認知症者の資産凍結を防げ——家族信託をDXするファミトラ、14億円をシリーズA調達

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前列左から:三橋克仁氏(ファミトラ 代表取締役)、早川裕太氏(ファミトラ取締役 CTO)
後列左から:澤山陽平氏(Coral Capital)、James Riney 氏(Coral Capital)、大内陽介氏(Eight Roads Ventures Japan)、村田 純一氏(Eight Roads Ventures Japan)
Image credit: Famitra

家族信託サービス「ファミトラ」を展開するファミトラは、シリーズ A ラウンドで約14億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Eight Roads Ventures Japan、Coral Capital、DG Daiwa Ventures、Aflac Ventures、東京海上日動火災保険、みずほ銀行など。ファミトラは今年1月、Coral Capital、SMBC ベンチャーキャピタル、みずほキャピタルから2億2,000万円を調達していて(シードラウンドと推定)、今回の調達はそれに続くものだ。

ファミトラは2019年11月、以前、スマホ家庭教師「manabo」を創業・イグジットさせた(2018年6月、駿台グループにより買収)シリアルアントレプレナーの三橋克仁氏により創業。認知症者の資産凍結を防ぐ家族信託をデジタルに完結することができるサービスを提供している。家族信託とは、老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法のことだが、これをテクノロジーによって、より一般の人々が使いやすいものにすることを目指す。

高齢者が認知症になると法的には意思能力が無いものとされる可能性があるため、あらゆる契約行為ができなくなり、不動産・預金・有価証券などの資産が凍結される。この問題に対処する方法が成年後見だが、本人や家族の意見が通らないことが多い、毎月高額な費用がかかる、一度つけると二度と解除できないなど課題も多い。成年後見で直面する問題を概ね解決できるとして注目されるのが、親が自分の資産の一部を信託財産として子供などに委託できるのが家族信託だ。身内に財産の管理を託すため、高額報酬も発生しない。

ファミトラでは、家族信託の具体的な内容提案、士業・銀行・公証役場とのやりとり、当該家族信託の信託監督人に就任することで受託者を支援する。家族信託の組成は司法書士などが対応するが、複雑で専門的知見が必要になるため相応の費用が発生し、その結果、この仕組みを活用するのは富裕層に限られていた。ファミトラは、家族から要望をヒアリングし最適な家族信託を提案するコンサルティング部分をシステム化、契約完了までの期間を短縮、初期費用を抑えたことで、家族信託を利用する層の裾野を広げることを目指す。

ファミトラでは今回、調達した資金を活用して、サービス開発や採用・組織体制を強化する予定。資産管理に悩む人のタッチポイントとなる保険会社や銀行、介護事業者、証券会社、不動産会社、資産運用アドバイザー、税理士からの反響が寄せられており、こういったステークホルダーとの連携施策に取り組む計画だ。同社では今後、利用者がオンライン上で家族構成や資産構成、信託目的などの情報を入力すれば、信託財産の管理方法など家族信託で解決すべき論点を提示するような仕組みを目指すとしている。

内閣府が発表する高齢社会白書によれば、65歳以上の高齢者の認知症患者数は2012年は462万人と65歳以上の高齢者の7人に1人だったが、2025年には約700万人と5人に1人になると見込まれている。この分野では、家族信託の財産管理クラウドシステム「スマート家族信託」を開発・提供するトリニティ・テクノロジーが10月(発表は11月)、シリーズ A ラウンドでジャフコ グループ(東証:8595)、GMO VenturePartners、三菱 UFJ キャピタル、横浜キャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)から約6.1億円を調達している

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