Clubhouse配信を可能にする「ライブAPI経済圏」/GB Tech Trend

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1,500万ドル調達を果たした「Daily」。Image Credit: Daily

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

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「ライブ配信」が多くのアプリに実装されるようになりました。Instagram、Facebook、SHOWROOM、他にはゲーム配信アプリに至るまで、様々なプレイヤーがリアルタイム配信を通じたコミュニケーションサービスを展開するようになっています。

問題となるのはエンジニアが抱えるライブ配信機能実装コストと、通信の不安定さです。0からライブ配信機能を作り上げるとなった場合は非常に手間がかかりますし、何か通信設計に問題があると、配信が中断されてしまたり遅延してしまい、サービスの評判が著しく落ちかねません。

そこで登場したのが 今回1,500万ドルの調達 を果たした「 Daily 」です。ライブ動画・音声配信の開発プラットフォームを提供しており同社APIを導入すれば、自社サービスにライブ機能を手軽に追加することが可能となります。

エンジニアはあらかじめ構築されたUIを使用するか、独自のカスタムビデオUIとUXを構築するかのどちらかを選ぶことができるそうです。前者の場合、ビデオチャット、画面共有、録画機能を備えたビデオ通話ウィジェットを埋め込むことができます。後者の場合、レイアウト、ワークフロー、ビデオおよびオーディオ トラックをより自由にコントロールできます。

顧客にはバーチャルオフィスサービス「Tandem」、バーチャルHQプラットフォーム「Teamflow」、プレゼンテーションサービス「Pitch」、ペアプログラミングツール「GitDuck」、バーチャルリクルーティングサービス「Flo Recruit」など、コロナ禍において成長を果たした企業が名を連ねています。

Dailyの競合となるのが「 api.video 」です。同社はホスティング・配信・分析ができる、動画配信のための単一APIを開発しています。どの開発者でも手軽にNetflixのような高画質の動画コンテンツをユーザーに提供できるようになりました。これまで企業は実装の複雑さを理由に動画機能の導入を控えていましたが、api.videoはわずか数行のコードで動画コンテンツの導入を可能にしています。

また、目覚ましい成長を遂げるライブ音声配信アプリ「Clubhouse」が採用する「 Agora.io 」も競合として数えられるでしょう。同社もBaaS(Backend-as-a-Service)企業として、アプリケーション開発者にリアルタイム・コミュニケーションソリューションを提供しています。音声基盤構築に強く、遅延のないコミュニケーションが売りです。

Agora.ioの参入する通信PaaS(Platform-as-a-Service)市場は、2018年の33億ドルから2023年には172億ドルに成長し、成長率39.3%で 拡大すると予測されています 。5Gの普及が進めば、さらにリアルタイムコミュニケーションの需要も増えるでしょう。

Stripeが“決済”を、Twilioが“SMS”を容易にしたように、「Daily」「api.video」「 Agora.io 」らはすべての開発者に“ライブ配信機能”を提供します。誰もが当たり前に使う媒体(テキスト・画像・動画・音声 etc)を手軽に実装するニーズは市場全体で高まっており、こうしたニーズを支えるインフラ市場に大きな商機が眠っているでしょう。これから日本でもますます注目領域になりそうです。

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