舗を探すのに一苦労といったレベルです。カード支払いがほとんどできない有様でした。

改めてドイツ銀行が公開したデータを見ると、2017年におけるドイツ人のキャッシュ利用率は全体の74.3%。次いでデビットカードが18.9%を占めており、クレジットカードはたったの1.6%しかありません。ここで着目すべきなのは2008年からの変動率の少なさでしょう。

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Payment behavior in Germany 2017

2008年においてキャッシュ利用率は全体の82.5%で、実際に年々下降してるとはいえ約10年間で8%ほどのみがキャッシュレスへ動くのみとなっており、これは非常に小さな割合だと言えます。つまり、ドイツにおいて「銀行」に求められているのは昔ながらといえる「お金の安全な保管」だけなのです。

極端な比較となりますが、UBSのデータによれば、中国では2010年時点での現金決済比率が全体の約65%を占めていたのが、2020年には約半分となる30%程度に収束するだろうといったレポートを算出しています。

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UBS

中国ではAlipayやWeChat PayなどのQR決済がこのトレンドの要因となっているのは明確です。ドイツでも多くのフィンテック・スタートアップが本拠地を置いてあることを考慮すれば、本来はキャッシュレスのムーブメントが起きていてもおかしくありません。しかし、現実はその逆でした。

キャッシュレスの壁「チップ文化」

ドイツが「匿名性」を理由にキャッシュを好んでいるのは事実でしょう。ただ、ドイツが国として世界のキャッシュレストレンドに感化されない要因は他にもありそうです。

ローカルカフェで働いている20代の男女バリスタに話を聞いてみたところ、揃って「金銭的に自立した職種として認められるためにキャッシュ(チップ)が必要なんだ」といった答えが返ってきました。ドイツ滞在で実際にカードで支払いをして気が付いたことは、クレジットカードのマシーンにそもそもチップを上乗せして会計するステップが用意されていません。

これはアメリカのようにクレジットカードを通したチップ付与であると店舗全体で総分配になる反面、キャッシュであればそのまま個人の収入へと繋がることを意味しています。

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こうした社会的問題とキャッシュレスを考えたとき、ふと思いついたのはコーヒースタートアップ「Bellwether Coffee」です。

<参考記事>

同スタートアップは、コーヒー購入者が直接コーヒー栽培農家に「投げ銭(チップと表現してもいいでしょう)」を送金できる焙煎機を開発し、途上国の違法児童労働問題の解消を目指しています。

ある意味では、キャッシュレスだからこそスムーズにエコシステムが形成されていると言えます。直接的に従業員へ現金をチップしたいという気持ちがあるならば、それをそのままデジタライズさせることも可能と考えます。

ということでドイツ滞在からみえた「キャッシュレス途上国」の課題を考えてみました。

現金で成り立っているチップ文化をわざわざ壊してまでデジタライズさせるためには、さらにクリティカルな価値提供が求められることは間違いありません。そういった意味でN26のようなフィンテック企業が、チップのような細かい体験を各国の文化に合わせてアップデートしていけば面白いことになるのではないでしょうか。

こういったキャッシュ至上主義国家におけるチャンレンジャーバンクには、お金にまつわる体験をアップデートする役割も期待されます。

今後もN26を始めとして欧州発のチャレンジャーバンクが勢力を増し、グローバルになっていくと思います。こうした流れを理解したうえで、フィンテック・ソリューションを開発できれば、日本でもお金に対する文化を根本的にアップデートしていけるのではないかなと思います。

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ITエンタープライズ本社が集うシアトルの「社会課題解決型」スタートアップたち

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アメリカ西海岸でテックスタートアップの聖地といえばサンフランシスコです。郊外にはシリコンバレーを要し、各所に名だたるVCが拠点を構えています。 さて、サンフランシスコと「西海岸」「テック」のキーワードで比較されるのがワシントン州に位置するシアトルです。どのように比較されるかといえば、サンフランシスコはテックスタートアップが集まり、シアトルにはエンタープライズ企業が集まる、そういった捉え方をされがち…

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ワシントン湖を境に西はシアトル・ダウンタウン、東にベルビュー・レドモンド

アメリカ西海岸でテックスタートアップの聖地といえばサンフランシスコです。郊外にはシリコンバレーを要し、各所に名だたるVCが拠点を構えています。

さて、サンフランシスコと「西海岸」「テック」のキーワードで比較されるのがワシントン州に位置するシアトルです。どのように比較されるかといえば、サンフランシスコはテックスタートアップが集まり、シアトルにはエンタープライズ企業が集まる、そういった捉え方をされがちです。

実際そのイメージは間違っていません。

シアトルには大手IT企業を含め、あらゆる分野の本社の集合体で街が構成されています。たとえばAmazon。シアトルダウンタウンに構える同社HQはアマゾンタワーと呼ばれ、近辺には植物園型の「The Spheres」を構え、その特徴的な球体施設はアマゾンカラーを豊富に生み出しています。

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ダウンタウンシアトルから車で15分ほど東へ向かいレイクワシントンを越えた先にはMicrosoft本社がある街、レドモンドへたどり着きます。Amazonとは対照的に、大学にあるような2・3階建てのキャンパスを広大な土地に広げ、自然色豊かにマイクロソフトカラーを出しています。

シアトルはAmazon、Microsoft以外にも、オンライン旅行代理店のExpediaやコーヒーチェーンのStarbucks、航空機器製造のBoeing、ビッグデータ解析・BIツールとして著名なTableau、オンライン型の不動産データベースZillowなどを擁しており、挙げればキリがないほどエンタープライズ企業が本社を構えます。

シアトルで働くテックワーカーにとって上記であげた企業間を転職するのが普通のことです。筆者が出会った方は、Microsotで3年、Amazonで3年エンジニアとして働いたのち、同市にキャンパスを持つワシントン大学で教鞭を1年とり、その後Starbucks本社で新規サプライチェーンのマネジメント兼開発職に就く経歴を持っていました。

テック大企業間での転職は当たり前で、だからといって永遠にテックというわけでもなく、スターバックスのようにコーヒー業界に飛び込んだりすることも珍しくないというわけです。

さて、やはりシアトル発のスタートアップは数少なく、筆者が調達ニュースをチェックしていても「Seattle-based」の文字を見ることはとてもまれでした。ただ、シアトル発のスタートアップ数が少ない状況が徐々に変わりつつあるかもしれないデータを、Pitchbookがレポートで示しています。

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同レポートによれば、シアトル発のスタートアップもまた2019年着実に伸びています。同年度にVCやエンジェル投資家から資金調達した企業数は374社で計35億ドルと、2017年度まで下がり続けていたトレンドを盛り返していることが分かります。

