Amazonが本格的に介護市場へやってきた/GB Tech Trend

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Amazonが新たに発表した「Alexa Together」(Image Credit:Amazon)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

Amazonが処方箋配達に参入を果たしてから、ヘルスケア市場への事業拡大に意欲的な動きを示しています。その一環として見られるのが高齢者介護事業への参入です。

12月8日、Amazonは高齢者向けサブスクリプション・サービス「Alexa Together」を発表しました。本サービスはすでにローンチ済だった高齢者向けサービス 「Alexa Care Hub」の拡張版としてサービス化されたものだそうです。

各種Alexaデバイスを活用して顧客宅にいる高齢者のケアを家族がスムーズに行えるもので、関連サービスをパッケージ化したのがAlexa Togetherとなります。具体的には緊急時救急ライン・転倒検知などが含まれるようになったとのこと。

中でも注目すべきなのが、「アクティビティ・フィード」です。高齢者ユーザーがAlexaを利用しているかどうかをチェックすることで、問題なく安全に暮らしているのかを把握します。仮にAlexaの利用がない場合はアラートが親族に伝えられます。

Amazonが最も得意とするのが「個客」管理です。一人一人の消費行動を理解し、Amazonアカウントに紐づけて最適な商品を提案することに世界で最も長けている企業です。たとえば私たちがAmazon Marketplaceで書籍を購入する際、関連書籍の提案も表示される「レコメンド機能」ですが、Amazonは私たちの消費スタイル・生活習慣を通じてこの機能の強化を長年行ってきました。

今回のアクティビティ・フィードは、まさに高齢者向けサービスの切り口から、これまで獲得が難しかった高齢者ユーザーの生活情報を収集し、個客管理、そしてレコメンド機能へと繋げる施策であることが伺えます。

Alexa Togetherは高齢者ユーザーとAlexaが日常的に対話することを前提にプログラムが組まれているため、Alexaとのタッチポイントを軸にしたサービス価値をいかに実現するかが鍵です。この点、Amazonはすでに商品だけでなく、外部サービスの提供も始めているため盤石です。

例えばここからはあくまでも推測になりますが、今後は屋内配達を謳ったAmazon Keyとの連携によって、生活必需品が足りなくなった場合にすかさず定期購入リストに入れておいた商品を届けてくれるようなサービスも実現されるかもしれません。

Amazonが力を入れている処方箋配達サービスも、Alexa Togetherのコア・サービスとなり得るでしょう。こうした必要な時に、必要なサービスをAlexaがユーザーの生活習慣をもとにある程度予測して提案する「個客体験」が、Alexa Togetherによって提供されようとしています。

一般的にGAFA勢のこうしたビックデータ解析を主体として個人情報の取得は敬遠されますが、高齢者向けサービスの切り口を採用することで、比較的に参入しやすい雰囲気を作り出していると考えられます。

この領域にスタートアップが参入して市場を獲得することは至難かもしれません。ただ、たとえばAppleのデバイス管理スタートアップが成長を遂げているように、B2B向けにAlexaデバイスを卸し、その管理を一括で手軽に行う、Add-on SaaSとしてのアプローチは考えられるかもしれません。

いずれにしても、米国でのAmazonの動きは無視できないでしょう。日本の高齢者介護市場も、IoTを活用したデジタル化の波が押し寄せてくることは必至です。その中でいかに既存事業者が市場で生き残るのかを示唆してくれるニュースでした。

今週(12月7日〜12月13日)の主要ニュース

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