高オレイン酸大豆油で一躍有名、Calyxtへの期待感/食品のゲノム編集技術(3)

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Image credit:Calyxt

(前回からのつづき)最後に紹介する企業はミネソタ州ローズビルに拠点を置く「Calyxt」だ。元々フランスのバイオ医薬品会社Cellectisの子会社として設立された同社は、その後スピンアウトし、2017年7月にNasdaqへの上場を果たしている。

同社はTALENと呼ばれるゲノム編集技術を用いるのが特徴だ。先に取り上げたInariやPairwise Plantsが用いたCRISPR技術と遺伝子ノックアウト(ある生物に機能欠損型の遺伝子を導入すること)、遺伝子ノックイン(生物の染色体の特定の遺伝子座にタンパク質をコードする相補的DNA配列を挿入する手法)、遺伝子タグ付け、遺伝的欠陥の修正など行うこととしては同じだが、染色体の改変効率が良いなどのメリットや、設計や施工の難しい点などがデメリットとしてある手法だ。詳細な違いはこちらをご覧いただきたい。

同社の製品群には、傷みのないジャガイモの品種、高繊維小麦、低グルテン小麦、除草剤耐性小麦、低飽和脂肪キャノーラ、高オレイン大豆などがある。特に同社は米国で最初に承認されたゲノム編集食品として高オレイン大豆を2019年に発売したことで知られている。これは大豆油の不飽和脂肪酸であるトランス脂肪酸を生む遺伝子をカットした大豆だ。

現在の基本的なビジネスモデルはライセンス供与になる。同社は生産と販売の権利をArcher Daniels Midlandに売却してライセンスによる契約にシフトしたり、パーム油の原材料となる改良大豆をアジアの食品原料メーカー(非公開)と共同開発するなど、独自に製品を研究開発して市場投入するのではなく、研究開発と生産を分離する共同開発型にシフトしている。これにより、製品の開発に数百万ドル、商品化されるまでに5年以上かけていたコストを削減していくとしている

農業資材分野の多くの企業と同様に、同社は除草剤耐性などの特定の性質を持たせる技術を種子会社にライセンス供与し、農家に販売する。サプライチェーンをアウトソーシングし、種子生産会社、栽培者、粉砕機、油のパッケージャーおよびディストリビューターとパートナーシップを構築することを軸に据えている

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