筆者はシアトルに計4年ほど住んでいますが、先日、初めてサンフランシスコに1か月ほど滞在した際、両者に大きな違いを感じました。サンフランシスコのテックワーカーのスピリットには、英語でいう起業家としての「Entrepreneurship」が文字通りそのまま街に溶け込み、いわゆる私たちがテック系メディアで垣間見るテクノロジーの世界を体現している、という雰囲気があります。

逆にシアトルでは、生活の中心には「家族」があります。

もちろん米国や欧州諸国において、家族や親類と多くの時間を割く傾向は事実で、それはサンフランシスコでも同じでしょう。ただ、実際にシアトルに住んで感じる、生活の中での「家族の時間」はより大切にされていると感じます。そういった意味で、やはりスタートアップのカルチャーとは少し離れた特性をシアトルは持っているのかもしれません。

ということで、ここからは昨年に登場したシアトル発の調達スタートアップの中から、代表的なものを紹介していきます。まずは「Boundless」から。

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<参考記事>

同社は米国移民のグリーンカード手続きを手軽に、かつシームレスに行えるサービスを提供しています。米国で近年注目を集めている移民問題に対して、うまく切り込んだスタートアップです。

従来、移民手続きを進めるためには弁護士など専門家への依頼が必要であり、かつ、手続きの不透明さに疑問がありました。そこでBoundlessはオンライン化を通じて申請プロセスに透明性を持たせました。UXを高めることで、全米で利用者を増やしています。

まさに米国が直近で抱える社会問題解決をベースとしたスタートアップと言えるBoudlessですが、シアトルでは比較的こういった社会問題解決型スタートアップが多いと感じています。

例えば廃品回収サブスクを名乗る「Ridwell」も印象に強く残っています。同社はAmazon本社があるシアトルだからこそ意識する、空き配達箱問題に目を付け、いかにリサイクル資源として再利用するかの提言をしています。

<参考記事>

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シアトルにもサンフランシスコ発スタートアップのように、最先端技術のくくりにはいるAIやビッグデータを活用したり、それらデータのビジュアライズ化を図るスタートアップも誕生しています。

Polly」はSlackに代表されるビジネスチャットツールとの連携ツールを提供。社内のあらゆるデータの可視化を実現しています。「Showdigs」は内見版Uberと呼ばれ、オンデマンド内見エージェントを生み出しています。内見希望者(Uber利用者)と内見エージェント(Uberドライバー)をマッチングするP2Pプラットフォームを運営しています。

Uberが新たな形で”タクシー”ドライバーを生み出したように、新たな不動産エージェントを生み出すことを目指しています。

<参考記事>

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Photo by Sergei Akulich on Pexels.com

Pitchbookが示していたように、シアトル発のスタートアップは増加傾向にあり、なかでもシアトルカラーが示されている社会問題解決型である「Boundless」などのスタートアップに資金が集まりだしていると感じます。Amazon、Microsoft、Starbucksなど今やエンタープライズといわれる企業達が作り上げてきたシアトルのカルチャーだからこそ誕生するスタートアップなのかもしれません。

2020年以降、シアトルはどう変わっていくのか。今後のシアトルという街が、サンフランシスコとは違ったカルチャーを持ちつつ、どのように「街づくり」をしていくのかとても楽しみにしています。

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MaaSで注目したい13のケーススタディー

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2018年、日本政府によって閣議決定された「未来投資戦略2018」。 同戦略では、インターネットの発展によって生じたあらゆるデータやAIを効率的に活用し、生活の最適化を推し進めていく考え「Society5.0」が語られています。具体的には、Society5.0の定義は次のようなものになります。 「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立…

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Image Credit: Finnish Ministry of Transport &di Communications, 2016 

2018年、日本政府によって閣議決定された「未来投資戦略2018」。

同戦略では、インターネットの発展によって生じたあらゆるデータやAIを効率的に活用し、生活の最適化を推し進めていく考え「Society5.0」が語られています。具体的には、Society5.0の定義は次のようなものになります。

「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」- Society 5.0とは – 内閣府

Society5.0を目指していくうえで重要となるセクターは以下の5つに分解されます。

  1. フィンテック/金融分野
  2. モビリティー
  3. コーポレート・ガバナンス
  4. スマート公共サービス
  5. 次世代インフラ

最もイメージしやすいのはフィンテックの分野でしょう。QRコードによるモバイルペイメント合戦など、日本においても金融文脈から実際に手に触れる機会が年々増えてきています。

一方、“モビリティー”と聞いても、日本では具体的なイメージは湧かないのではないしょうか。

海外に目を向ければ、たとえばUberやLyftによるタクシー市場のP2Pマーケットプレイス化、LimeやJUMPなどによるドッグレス型電動スクーターが街に浸透し始め、目に見えた変化でトレンドを負いやすい環境にあると思います。

また、「自動運転」技術に関してもこれからのモビリティーを大きく先導していくのは間違いないでしょう。最大手ともいえるテスラは今年末にCybertruckを発表したことで話題になりましたが、2020年度からは自動運転の配車サービス「robotaxi」にも着手することが既に発表されています。

自動運転タクシーに関して言えば、Google発のWaymoが今年末にセーフティードライバー無しの実証実験へ着手し始めるなど、2020年がターニングポイントとなることが予想できます。

ただ、Society5.0を前提としたモビリティーサービスはライドシェア、スクーター、自動運転以外にも数多く存在し、大きなインパクトを社会にもたらす可能性を秘めています。

今回は2019年に筆者がピックアップしたスタートアップの中でも、2020年以降盛り上がるだろうと考える「MaaS × 〇〇」のエリアに取り組むスタートアップを振り返っていきたいと思います。

海外

1. Miles

参考記事:排気ガスを出さない「理由」を作るMilesーー環境と「移動に価値を付ける」そのアイデアとは

  • Miles」は環境問題とモビリティーを融合させたリワード型アプリケーションを提供。ユーザーは様々な移動手段の中で徒歩や自転車など、CO2削減に貢献するほどリワードとして「マイル(ポイント)」を還元率高く獲得することが可能。たとえば徒歩移動をした際は実際の距離の10倍、自転車であれば5倍、Uberであれば2倍のポイントを獲得できる。

Milesは移動手段を利用して、環境問題への寄与を上手にわかりやすく価値化できていると思います。同社では積極的に市町村と共同でCO2削減プロジェクトを立ち上げ、街を挙げて「移動」のあり方をユーザーに訴求しています。

移動に対するインセンティブ設計をどう施すかが最大の難点でしたが、環境問題の解決につながるMilesのサービスを市町村にプログラムとして提供し、補助金として資金を得ることでエコシステムを作り出そうとしています。

