介護領域のユニコーン「Honor」のOS戦略/GB Tech Trend

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今回ユニコーン企業へと成長した「Honor」(Image Credit:Honor)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

新たなユニコーン企業が誕生しました。10月5日、介護スタートアップ「Honor」はシリーズEラウンドとして融資を含めて3億7,000万ドルを調達し、評価額が12億5,000万ドルを超えたと発表しました。TechCrunchによれば同社は現在、世界中で毎月10万人以上の高齢者にサービスを提供しており、年間8,000万時間以上のケアを提供しているとのことです。

Honorの強みが介護士と高齢者ユーザーのマッチング精度です。高齢者の言語・人種・趣味趣向を筆頭とする属性データと、介護士をアルゴリズムを用いて精度高くマッチングさせているそうです。

データ分析対象はマッチングに留まらず、Honorが雇うサービス提供者「Care Pros」たちのパフォーマンス・スケジュール管理も適用されます。ユーザーとの接点、その全てを分析し、コーチングに活かすことで経営最適化を目指しており、いわば老人介護にAIアルゴリズムを適用させて成長してきたのがHonorとも言えるでしょう。

Honorは同じくシニアケア領域に参入している「Home Instead」をつい数カ月前に買収しています。Home Instedのプレスリリースでは、「21億ドル以上の在宅介護サービス収入を誇り、5,000億ドルと予測される在宅介護産業における最大のプレーヤーであることを確信している」と述べています。

Honorの特徴は「Senior Care as a Service」の戦略にあります。同社は在宅医療機関にHonorの仕組みを「OS」として利用できるSaaSパッケージの提供を開始しており、「Powered by Honor」として医療機関の在宅ケアサービスを事業者と一緒に取り組むことで、関係企業のDXニーズも同時に満足させようとしています。

こうしたSaaSの流れは日本でも十分に考えられるでしょう。

米国シニアケア市場では、大学生と高齢者をマッチングさせる「Papa」にも注目です。同社は4月に6,000万ドルを調達しており、介護スタートアップとして成長株であることは間違いありません。Papaは保険会社との提携を進めており、現在80社を通じて保険サービス・ベネフィットとして介護医療を提供しているとのことです。Papaの場合はHonorとは違い、直接的な介護サービス提供に重きを置くのではなく、話し相手になってあげたりするコミュニケーションに重点を置いています。コロナ禍で憚られる対面サービスではなく、バーチャルでも完結する体験を提供することで、比較的柔軟なビジネスモデルを敷いています。

シニアケア領域に参入するプレイヤーは他の市場と比べて少ない印象ですが、うまくSaaS化に取り組んできた企業は着実な成長を遂げています。日本は「介護先進国」であるとも言えるため、こうした事例で参考となる点は多々ありそうです。

今週10月5日〜10月11日)の主要ニュース

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