事業計画SaaS「projection-ai」、SaaSの市場規模や上場企業のメトリクスがわかる姉妹プロダクトをβローンチ

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Image credit: projection-ai

One Capital 率いる浅田慎二氏が務める projection-ai が、SaaS スタートアップの事業計画作成に特化した同名 SaaS をローンチしたのをお伝えしたのは約2ヶ月前のことだ。projection-ai は今年1月にクローズドテストを開始し約140社が利用していたが、β版への移行を受けて、ユーザ企業数は以前の5〜6倍に増えたという。これまで表計算ソフトウェアなどに依存していた事業計画の作成を、より効率化したいというニーズの大きさの現れだろう。

さて、その projection-ai から新たな姉妹プロダクト「projection-ai:db」が今月に入ってβローンチした。projection-ai:db では、SaaS の市場規模や上場企業のメトリクスを簡単に把握できるという。未来を計画する事業計画ではなく、今度は、自分が今いる市場の現在や過去を精査するためのツールだ。決算報告をはじめ適時開示される会計情報の多くは、売上高ベースのものだ。SaaS 企業の評価において重要な指標「ARR(Annual Recurring Revenue)」は、決算説明資料をキーワード検索して探さないと見つからない。

ARR は、毎月繰り返し得られる売上を1年間まで伸ばしたものだが、SaaS 特有の売上流入の形を必ずしも反映した表現形態はまだ一般的ではない。projection-ai:db は、このような課題にフォーカスした DBSaaS で、Google アカウントだけで誰でもフリーミアム利用できるようにした。浅田氏は、projection-ai とあわせて利用することで SaaS 起業家が上場企業を参考に事業計画を作成したり、資金調達する際に成長倍率やマルチプル把握したりする際にに役立ててられるだろう、とその意義を強調した。

projection-ai:db を使って実現できるのは次のような利用シーンだ。

  • 市場規模やその成長率から、日本の SaaS 市場がどの程度伸びているのかすぐに把握できる。株式市場における上場企業のパフォーマンスやマザーズにおける時価総額のシェアから SaaS 企業の存在感も確認できる。また、上場企業だけでなく、未上場企業の資金調達額や調達社数も確認できるため、SaaS 市場の全体感やトレンドを簡単に把握できる。
  • 上場企業を比較することで、どのような企業が評価されているのか把握できる。SaaS で重視される ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)や ARR マルチプルなどを把握しておくことで、起業家と投資家間ß情報格差を解消し、スタートアップが適切なバリュエーションで資金調達できるよう支援する。
  • SaaS メトリクスが簡単にわかる 
projection-ai:db では、決算説明資料にしか掲載されていない SaaSメトリクス(ARR、顧客単価、顧客数、解約率など)を掲載。従来、それらの数値を把握するためには、IR 資料を閲覧しに行く必要があったが、projection-ai:db を活用することで、その情報取得コストを削減することが可能となる。

projection-ai、projection-ai:db と来て、さらに今後もサービスのラインアップが追加される可能性は高い。浅田氏は、情報の非対称性が残るスタートアップや投資分野において、「自分たちは、ベンチャーファイナンシングの Google になりたい」と鼻息は荒い。Google の使命は「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」で、多数の人が情報を得るサービスは無料かフリーミアムでオープンに提供されている点が特徴的だ。同様の流儀を踏襲するということだろうか。

前回も書いたように、projection-ai は Y Combinator のアクセラレータプログラムへの採択を目指している。今後、いくつかの機能やサービスの追加やブラッシュアップを経て、日本のみならず、海外でも需要が見込めそうなこの領域で、注目を集める日が近くやって来ることを楽しみにしたい。

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