2. Swiftly

参考記事:街の渋滞をビッグデータで解決、公共交通機関向けMaaS「Swiftly」が1000万ドル調達

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  • Swiftly」はバスや電車などの公共交通機関向けにMaaSプラットフォームを提供。位置情報ビッグデータを利用し、渋滞改善に対するルート改善策を企業・団体へ提供する。

Swiftlyは個人の「位置情報」に目を付け、街の流れを根本的に改善することを目指しています。特筆すべき点は、ロケーションデータを分析・可視化し、なぜ特定の場所で渋滞が起きているのかを探れる点にあるでしょう。

たとえば同社のプラットフォームを利用し、ある公共交通機関の停車駅と信号の位置が効率よく配列されていないことから渋滞が起きていることを突き止め、実際に解消させることも可能です。

3. Lilium

参考記事:2025年に空飛ぶタクシー実現目指す「Lilium」が描く“街と大自然を20分でつなぐ”生活

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  • Lilium」は飛行型で電気自動運転車の開発・研究を実施。いわゆる「空飛ぶタクシー」を開発する同社は価格帯を重要視しており、誰でも利用できる料金設定で2025年を目途に商用利用を目指す。

空飛ぶタクシーの最大の魅力は、都市問題・人口集中問題解決へ向けたソリューションを期待できる点にあります。同社CEOの発言にもある様に、低価格な空飛ぶタクシーが当たり前となれば、森に囲まれた家を持ちながら都会で働くことが実現できます。また、新たな交通手段が増えることで都心で深刻化する渋滞問題の解消も期待できるでしょう。

空飛ぶタクシーはUberもUberAirプロジェクトで実証実験段階に入るなど、市場全体では5年を目途に実用段階へ入る雰囲気を見せています。2025年ごろには今の私たちがUberを使うような感覚で(金額的にも)空を移動手段に利用できるのも夢でないかもしれません。

4. Blackbird

参考記事:プライベートジェットを民主化するBlackBird、「空のシェアエコ」はどのような経済圏を生み出すか

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  • BlackBird」はプライベートジェットやパイロットをユーザーとマッチングさせ、航空機のシェアリングプラットフォームを提供。短中距離の移動手段に特化しており、低価格かつ短時間の空移動の体験の実現を目指している。

BlackBirdも空の移動に目を付けたスタートアップです。参考記事のタイトルにもある様に、プライベートジェットの民主化を図るため「空のシェアエコ」の概念を作り出した先駆けと言えます。たとえばアメリカのように、距離としてはそこまで遠くないが、山越えがあり車だと時間がどうしてもかかってしまう際の、最適な移動ソリューションとなる、といった具合です。

5. Aero

参考記事:オンデマンドプライベートジェット「Aero」が1,600万ドル調達ーーBlackJetの失敗を教訓に、空路のシェアエコ再挑戦

  • Aero」はミレニアル世代やジェネレーションZ世代をターゲットとしたオンデマンド型プライベートジェットのマッチングプラットフォームを提供。同社は飛行機を管理せず、プライベートジェット運用企業とパートナシップを組む。利用者は大手エアライン利用者に使われる空港ではなく、プライベート空港から飛行機に搭乗する。

Aeroは一見上述したBlackBirdと類似しています。しかし、BlackBirdでは移動がメインのため航空機もヘリコプター型に近いものが多いですが、Aeroでは私たちがイメージする通りの「プライベートジェット」を提供しています。

Blackbirdが2〜4人ほどの航空機であるのに対し、Aeroでは飛行機型で数十人搭乗できる設計となっています。インテリアもBlackBirdが簡易的であるのに対し、Aeroでは内装を重視し「空の移動+体験」な空間を作り出していると言えます。

価格帯はカリフォルニア州オークランドから、コロラド州テルライドまで2時間のフライトを予約した場合一人当たり約900ドルとなっており、通常フライト価格の3〜4倍となってます。

国内

1. Whill

参考記事:WHILLが仕掛ける「歩道版Uber」、50億円を調達して新たなMaaSビジネスを開始へ

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  • Whill」は高齢者や障害を持った、移動に問題を抱える層をターゲットとしたモビリティー製品を提供。年齢や障害を理由に「移動」が制限されない世の中を目指す。

Whillでは電動車いすを開発します。加えて、MaaSプラットフォームとして公共交通機関とタッグを組み、利用者がシームレスな移動を経験できる仕組みを作り上げているのが特徴的といえます。同社HPでは、MaaSプラットフォームとのコラボレーション先として病院、空港、ミュージアム、ショッピングモール、歩道(サイドウォーク)、テーマパークを挙げており実用化が期待されています。

2. LUUP

参考記事:人口減少時代を「移動」で救え!C2Cサービスの移動インフラを目指す「LUUP」ーー電動キックボードのシェアリング事業で5自治体が連携

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  • LUUP」は日本で電動キックボードのシェアリングサービスを展開。2019年末には、沖縄のリゾート施設にて初の実証実験を開始し、国内マイクロモビリティーをリードしている。

電動キックボードの規制が未だ厳しい国内市場です。LUUPは着実に実証実験の回数を重ね、自治体や観光に目を付けて同社プロダクトの浸透を進めています。マイクロモビリティーに関する国内動向を追う上で欠かせないスタートアップであることは間違いないでしょう。

3. Maas Tech Japan

参考記事:Beyond MaaSを見据えた「理想的な移動社会」への挑戦ーービジネス効率化の旗手たち/MasS Tech Japan代表取締役CEO 日高 洋祐氏

  • MaaS Tech Japan」は、MaaSに関わるデータプラットフォームを各公共交通機関や企業に提供する。経済産業省・国土交通省が進めるスマートモビリティチャレンジにおける実証実験に参加するなど数多くのPoCを進めている。

MaaS Tech Japanでは、総合MaaSソリューションを提供するため、数多くの実証実験からビッグデータを収集・解析している段階にあります。日本においては、MaaSのビッグデータを収集解析する企業は耳にすることが少なく、エンタープライズとMaaSスタートアップの貴重な架け橋になることを目指しています。

4. Carstay

参考記事:新進気鋭の起業家が大物キャピタリストとアイデアを磨きあげる合宿イベント「Incubate Camp 12th」が開催

  • Carstay」はバンライフ実現のためのバンシェアプラットフォームを提供。新しい移動の形を宿泊と結びつけている。インバウンド観光客が増える中で大きな問題となっている宿不足の問題を、移動可能な宿としてバンを共有し、車中泊体験の提供で解決しようとするスタートアップ。

モビリティーとトラベルを繋ぎ合わせる比較的珍しいスタートアップです。移動の概念を宿泊の観点を盛り込むことで根本的に変えることを目指しています。同社が参入する領域はラストワンマイルのようにMaaSにとって重要なセクターとなると思います。

