スピンアウトから6億円増資へーー700社採用の「MyRefer」に見る大企業の新しい事業の作り方

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写真左から三人目:MyRefer代表取締役の鈴木貴史さん

ニュースサマリ:リファラル採用プラットフォームのMyReferは2月25日に第三者割当増資の実施を伝えている。引受先になったのはグローバル・ブレイン、博報堂DYベンチャーズ、STRIVEの3社。調達した資金は6億円でラウンドはシリーズB。出資比率が株価などの詳細は非公開。調達した資金は人材採用、プロダクト開発、マーケティングに投資される。同社の累計調達額は9.6億円となった。

MyReferは企業が社員の人的な繋がりを使って新たな人材を紹介・獲得する「リファラル採用」を活性化させるクラウドサービス。リファラル採用を始めたい企業の人事担当は紹介してくれる社員をクラウド上で登録し、それら社員が自分の知り合いに採用情報を紹介してくれた活動を把握することができる。人事担当はこういった活発に会社のことを紹介してくれる社員を「ファン」として捉え、その度合いに応じたリワード(インセンティブ)の提供などを実施することができる。

2015年からサービスを開始し、現在の利用は大手含め700社、40万人の従業員に上る。同社によるとこのプラットフォームを通じて生まれる転職・就職マッチングは年間2,000名以上で、今回の増資を機にさらに機能を拡充したHR Techプラットフォームへと進化させるとした。

話題のポイント:2015年からいち早くリファラル採用を主軸に事業展開してきたMyReferさんがシリーズBの増資を成功させました。C;lubhouseで久しぶりに代表の鈴木貴史さんと雑談混じりにお話しましたが、積み上がっている実績がいつもの謙虚な声にも出ていましたね。

MyReferの特徴はリクルーティングに関わるリワードと社員エンゲージメントの設計です。鈴木さんもお話されてましたが、通常、こういったリファラル採用にいわゆるインセンティブ設計だけを持ち込んでもうまくワークしないそうです。社員の半数以上はシンプルに友人の役に立ちたいという気持ちがあり、ボーナス的な魅力は11%程度ということでした。結果としてのインセンティブは嬉しいですが、それ自体が目的になると確かにいろいろ歪みそうです。

ポイントはストーリー設計で、社員一丸となって企業価値向上を目指して一緒にやろうよという考え方がしっかりと共有・発信できている企業はリファラル採用に強い印象があります。MyReferではこういった活動に貢献してくれている社員エンゲージメントを社員の活動履歴や興味関心、係数で可視化してくれる、というわけです。

一方、やはり大手中心にまだまだ導入のハードルは高いようです。度々高額な手数料が問題になる紹介などに比較してROIがよいのは確かで、人事採用の担当者レベルではやりたいものの「社員を巻き込む」という一点で社内の決済フローが従来の求人広告やダイレクトリクルーティングなどと異なるケースがあるのだとか。確かにソーシャルメディアの活用は想像の斜め上を行く結果をもたらすことがあるので、企業としてのルール整備が難しいのはなるほどと。

鈴木さんたちが持ち込んでから2年越しで導入になったケースもあるようなので、カルチャー含めてじわじわ変わってどこかで一気に動くパターンになるんでしょうね。

彼らが狙うHR Techの市場は採用・転職(求人広告や紹介エージェント)で1兆円のポテンシャルがあるというお話です。リファラル関連ではビジネスソーシャルのWantedlyが年成長5.9%の約30億円(2020年8月期)、エンゲージメント領域ではカオナビが四半期ベースで年成長29.4%の8.8億円(2021年3月四半期)なので、金額規模はまだまだですが成長率で見るとやはりゲームチェンジャー候補になるのは間違いなさそうです。

MyReferが発表したプラットフォーム構想。エンゲージメント領域が強化される印象

リファラル活動を通じて社員のエンゲージメントデータが蓄積されると、当該人材のジョブ・ディスクリプションなどの情報と合わせて、その人が定量的に可視化されていきます。MyReferでは社員の繋がりをベースにHR Tech領域でのプラットフォーム構想を発表していますが、この辺りは多くの競合が狙っている市場でもあるので、またどこかで全体像をまとめたいなと思います。

スピンアウトからシリーズBへ

MyReferを語る上でもう一つの視点が大企業における新しい事業創出の方法と「ジレンマ」についてです。鈴木さんがサービスを考案した2015年当時、リファラル採用という言葉はあるものの、人材市場におけるネット・クラウドの活用は随分と進んでいる状況でした。リクルートが求人リスティングのIndeedを買収したのが2012年ですから、リファラル採用は手法として目新しいものの、タイミングとしての見極めは難しかったのではないでしょうか。

実際、鈴木さんもスタートアップ的に外で独立してプロダクトドリブンに勝負するやり方ではなく、パーソルホールディングスの中の社内起業の仕組みを使い、2015年に1億円の出資金で事業をスタートさせます。大変面白いのはこの後です。

順調に事業が伸びると企業としては当然、そのまま連結の対象として置いておきたくなるはずです。一方、主力の求人広告やエージェントの事業とどこかでバッティングする可能性も出てきます。そこで選んだ方法がスピンアウトでした。当時の取材でもお話されている通り、出資比率は非公開ながらパーソルの連結や持ち分法適用に当たらない独立性を担保した形での切り出しです。

新会社として切り出し、改めてそこに対してグリーベンチャーズ(現在のSTRIVE)とパーソルHDが出資する形で2018年に3.6億円の増資を実施しています。ここでさらに痺れるのがU-NEXTの宇野康秀氏個人が出資している点ですね。鈴木さんも計画とか戦略の提出だけでは無理だったと当時を振り返ってお話されていましたが、このレベルは確かに経営陣がかなり気合い入れたんじゃないでしょうか。外出しするにも関わらず、設立に当たってはパーソルHDの経営企画から財務、子会社など30名規模で手伝ってくれたそうです。

結果、700社40万人が利用するサービスに拡大しているので、当時の経営陣の判断は正しかったと言えるでしょう。MyRefer自体も現在、40名規模だそうですが、これを倍増させる予定だそうです。

大企業が新規事業を作る際、内部で作るか外から買ってくるか、外の企業と協業(オープンイノベーション)するかで大きく分かれると言います。しかしこのMyReferのように内部で作ってスピンアウトし、かつ、現在のスタートアップエコシステムとうまく連携させることができれば、また新しい手法として定着するかもしれません。

※本稿はClubhouseでの取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています

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