番外編

JR東日本

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JR東日本」はモビリティー変革コンソーシアムを結成するなど、主体的に移動の新たなコンセプト構築に取り組んでいます。身近な取り組みでいえば、朝の通勤時間帯の混雑を緩和する対策として有楽町線での「S-Train」の導入や、SUICAを中心としたモビリティーとその他観光業との融合などが挙げられます。

小田急電鉄

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小田急電鉄」では中期長期計画に「モビリティ × 安心・快適」とした施策を挙げるなど、JR東日本と同様にMaaSに取り組んでいます。

MaaSの先駆けと言えるフィンランド・ヘルシンキにてWhimを運営するMaaS Globalともデータの連携やサービスのパートナシップを結んだことも今年10月には発表しました。小田急は通勤通学に多用されていますが、箱根のように東京から少し離れた観光地へアクセスす手段も提供します。そのため、外国人観光客とMaaSを組み合わせた事業も今後オリンピックを機に増えていくと考えます。

トヨタ自動車

多様な仕様のe-Palette Concept
TOYOTA

「TOYOTA」は言わずと知れたモビリティー企業ですが、自動運転の発展のためにMaaS文脈は不可欠と捉え研究開発を進めています。昨日のCESでは大きな発表もありました。

<参考記事>

昨年には、e-Palette Conceptを発表し、自動運転×MaaSをトヨタなりに提示しUberとパートナシップを結んでいます。また、2019年にはソフトバンクとの共同出資にて新会社「MONET Technologies」を設立し、人の流れや人口分布、交通渋滞や車両の走行ログなどを統合的に絡めたデータプラットフォームを活用していくことを公開しています。

MOBI (Mobility Open Blockchain Initiative)

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MOBI」はブロックチェーンをMaaSで活用することを目指し設立した団体です。メンバーには既存モビリティー企業であるHONDAやFord、GMなどが参加し、IBMやアクセンチュアその他ブロックチェーンスタートアップ企業がコラボレーション可能な環境となっています。

なかでもV2X(Vehicle to Everything)文脈とブロックチェーンをうまく掛け合わせ、ビッグデータルートからモビリティー問題解決を目指すMaaSプラットフォームとは一線を画し、MaaSソリューションの最先鋒となると考えています。

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旅のストーリーが個人を強くする時代

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トラベル業界の2019年を振り返ると、大きく分けて2つの領域に資金が集まった印象です。1つはオンライン・トラベルエージェンシー(OTA: Online Travel Agency)市場。 なかでも今年はソフトバンクビジョンファンドによる「GetYourGuide」や「Klook」への連続大型投資など、孫正義氏が掲げる「群戦略」の一つにトラベルという領域が入っていることが証明された年でもありました。…

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トラベル業界の2019年を振り返ると、大きく分けて2つの領域に資金が集まった印象です。1つはオンライン・トラベルエージェンシー(OTA: Online Travel Agency)市場。

なかでも今年はソフトバンクビジョンファンドによる「GetYourGuide」や「Klook」への連続大型投資など、孫正義氏が掲げる「群戦略」の一つにトラベルという領域が入っていることが証明された年でもありました。

また、OTAに対してサービスを提供する市場も大きく伸びた印象です。「ダイナミックプライシング」はバズワードとなりました。AIや機械学習を活用してOTA事業者の顧客データのパーソナライズ化を促進。各ユーザーに対してユニークな価格提案やサービス内容を設定できるといった内容です。同領域では、ピーターティール氏が投資する「FLYR」が市場をけん引していると思います。

brown wooden center table
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2つ目はAirbnbを筆頭とする民泊市場。こちらもまた、ソフトバンクビジョンファンドが新興OYOに投資するなど「〇〇版Airbnb」が数多く台頭し始めました。

まず、ビジネス向け旅行者に特化した民泊プラットフォーム「2nd Address」、ハイエンドな物件のみをリスティングする「Sonder」、一室丸ごと貸し出し&アーキテクチャーデザイナーによる部屋のデザイン性を売りとする「Lyric」が〇〇版Airbnbや、Airbnbの競合として頭角を現しています。(*LyricはAirbnbに投資されています。)

とはいえ、民泊市場においてAirbnbの絶対的王者感は否めません。たとえば同社ではビジネス向けに「Airbnb for Business」を提供、ハイエンド向けには「Airbnb Plus」と称しブランドサービス提供を始めています。

bedroom door entrance guest room
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Airbnbがリードするトラベル市場の中でユニークな動向を掴むには、Airbnbと一線を画している民泊スタートアップの存在を考えてみるとよいかもしれません。

たとえば、新築マンションを民泊化する「WhyHotel」、キャンプ場版Airbnb「Hipcamp」、ミレニアル世代をターゲットに旅行中のみ自身の部屋を民泊化できる「Leavy.co」などが挙げられます。彼らは単なる民泊ではなく、あらゆるトレンドを織り交ぜた市場戦略を採用しています。2020年以降、こうした特定コンセプト型民泊事業者が、ユニコーンへ近づく可能性は大いに考えられるでしょう。

ここまで上げた2つの市場領域は既に成熟しています。また、事例に挙げた企業らを代表として、思い立ったらすぐに旅行に出かけられる、旅行に出かけるまでの壁をなくすサービスを確立させています。

Airbnbは、宿泊地選定にかける時間・費用の短縮化、前述のLeavy.coであれば、旅の資金を半自動的にリアルタイムで生み出せる点で貢献していると言えるでしょう。このように、今後も全体的なサービス・クオリティーは上昇を遂げていくことが予想できます。

woman sharing her presentation with her colleagues
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さて、「ギグエコノミー」から「パッションエコノミー」へ、トレンドが移り変わっている点も見逃せません。個々人のスキルを活かして、いつもとは違った旅行体験を提供する経済圏に注目が集まっていくと感じます。

特別な旅行体験を提供するには「ストーリー」が重要になってきます。Hotspring代表取締役の有川鴻哉さんが自身の新サービスについてnoteで語っていたように、“旅行とはストーリー”であって、そのストーリーを旅行者同士が享受しあえる世界観がやってくるはずです。

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有川鴻哉さんのnote

ただ、ストーリーをうまく表現する、パッションエコノミー文脈で活躍するプラットフォームやサービスは、未だ誕生していません。しかし先行事例は登場しています。たとえば、P2P型で旅人と旅人をマッチングさせ、旅人同士ならではの視点でホテルのブッキングを代行する「TRVL」が挙げられます。

同社は、TripAdvisorにコメントを長文でつけている旅行者「Travel Pro」から直接アドバイスをもらいながらホテルを決めることが出来るサービスを展開。Travel Proは、プラットフォーム上で予約代行をすることでコミッションフィーがもらえるため、自身の経験・スキルを活かして稼げるパッションエコノミーを端的に表現しているサービスと言えるでしょう。

SNS性も持ち合わせている点も特徴で、今後ホテルブッキングに留まらず、スケジュールの立案や秘境フォトスポットなど、Travel Proだからこそ独自に提供できる旅行パッケージを作れるサービスにまで成長できると感じました。

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「旅人」という経歴も徐々に認知されるものになってきています。

日本ではTABIPPOが旅のエキスパートに特化した就職転職エージェント「旅人採用」を運営しています。今までFacebookやLinkedInの経歴欄は大学や職業、留学経験などが一般的でしたが、これからは「旅」における経験から自身の価値を表現することも可能になります。

こうした文脈こそ、「旅 × パッションエコノミー」を体現したものだと思います。旅行経験を単発で終わらせず、人生の中心に据え置き、キャリアに活かす流れは理にかなっています。

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仮想地球を提唱するEXA

将来的にブロックチェーンの考えを取り入れることで、新たなビジネスモデルも誕生するかもしれません。

たとえば、ブロックチェーンと位置情報を組み合わせ、旅行者が特定の場所・日時に立っていたことを証明するプラットフォームを成立できれば、「旅人版・LinkedIn」が可能になります。実際、ロケーションとブロックチェーンを組み合わせた例でいえば、メタップス創業者の佐藤航陽さんが個人で取り組まれている「EXA」がその例の一つでしょう。

同プロジェクトでは、現実世界の経済発展度とは真逆の「地球」を作り出しています。その「地球」を動き回り、経済発展度が低い箇所であればあるほど、トークン発掘量が多いなど、実際に移動する価値を作り出せていることが特徴です。

筆者は国外旅行を頻繁にしている視点から、EXAのように移動した事実を上手く価値表現できる仕組みには魅力を感じるのです。マイレージのような感覚でしょうか。

筆者がなぜ移動への価値にこだわるかというと、2016年7月6日にリリースされたアプリ「PokemonGo」が大いに関係しています。リリース当時、私が生活していたアメリカ・シアトルでも大きな話題となり、近所の公園には連日多くの人があつまり警察も出動するなどお祭り騒ぎでした。その時、人は根本的に移動することを好み、熱中するものなんだと肌で感じました。人の移動から価値表現をどう生み出すかを考えるきっかけとなりました。

もちろん今でも、YouTubeに動画を公開したり、ブログを書いたり、インスタ映え写真をアップロードするなど、旅行した価値を表現する方法はたくさんあります。しかし、従来のツールは単調なものになりやすい印象です。「旅 × パッションエコノミー」が到来し、旅が人生の中心の一つとなった時代には物足りなく感じるのではと思っています。ブロックチェーンを活用した、新たな価値創出に期待感を持っています。

ということで、2020年からのトラベル市場を考えると、今回説明してきたように、ブロックチェーンとの組み合わせが価値を表現するという意味ではベストだと考えています。「旅 × パッションエコノミー」をヒントに、もっと旅が楽しめる日がやってくるのを心待ちにしています。

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Amazon Goにみる「OMO戦略」を紐解く

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2019年はOMO(Online Merge Offline)戦略に注目が集まった年でした。 従来のネットから実店舗へ誘導させるO2O(Online To Offline)戦略から、顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、パーソナライズ体験を提供するOMO戦略に多くの小売企業が戦略の舵取りをしています。たとえば中国で急速に成長してユニコーン入りした「Luckin Coffee…

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2016年ベータ版の際に筆者撮影

2019年はOMO(Online Merge Offline)戦略に注目が集まった年でした。

従来のネットから実店舗へ誘導させるO2O(Online To Offline)戦略から、顧客データを基にオンラインであろうがオフライン店舗であろうが、パーソナライズ体験を提供するOMO戦略に多くの小売企業が戦略の舵取りをしています。たとえば中国で急速に成長してユニコーン入りした「Luckin Coffee」が挙げられます。

同社はスマホで注文をした後に送付されるQRコードを、店舗入り口にある読み取り機にかざせば商品を受け取れるシームレスな体験を提供。「行列」の概念を取り払い、中国ではスターバックスを追い抜くほどの成長を見せています。

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Luckin Coffee Q3 2019

Luckin Coffeeはモバイル上に登録された顧客の注文データを、従来型のカフェ型店舗・ピックアップ専門店舗・デリバリーサービスのあらゆるチャンネルで活かし、ビックデータ戦略に成功している好例です。

同社の決算資料にある会社概要には、「BIG DATA」の記載があり、当初からOMOを事業戦略として据え置いていることがわかります。

We leverage our big data analytics and AI to analyze the huge volume of data generated from our operations and continuously improve our systems (Luckin Coffee会社概要より

同社のようなオンラインとオフラインをシームレスに繋げたモデルはOMOと呼ばれ、今後の店舗型ビジネスの核となると言われています。実際、Luckin CoffeeはOMO戦略を踏襲し、2019年10月からはお茶に特化したサービス「Luckin Tea」を立ち上げています。

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Image Credit: Amazon Go

ここからはOMOの未来を考えていくため、無人店舗「Amazon Go」をベースに、Amazonが思い描くOMO戦略を考察していこうと思います。

Amazon GOの現状

現在Amazon Goは同社の本社を置くシアトルに5店舗、サンフランシスコに4店舗、ニューヨークに8店舗の全米に計17店舗がオープンしています。Bloombergが2018年に報じたレポートでは、Amazonは2021年を目途に全米に3000店舗オープンさせるとしていたので、店舗数の視点では予定より遅れているのでしょう。

Amazon Goはアプリをリリースしており(上図)、アプリ上で発行されるURLを店舗改札にかざすことで入店することが可能となります。この入店体験はLuckin Coffeeも採用しています。

ECサイトと同じアカウントが利用されるため、Amazon Goの購買行動データと連携されます。たとえば、Amazon Goで分析した顧客の商品の好みなどを活かし、Amazonマーケットプレイスにパーソナライズさせた商品のレコメンド表示させることが出来るようになります。

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AmazonはOMO戦略を率先して展開する企業であり、最高の顧客体験をどのチャネルであっても提供する仕組みづくりに努めています。ただ、実績はまだ伴っていない印象です。

筆者シアトルの自宅真横にもAmazon Goの小さな店舗があり、よく目にするのですが利用客はほぼいない状態が続いていると感じます。一方、Amazon本社横に建てられた店舗には、日中訪れれば多くの人で賑わっているのですが、どうやらローカルユーザーでなく観光客のように思います。日本からの訪問者も多いようで、スーツを着たおそらく視察に来たであろう日本のビジネスマンに会うことが出来ます。

実際、CNBCによればAmazon Goの店舗において売り上げが出ているのは本社店舗のみだそうです。とはいえ、Amazon Go店舗は2020年以降も着実に増えていくことには間違いなく、同社の次の出店戦略として「空港」に目をつけているとCNBCが報じています

空港への出店戦略は大いに納得で、現状Amazon Goが街中で利用されていない根本的な「理由」を補完できるのではと感じます。

OMO戦略からみるAmazon GO

Amazon Goはあくまでコンビニエンスストアと名乗っているわけですが、特に私たち日本人からすると、コンビニとは24時間開いていて、あらゆるバラエティーの商品を手に入れることが可能な場所という印象を持ちます。

しかしAmazon Goはそんなことなく夜には閉まります。店舗数も少ないので、コンビニとしての価値にはやや疑問符がつきます。また、店舗ではオフィスワーカーの利用を想定してかサンドイッチやホットドッグなどの軽食を用意していますが、サンドイッチ一つで7ドル程の価格であり、お手軽とは言えません。

ただ、空港であれば、入店の必要もなく行列の生じない「軽食」の需要は大いにあると言えるでしょう。例えば5時間のトランジットの中で、レストランに入るほどおなかは空いていないけど、飲み物とサンドイッチ程度欲しいといった需要は多いはずです。

加えて空港の不動産であれば、軽食等を料理する環境が既に整えられている可能性も高く、設備投資への心配も少ないと思います。また、心理的面でも空港の食事で「10ドル」以下で済むのであればそこまで高いと感じないのではないでしょうか。街中と空港の値段差を比較したある調べによれば、平均して1.5〜2倍で商品が販売されているとしています。

将来的にAmazon Goがグローバル展開を狙うのであれば、重要なターゲットロケーションにもなりそうです。また、空港は中規模以上であれば、大体が24時間のオペレーションが多くなります。そのためAmazon Goは不動産契約をするのみで、24時間営業の店舗を低リスクで開始することが可能となります。空港の24時間のコンセプトに最適な店舗ソリューションがAmazon Goになるかもしれません。

Amazonが仕掛けるもうひとつのOMO戦略

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さて、Amazon傘下の実店舗といえばAmazon Goに加えて生鮮食品スーパーマーケットのWhole Foodsがあります。こちらも、筆者自宅の近所にありよく利用するのですが、Whole Foodsの「アマゾンカラー」が年々強さを増してきているように感じています。

たとえば、Whole Foodsはプライム会員限定の割引を実施していたりしますが、最も特徴的なのはプライム会員限定のデリバリーサービスです。AmazonマーケットプレイスからWhole Foodsのサイトにアクセスし、オンライン注文を35ドル以上することで無料で指定アイテムの配達をオーダーすることが可能です。

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Whole Foodsオーダー画面。チップの額は、Optionalとあるようにゼロドルにも調整可能

Whole Foodsはオーガニック食料品販売がベースにあるため、一つ一つの商品の値段は他スーパーマーケットと比較すると高くつく傾向にあります。ただ、無料配達という付加価値をそもそもプライム会員であったのであれば、Whole Foodsで買い物しようとなるはずです。この点、Amazonは会員がWhole Foodsを利用するように巧みに導線を引いていると思います。

ではAmazonはWhole Foodsを通してどのようにOMO対応させているのでしょうか。

Amazon Go同様に、Whole Foodsの実店舗でプライム会員限定の割引を受けるためには、QRコードを表示させスキャンする必要があります。加えて、Whole Foodsの食料品をオンライン注文する場合も、プライム会員ページにログインしてから注文します。こうしてAmazonはWhole Foodsのほぼ全ての購買チャネルから顧客データを獲得しています。まさにOMO戦略に則った打ち手です。

実店舗とオンラインの融合を進めるAmazonですが、顧客データ数を増やすため、2020年以降、Amazon Goはひとまず空港における新店舗設立に力を入れ、ダウンタウン近郊の街中にはWhole Foodsを増やし、「アマゾンエクスペリエンス」の接点を増やすといったリアル店舗戦略になるのではと思います。

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この流れに続くかのように、Amazonは2020年、LAの郊外Woodlands Hillsに新ブランドのスーパーマーケットを設立すると、CNETによって報じられています。報道の決め手となったのは、同社HP上の求職欄に突如現れた「Grocery Associate」の内容です。

職種の内容は以下のように記載されていました。

Join us as we launch a new Amazon grocery store in Woodland Hills. We are passionate about creating a shopping experience that customers will love. If you are customer-obsessed, like learning new things, and want to contribute to end-to-end store operations for a new business, this is the place for you!

new Amazon grocery store」の表記からもわかるように、こちらの店舗はAmazon GoでもWhole Foodsでもなく全く新しいブランド名がついた店舗となる模様です。

まだ正式にどういったコンセプトなのかはAmazonによって公開されていません。ただ、空港をメインにAmazon Go、ダウンタウンに近い街中をメインにWhole Foodsという拡大戦略が正しいとすれば、新しい店舗ブランドは、コストコのようなコンセプトの大型生鮮食料品店になる可能性が濃厚です。まだ詳細は公開されてなく、OMO戦略の一環として展開される店舗かも分かりませんが、可能性は高いと言えるのではないでしょうか。

オンラインベースでECを拡大させてきたAmazonが、その知見を大いに生かしリアル店舗をどのように世界へ羽ばたかせていくのか。OMO文脈と絡め、2020年からAmazonがリアル店舗をどのように反映させ、オンラインとオフラインを繋ぎ合わせていくのかとても楽しみです。

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コーヒー豆で車を作る?ーー実は再利用可能なあの「残りカス」、こんなものにまで転用可能

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ピックアップ:Ford is making car parts—with waste from McDonald’s coffee beans ニュースサマリー:コーヒー豆の残りかすの再利用に注目が集まりだしている。 Ford Motorは4日、マクドナルドが販売するコーヒー豆の粉を再利用し、同社が生産する車の部品開発に再利用する計画を発表した。CNBCによれば、同社はインテリアやボンネットへの利…

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Image Credit: Kaffee Form

ピックアップ:Ford is making car parts—with waste from McDonald’s coffee beans

ニュースサマリー:コーヒー豆の残りかすの再利用に注目が集まりだしている。

Ford Motorは4日、マクドナルドが販売するコーヒー豆の粉を再利用し、同社が生産する車の部品開発に再利用する計画を発表した。CNBCによれば、同社はインテリアやボンネットへの利用を考えていると報じており、現状から20%ほど重さを軽減できるとしている。

Fordではまず、コーヒー豆の総量約30万個に相当するヘッドランプを取り囲む部品の製作に取り掛かるという。記事によると、提携を結んだマクドナルドのマックカフェでは2018年米国において、年間8億2200万カップのコーヒーが販売されているそうだ。

話題のポイント:今まで肥料としての再利用にとどまっていたコーヒー豆ですが、近年、そうした肥料への再利用に加え、新たな利用手法があらゆる角度から考えられています。ご紹介したFordの例以外にもいくつか取り組みがあります。

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University of Pennsylvania

たとえばバイオ燃料への再利用。ペンシルベニア大学による研究によれば、コーヒーの焙煎・抽出過程にて生じた残りかすには平均15〜21.5%の油分が含有されているそうです。また、油以外の個体部分はバイオマスペレットへの再利用が可能だとされており、一つのコーヒー豆の残りかすから2種類のエネルギー生成が可能であると述べられています。

同論文では、ニューヨークにおいてトラックを利用して875カ所のスターバックスコーヒーとドンキンドーナツを週に2・3回のペースで回収した場合、1時間当たり1215.3キロのコーヒー豆の廃棄物を得られるとしています。それらを全て上述したバイオディーゼル燃料へと再利用すると1時間当たり130キロ、バイオマスペレットを324.2キロの割合で生成可能と結論付けています。

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University of Pennsylvania

ちなみに、一人当たりのコーヒーショップ数(coffee shops per capita)は、ニューヨーク・マンハッタンが米国で第2位。その倍近くある第1位のシアトルでは、単純計算でバイオ燃料も倍近く生成できるということになるのではないでしょうか。

さて、車・バイオ燃料ときて次にご紹介するのはドイツのスタートアップ「Kaffee Form」です。同社は残りかすをタンブラー・カップの生産に再利用。販売する製品からはコーヒーの香りが漂うと言い、まさに、コーヒー好きには最高なタンブラーと言えるでしょう。

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Image Credit: Kaffee Form

Kaffee Formはこの製品を通して、日常に「コーヒー豆のカス」を登場させることで、環境保全への意識を変えていきたいとHPで述べています。ミッションに「reshape consumer habits」とあるように、身の回りにあるもので商品を生産することで、長期的に消費者行動を変えていくことを目指しています。

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Image Credit: Kaffee Form

特に日本では今まで、”リサイクル”と聞くとあまりエキサイティングな認識はされない存在だったと感じます。たとえば小学校などで「3R」として習うのが「Recycle, Reuse, Reduce」ですが、そこから発展してリサイクル活動へ結びつけるような教育はあまり目にしません。

米国では、以前ご紹介したRidwell社のように、個人や家庭で積極的なリサイクル活動を好んで行う傾向にあると感じます。

<参考記事>

その他にも米国スターバックスは完全にプラスチックストローを廃止したり、企業が環境保全に対してアクションを取ることも求められている風潮に変わりつつあります。日本では、スタートアップとしてこうした事業をあまり聞きませんが、世界的にトレンドになりつつある市場であると思います。

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クラフトビール版Amazon「TapRm」がディスラプトする業界規制の“しがらみ”

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ピックアップ:Beer-loving commerce startup TapRm raises $1.5M ニュースサマリー:クラフトビール専門EC「TapRm」は11月26日、150万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はThe Brow Groupが努め、VU Venture Partners、Branded Strategic Hospitalityも参加した。 同社は昨年NY…

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Image Credit: TapRm

ピックアップ:Beer-loving commerce startup TapRm raises $1.5M

ニュースサマリー:クラフトビール専門EC「TapRm」は11月26日、150万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はThe Brow Groupが努め、VU Venture Partners、Branded Strategic Hospitalityも参加した。

同社は昨年NYにて創業。米国にはビール生産者が直接小売販売できない法律があることから、仲介業者を挟む必要がある。しかし、仲介と小売業者の両方のライセンスを持つTapRmを利用すれば、レストランやバーからの大規模な発注を狙えるほか、直接一般消費者への販売も可能になる。

話題のポイント:アルコール特化版AmazonともいえるのがTapRmです。同社が提供する機能はいたってシンプルで、アルコールのECサイトです。商品的な差別化要素としては、Amazonなどで扱っていないオリジナクラフトルビール販売(地域限定など)に特化している点が挙げられます。

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上図を見ると、アメリカの大手スーパー「Whole Foods」や「Walmart」で目にするビールとは違う種類を扱っていることが一目でわかります。しかし、アメリカにおいてアルコールEC市場はそこまで盛り上がりをみせていません。

Profiteroが公開したデータによれば、アルコール購入者のうちECサイトを利用した割合はたったの8%でした。言い換えれば残りの92%は店舗での購入ということになります。ちなみに下のグラフを見ると日本は中国に続いて全体の2位に位置しており、アルコールのオンライン購入が比較的盛んであることが伺えます。

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Image Credit: Profitero

アメリカにおけるアルコール飲料市場に消費者が投じる金額は、米国商務省によれば年間2300億ドル以上ともいわれていますが、意外にもEC市場は未成熟だったのです。

この背景には、冒頭でも言及したアルコール販売に対して制定する法律「Three-Tier Distribution System」にあるのかもしれません。これは、酒類の販売の際、生産者は小売業者や消費者に対し直接販売をすることができず、卸売業者を通さなければならないと定められた法律です。

つまり、基本的にアルコール生産者は自身でECサイトを立ち上げ販売することができず、いわゆるDirect to Consumer(D2C)モデルの推進がやりにくいわけです。

こういった規制のしがらみに着目したプラットフォームがTapRmです。同社は小売と卸売業のライセンスを同時取得することで、生産者が直接的に酒類販売を実施できるプラットフォームの提供に成功した、というわけです。潜在的にメーカーは直接販売したかった、ということなのでしょう。

また米国では州法が存在し、「他の州では合法だったビール販売手法が、この州では法律違反だった」といったことも起こりやすいため、アルコール生産者にとっては変に自社で販路を開拓するより、TapRmを利用して販売する方が安全というメリットもあります。

Infographic: 2014 Was Another Great Year For U.S. Craft Beer | Statista
Image Credit: Statista

Statistaが公開したデータによれば、2014年におけるクラフトビール醸造所は合計で約3,400カ所。内訳としては自前の醸造所を持ち、自家製ビールを提供する酒場やレストランを指すブリューパブが約1,400ヵ所、小規模醸造所が1,870、残りは小規模な醸造所が続く形です。

2008年比で醸造所が2倍に増えている点から成長市場であることは明らかです。EC市場も合わせて盛り上がるのは時間の問題ではないでしょうか。

こうしたマーケット情勢とオンライン市場を組み合わせ、法的問題を解決することがTapRMの目指しているところでしょう。今後は、サブスクリプションモデルなど、あらゆる事業展開が実施されていきそうです。

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旅行中のお部屋を「即現金化」するLeavy.co、そのカラクリを考えてみた

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ピックアップ:Leavy.co, the app for millennials who want to rent out their room while travelling, discloses $14M funding ニュースサマリー:パリに拠点を置くトラベルスタートアップ「Leavy.co」は26日、シードラウンドにて1,400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はPri…

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Image Credit: Leavy.co

ピックアップ:Leavy.co, the app for millennials who want to rent out their room while travelling, discloses $14M funding

ニュースサマリー:パリに拠点を置くトラベルスタートアップ「Leavy.co」は26日、シードラウンドにて1,400万ドルの資金調達を実施したと発表した。リード投資家はPrime Venturesが務めた。Index Venturesも同ラウンドに参加している。

Leavy.coは旅行者が旅に出ている間、自宅またはアパートメントを短期賃貸として貸し出せるプラットフォームを提供している。利用者は宿泊者とやり取りする必要なく、プラットフォーム上からオンデマンドで物件を探すことができる。鍵の受け渡しなどは該当地域の物件管理を担当するオンデマンド・ホストが代行する。

最大の特徴は、部屋を貸し出すオーナーの報酬受け取りまでの早さにある。同社では物件をリスティングした時点で代金が支払われる。そのため、貸し出すユーザーは旅に出る前に資金を手元に置くことが出来る。また、結果的に予約者が獲得できなかった場合でも、通常の金額がそのまま支払われる。価格自体は需要と供給に従った、ダイナミックプライシングによって設定される。

話題のポイント:Leavy.coのコンセプトは「旅するミレニアルを増やすこと」。しかし旅をするために多額の借金を背負っていては元も子もありません。このギャップを埋めるために「旅をしながら稼ぐ」手段としてLeavy.coのアイデアに行き着いたと同社のホームページで語られています。

たしかに旅をする = 普段住んでいる家が空くため、その部屋を民泊化する手段は真っ先に思いつくマネタイズ方法です。とはいえ、信頼できる友人がいるなら別ですが、貸し出すとなればトラブル対応に備えてその場にできるだけ居合わせたり、細かくやり取りをしなければならない煩雑さがありました。

そこでLeavy.coでは、アプリ内コミュニティーで気軽に「Hosts on Demand(ローカルホスト)」を募集する仕組みを作りました。オーナーはホストに諸対応を安心して任せられるため、思い立った際に気軽にリスティングできるサービス設計になっています。

また、ユーザー層にも特徴があります。Leavy.coのユーザー数は6万5000人を超え、そのうち60%がミレニアル世代の女性であるとのこと。Airbnbやその他民泊プラットフォームでは、家族が所有する自宅の一室やそもそも投機目的の部屋が主流ですが、若い女性向けの物件が出揃うことで、差別化が生まれていることが予想されます。

さて、2017年に創業したLeavy.coがたった約2年間でユーザー数6万を超えるまでに成長を遂げた理由として、冒頭で紹介した前払いシステムが挙げられます。

これ、一体どういう仕組みなのでしょうか。

上述通り、同社では物件の貸し出しの有無に関わらず、ダイナミックプライシングによって設定される価格をオーナー側へ支払う契約になっています。当たり前ですが、オーナーに対して予約者が付かずに一定額を支払い続ければ、ただ損失が積み重なるだけの仕組みです。

CEOのChaouachi氏もTechCrunchのインタビューにて「もし宿泊者を獲得できなければすべてのリスクは我々が請け負うこととなります」と語っています。裏を返せばリスティングされればほぼ確実に宿泊者が集まるという仮説で運営をしているわけです。

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Image Credit: Leavy.co

ここからは筆者の仮説です。

上図に記した305ユーロは、仮にフランス・パリにて12月23日から27日までの5日間、シングルベッドの部屋を貸し出した場合にオーナーが受け取れる金額です。旅に出ている間、1日当たり、約60ユーロ(日本円で7200円)ほど受け取れるので、旅費の足しにはなりそうです。

Leavy.coが利益を生み出すためには上記金額より高値で市場に出す必要があります。失敗すれば100%の不利益です。さてここで競合となるAirbnbのリスティングを見てみましょう。

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Image Credit: Airbnb

同じ条件におけるAirbnbのリスティング価格帯は安くて1日100ドルほどです。そうです、Leavy.coの方がざっくり40%ほどのディスカウントになっています。オーナー目線でいえば、Airbnbに高値でリスティングしても利用者が現れなければ利益はゼロですから、割安でもリスクフリーで貸し出しせるLeavy.coは魅力です。

また、空室率の問題もあります。

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D.C. Policy Center

上図はアメリカ・ワシントンD.C.におけるデータになりますが、Airbnbにおける月間貸し出し率を現したデータです。NPO法人であるD.C. Policy Centerによれば、ワシントンD.C.におけるAirbnbの貸出率はほとんどが年間20日以下であり、数多くが9日以内の宿泊であることがわかっています(同データにおけるAirbnbの物件はすべて貸し切り物件、つまりLeavy.coが提供する「家」と同じ条件。)

つまり短期滞在の物件は人気なのですね。空いていない可能性が高い。

一方、Leavy.coは一つの場所を連泊前提で利用できるため、断片的に滞在場所を変えるリスクが低く抑えられます。こういった空き状況とプライシングのデータを使い、適切な提示額を導き出すことで利用客のマッチング成功率を100%に近づけているのではと考えます。

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Image Credit: Leavy.co

 

またアプリ内ではコミュニティー通貨として「Leavy Coin」を導入し、写真投稿など、ユーザーが自身の住む町に関わることでコインを獲得できます。こうしたGoogle Mapsのローカルアドバイザーのようなエコシステムを独自に設計している点も特徴でしょう。

加えて、モバイル決済「Leavy Pay」も様々な店舗で利用でき、一つのアプリ内でコイン獲得から決済機能までを実装しています。また、オンデマンドのローカルホストとしてお金を稼ぐことも可能です。

このように、コミュニティー形成と決済機能を両立させることで、自宅を民泊サービスに掲載する機会がなかったユーザーでも継続して利用できる仕様を目指しているのではないかと思います。様々な収益ポイントを設定することで「せっかく旅にいくんだったらリスティングするか」というユーザー行動を導くことができるかもしれません。

ローカルに根付きながらお金を稼げる、もしくはローカルを抜け出して遠くに旅行をしながらでも稼げる、こういった新たな経済圏のアイデアは日本でも参考になるのではないでしょうか。

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